アンダンテ 【吹雪の日常】 3
[場所:道路]
[繭子]:「うー、寒いー」
[吹雪]:「冬だからな」
[繭子]:「そんな簡潔な答えを聞きたかったわけじゃないよー」
[吹雪]:「じゃあ何だ?」
[繭子]:「…………」
[吹雪]:「何もないんじゃないかよ!」
ビシッ。
[繭子]:「ふーちゃん、叩きすぎ」
[吹雪]:「叩いてはない、チョップだ」
[繭子]:「もっと優しくしてよ~」
[吹雪]:「じゃあ、魔法で攻撃してやろうか?」
[繭子]:「う、それは、結構です……」
他愛もない話をしながら学園へと向かう。
聖ハルモニア学園。そこが、俺たちが通っている学園だ。歴史と伝統が深く、俺たちが生まれるずっと前からこの学園は存在し、生徒を世に送り出してきたらしい。この島唯一の名所と言っても過言じゃないな。魔法学園に分類されるだけあって、魔法に長けた生徒が数多く在籍していることでも知られている。俺がここに通えるのも、そういうわけだったりする。俺の親は、先祖代々魔法使いの血筋らしく、俺の親も、魔法の扱いには長けていた。自分で言うのも何だが、どうやら俺も、他の人たちから見ると、魔法の力は上位に入るらしい。よく分からないがな。まあ何にしても、この学園はなかなかの有名校なわけだから、留年しないように努力しないといけないってことだ。
[舞羽]:「あ、そうだ吹雪くん」
[吹雪]:「ん? 何だ?」
[舞羽]:「今日出てた宿題、全部解けた?」
[吹雪]:「ん? ああ、一応な、当たってるかは自信ないけど」
[舞羽]:「よかった、後でちょっと見せてもらえないかな?」
[吹雪]:「何だ? 解けなかったのか?」
[舞羽]:「う、うん。ちょっと難しくて、あきらめちゃった」
舌を出しておどけて見せた。
[吹雪]:「まあ、確かに難しかったからな。分かった、その代わり、ジュース1本な」
[舞羽]:「はーい」
[繭子]:「うー……」
[吹雪]:「何だ? 胃潰瘍の人のモノマネか?」
[繭子]:「違うよ! ちょっとちょっと舞ちゃん、何かがおかしくない?」
[舞羽]:「え?」
[繭子]:「え? じゃないよ、何かおかしくない?」
[舞羽]:「……何か私おかしなこと言いました?」
[繭子]:「言ってるよ、腕白と卵白を間違えるくらいおかしいこと言ってる」
[吹雪]:「その例えは一体なんだよ」
[繭子]:「確かにふーちゃんは頭いいよ? ワタシが誇れる自慢の弟だよ。でも、だけど、BUT、ワタシの職業は何?」
[舞羽]:「あ、先生だ」
[繭子]:「そうだよ。分かんないところがあるんなら、先生であるワタシに相談してよ~。ふーちゃんに相談する前にワタシに相談してよ~」
[舞羽]:「あう……ごめんなさい」
謝る必要はないと思うんだがな……。
[繭子]:「ワタシ、そんなに頼りないように見える?」
[舞羽]:「え? そ、それは……。…………」
[繭子]:「即答してくれないの~!?」
[舞羽]:「あ、できます、頼りにしてます」
舞羽、無理をしたな……。
[繭子]:「じゃあ相談して? 繭子に相談して?」
[吹雪]:「相談をせがんだら相談じゃねぇだろうが」
[繭子]:「さあ、どーんと来て? 舞ちゃん」
[舞羽]:「あ、はい。えーっと、魔法使い、ルイスが詠唱した魔法の中で一番高度な魔法と言われるものを挙げなさい。っていうのなんですけど」
[繭子]:「ふむふむ、なるほど……」
[舞羽]:「……分かりますか?」
[繭子]:「…………」
[舞羽]:「…………」
[繭子]:「……ふーちゃん、後はよろしく」
[吹雪]:「しっかりしろよ、教師!」
[繭子]:「繭子難しいの分かんな~い」
[吹雪]:「難しいこと教えんのが教師の仕事だろうが馬鹿チン」
ビシッ。
[繭子]:「うう~、ふーちゃん、ワタシのことぶってばっかり~」
[吹雪]:「しつけだ」
[繭子]:「ぶーぶー」
完全に子供だな。
[舞羽]:「本当に分からないんですか? 繭さん」
[繭子]:「うーん、……自信がないんだよね、当たってるかどうか」
[舞羽]:「そうですか、分かりました」
[繭子]:「面目ありません~」
[舞羽]:「いえ、相談に乗ってくれただけで嬉しいです」
実際は無理やりマユ姉に乗せられたんだけどな……。
[舞羽]:「じゃあ……吹雪くん、後でいいかな?」
[吹雪]:「ああ、了解だ」
できる限り尽力はしよう。
[繭子]:「頑張ってね、二人とも」
[吹雪]:「マユ姉は学園着いたら教科書読み直せ」
[繭子]:「うう……分かりました……」