アンダンテ 【吹雪の日常】 2
[繭子]:「はい、お姉ちゃん登場~~」
[吹雪]:「…………んー」
[繭子]:「どうかした? ふーちゃん」
[吹雪]:「いや、別に」
この容姿に教師のスーツを着せて「教師です」って言っても、信じてくれる人は一割もいないだろうな。俺自身、本当に教師であることがまだ半信半疑だ。何故か? それは後々分かってくるはずだ。
[繭子]:「何か気に食わないような顔してるね? ふーちゃん」
[吹雪]:「そんなことはないよ、気にしない気にしない」
[繭子]:「ホントに?」
[吹雪]:「ああ、んなことより朝飯食おうぜ? 時間がなくなっちまうよ」
[繭子]:「わーい、ご飯だご飯だ」
マユ姉は嬉しそうに朝飯に食らいついた。
[繭子]:「あむ、あむ、もぐもぐ……」
朝からよく食うな、マユ姉は。作ったほうもこれくらい食ってもらえると嬉しいけど。
[繭子]:「ふーちゃん、おかわり」
[吹雪]:「はいはい」
空になった茶碗に新しくご飯を装う。
[吹雪]:「はいよ」
[繭子]:「ありがと」
そう一言いって茶碗にかぶりつく。
[吹雪]:「んー、ふーちゃんのご飯はおいしいねー」
[吹雪]:「ありがとよ」
[繭子]:「ワタシじゃ出せないよーこの味は」
[吹雪]:「出せないっつうか、料理しようとしねぇじゃねぇか、マユ姉は」
[繭子]:「ん? そんなことないよー」
[吹雪]:「見事に棒読みだな」
[繭子]:「そんなことないよー」
[吹雪]:「棒読みじゃねぇかよ」
[繭子]:「いいじゃん、そんなことは」
[吹雪]:「マユ姉が言い出したんじゃねぇか」
[繭子]:「とにかく、おいしいよ、朝ご飯」
[吹雪]:「まあ、ありがとよ」
お礼の言葉は素直にもらっておこう。
……………………。
[繭子]:「ごちそうさまでしたー」
[吹雪]:「すぐ行くから準備してろよ」
[繭子]:「はーい、じゃあワタシは――」
[吹雪]:「間違っても二度寝したりすんなよ?」
[繭子]:「わ、分かってるよ……」
あれはするつもりだったな、油断も隙もあったもんじゃないぜ。
[吹雪]:「いいかマユ姉。準備し終わったら外で待ってろ、いいな?」
[繭子]:「はーい、分かりましたー」
子供っぽい声で返事して、マユ姉はピョコピョコと玄関に走っていった。
さて、俺は、洗い物だな。
……………………。
[吹雪]:「よし、行くか」
カバンを持って俺は外に出る。
[舞羽]:「あ、吹雪くん、おはよう」
そこには親しい幼馴染の姿があった。
[吹雪]:「おう、舞羽」
[舞羽]:「今日は少し遅かったね」
[吹雪]:「ああ、そこのチビ介が寝坊したからな」
[繭子]:「何よー? チビ介ってー、好きでこうなったんじゃないもん」
[吹雪]:「問題はそっちじゃねぇんだよ」
[繭子]:「だって仕方ないよー、睡魔は――」
[吹雪]:「それはさっき聞いたからいい。二番煎じだ」
[繭子]:「むー、ふーちゃん冷たい」
[吹雪]:「マユ姉のために言ってんだよ、俺は」
[繭子]:「これでも教師だよ? ワタシ」
[吹雪]:「教師が生徒に教えてもらってちゃ世話ないだろうが」
[繭子]:「グサー」
自分で効果音を付けてるし……。
[繭子]:「舞ちゃーん、ふーちゃんがいじめるー」
[舞羽]:「いじめてはないと思いますよ? 繭さん」
[吹雪]:「舞羽に助けを求めんな。10:0でマユ姉が悪いじゃないか」
[繭子]:「そ、そんなことないもん」
[吹雪]:「じゃあ、俺の何処に否があるっていうんだ?」
[繭子]:「…………義理の弟」
[吹雪]:「何も関係ないじゃねぇかよ!」
ビシッ。
[繭子]:「あう、イターイ」
[吹雪]:「ごめんな、舞羽」
[舞羽]:「ううん、全然」
須藤舞羽、俺の子供の頃からの幼馴染だ。舞羽とはもう、十年以上の付き合いになる。何処に行くにも何処で遊ぶにも、いっつも一緒だった。ぶっちゃけ、俺の中では家族みたいなものだ。気の置けない、とてもできた子だと思う。
[繭子]:「ほら、いつまでも頭抑えてないで、行くぞ」
[繭子]:「ふーちゃんがやったんじゃないのー」
[舞羽]:「うふふ」




