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溺愛されし彼の人  作者: 椿ノ華
第二章
9/10

9  山での生活②

 今日も両親は揃って山頂に行く。もちろん二人でじゃなく山羊に良く似たパルカに新鮮な草を食べさせるためにだ。

 山に登るには小さすぎて危険があるらしく、連れて行ってもらえない。なんでも魔物や魔獣が出たりするらしい。魔物っていうのは、動物よりも凶暴で破壊力がある獣を指す、らしい。魔獣というのは、魔物だった獣が長時間かけて体内に魔力の結晶(通称魔石)を持つことで、魔法を使えるように変化した獣を指す、らしい。

 魔物と魔獣の区別はイマイチよく分からないけど、かなり危険な生き物なんだって。子供のあたしなんて一口で飲み込まれてしまうことだってあるらしい。真面目な顔をしてお父さまは力説して、微笑みながらお母さまは脅すし。もう少し大きくなったら山頂へ連れて行ってくれると約束はしてくれたけど、まだ先は長いような気がする。


 残されたあたしは掃除しする。1階と2階を掃いてゴミを集めて暖炉へポイっと。食器を洗って片付けてあたしの仕事は終わり。後は両親が帰って来るまで自由行動。多分、帰ってくるのは昼過ぎくらいになると思うけどね。

 だからあたしは山小屋から歩いてすぐの森へ出かける。

 この森は深くて大きいらしい。麓の村から山頂近くまで続いているんだって。あんまり中へ入っていくと迷って出れなくなる、と父に脅された。まぁ~確かにあの森は深いと思う。入口付近は光が届くけど、入口から10分も歩けばもう光が届かなくなる。昼間なのに夕刻から夜になる僅かな時間帯と同じくらいの暗さになるんだもん。あの時はビビってすぐに戻ってきたけど。

 ほら、子供って好奇心の固まりだし、あたしはキノコ大好きだったわけだし。決してキノコ探索のために行ったわけじゃないのよ。シイタケとシメジが大好物だったから絶対見つけたいって食欲に負けたわけじゃないのよ。いろいろと体験とかしたいわけよ。あたしは身体は子供だけど、心と知識は大人だから大丈夫って思うわけじゃない。

 その結果、両親に激昂され涙されて心配させちゃったけど。


 今日は入口付近に生えているオルムの木から実を採るつもり。オルムっていうのは、外見はミカンにそっくりなリンゴ味の果実のこと。一口食べた時、驚いたわ。頭ではミカンだと思っているから口の中では「みかんがやってくるぞ!味は分かってるな?」的な状態なのに、食べたら「リンゴじゃん」だもの。理解するのに時間がかかったわ。でもあれからオルムはあたしの一番好きな果実になったけどね。

 後はゲルカの実を採って、キーナを採る。

 ゲルカって言うのは、外見は栗で味は桃。とげとげの中にはとろけるほどの果汁を含んだ実があるんだ。ホントに味は桃そっくり。桃よりも甘いかもしれないほど美味しいんだ。

 キーナって言うのは、外見はイチゴ味もイチゴ。違うのは色と実の付き方。真っ白な実、表面には緑色の種がびっしり、ブドウのように何粒も連なって一つの房として生っていた。食べるまではブドウみたいなものかと思っていたけど……しっかりイチゴ味には驚いた。生前の知識に惑わされてはダメだって自覚した時でもあったよ。つい「苺のショートケーキが食べたい」って呟いたら「それは何だ?」って聞かれたっけ。

 ……この世界にスイーツは普及されてないのかな?でもクッキーやタルトはあるみたいだから、生クリーム系がないのかな…。

 こ……これは重大な問題だ。

 人生の楽しみ半分はスイーツで成り立っているって言っても過言ではないのに!そのスイーツの種類が少ないってあんまりだ。

 これは生前の知識をフル活用してどうにかしなきゃ。

 スイーツの発展に力を入れないと!!その前にお菓子作りを教えてもらわないと!!

 今日は一杯採って、半分はジャムにして後はお菓子作り教室開催にしないといけない!!もちろん作るのはあの筋肉隆々な野獣よろしくな父。あぁ~見えても手先は器用でお菓子作りは趣味という。お菓子作りの先生にはもってこいな父!!

 自分の父ながら可愛らしと思う。

反対に母は、身体を動かすのが好きでいつも動いている。

両親の組み手を見たときは感動した。

 絶対に相手を傷つけないし、相手に当てない。ビュンっと風を切る音と、バシュっと風を蹴る音がすごかった。あれは人間業じゃない。絶対違う。風を切ったり蹴ったり出来るはずがない!それでも舞いを踊っているかのように動く俊敏な両親に感動を覚えたのは間違いないのだ。だって「あたしもしたい!!教えて」と言ったが、笑顔で「却下」されたし。でも諦めないぞ!!

 そんな感じで、某アニメの少女以上なリアル山暮らしを満喫している。

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