しろいはへん。
青山やレオン達が帰ってから、悠人は六花を連れて郊外に向かった。
途中花屋で大き目の花束を作り、その束は青と白を基調としてオーダーしていた。
「お見舞い…?」
「ひみつ」
微かに笑い、再び車に戻り山に入っていくと舗装された道を、上へ上へと登り。
車を降りると、六花の目に一面の墓石―――霊園だ。
黒のコートの背中を追い、霊園にありそうな柄杓や桶がないのを不審に思い、着いて行く。
「ここのエリアは、仏式じゃないからね。水はかけないんだ…。」
芝が敷き詰められ、地面から少しでたプレートが沢山並んでいる。
数分歩けば、足を止めて手にしていた花束をそっと置く。
「父さん、来たよ」
西洋の墓石には、悠人の父の名前が彫りこんであった。
「先祖代々の墓も、勿論あるけどね。父は祖父母と折り合いが悪かったから…」
似たもの親子だったらので、些細な喧嘩はしょっちゅう起きていた。
事故死した時に、遺品の中から手紙が出て来た時は驚いたが、是が非にでも墓は自分だけのを建ててくれと。
「…悲しいね、仲が悪いってのは。」
冷たい空気が、さわさわと六花の長い髪を揺らして行く。
「悲しいよ、でもきっと後悔している筈だからこの霊園にしたんだ。」
墓石の正面には、同じ霊園の和式の墓石の群れ。
すり鉢状の反対側に、祖父母の入る先祖代々の墓があると。
「この位距離があれば、向かい合っても喧嘩しないデショ?」
ふふ…と笑って、頑固者の家系だからと六花に笑う。
「父さん、僕の御嫁さんになってくれる子だよ。可愛いでしょう?」
物言わぬ墓石に、紹介をして六花は小さく自己紹介をする。
ポツリポツリと、白い破片がゆっくりと降りてくる。
小さく小さく砕かれた破片は、「雪」となって2人の肩や背に降り積もる。
「六花―――多分、1年かその位で僕は今の会社を辞めるよ。」
くりっとした大きな目が、見上げてじっと言葉の続きを待っている。
「そして、和奈城の会社を継ごうと思う。」
「そう…。」
「付いてきてくれないか?和慎へ。」
「うん…、付いて行く。またお仕事頑張ろうね?」
ようやく笑って、見上げれば悠人も目を細めて見下ろす。
「あ り が と う 」




