第65話「南国!サウカン!」
油津港での戦闘を終え、4人は海を見つめていた。
「……海って、思ってたより危険だな」
アキラが呟く。
半魚人。
巨大なワニ。
そして、レットが異常な反応を示したこと。
「海、怖いね……」
ユウも少し引きつった顔で海を見る。
「泳ぐとか、無理じゃない?」
瀬里奈も頷く。
「私も泳ぎたくない」
「俺もだ」
アキラは即答した。
せっかく海まで来たのだが、海水浴どころではない。
「よし。帰ろう」
「早っ!」
サトミが笑った。
帰路は来た道とは少し変え、串木野市方面を経由して帰ることになった。
ストツーに乗り込み、海岸線を走る。
やがて、日南海岸が見えてきた。
「うわぁ!」
サトミが窓の外を見て叫んだ。
道路沿いにはヤシの木がずらりと並んでいる。
青い空。
青い海。
白い雲。
そして南国らしい景色。
「南国!」
サトミが大興奮する。
「サウカン!」
「……サウカン?」
アキラが首を傾げた。
「ギュン!」
「いや、だからサウカンって何?」
「サウスカントリー!」
サトミが胸を張る。
「南国!」
「……」
「私、札幌出身なの!」
「え?」
全員が振り返った。
「札幌!?」
「そう!」
サトミは嬉しそうに笑った。
「北海道の札幌!」
「お前、宮崎生まれじゃなかったの?」
「違うよ!」
「じゃあ、なんで都城に?」
「移住支援!」
サトミが答えた。
「去年、家族で都城に引っ越してきたの!」
「ああ、そういえば……」
アキラが思い出す。
「そんな話してたな」
「そうそう!」
サトミは窓の外を眺めながら笑った。
「北海道から来たから、この景色を見るとテンション上がるんだよ!」
「なるほどな」
アキラも納得した。
「それでサウカンか」
「そう! サウスカントリー!」
「ギュン!」
「そのギュンもよく分からんけどな」
車内に笑いが起こる。
そのとき、ユウがふと思い出した。
「そういえば、サトミさんの家族は?」
「あ」
サトミがスマートフォンを取り出した。
「宮崎市に避難するってLINE来てたよ」
「宮崎市か」
「うん」
サトミは少し考える。
そして突然、ニヤッと笑った。
「じゃあ、多分来週の都城の人口は4人ね」
「……」
一瞬、車内が静かになった。
「4人?」
アキラが聞き返す。
「そう」
「俺たちだけか!」
「たぶんね」
「ははははは!」
アキラが吹き出した。
「都城市、人口4人!」
「少なっ!」
ユウも笑い出す。
「市なのに!」
瀬里奈まで笑っている。
「4人って!」
「しかもレット込みなら5匹……じゃなくて5人?」
「レットは人じゃないでしょ!」
「キュー!」
レットが抗議するように鳴いた。
「はははは!」
車内は大爆笑になった。
だが、笑っていられたのも束の間だった。
「前!」
瀬里奈が叫ぶ。
海岸線の山側から、紫色の鹿が飛び出してきた。
「またか!」
アキラがハンドルを切る。
「サトミ!」
「任せて!」
ストツーの魔法装置が起動する。
水の刃が飛ぶ。
ズバッ!
紫色の鹿が吹き飛ぶ。
「右!」
今度はチョリキ。
「撃つよ!」
サトミが魔力を込める。
炎が飛び、チョリキを吹き飛ばした。
さらに道路脇の山から、別の魔物が現れる。
「多いな!」
ユウが槍を構える。
「でも、車からなら楽!」
「その通り!」
アキラはアクセルを踏み込む。
ストツーは海岸線を走り続ける。
南国らしい美しい景色。
その一方で、山からは次々と魔物が現れる。
「海も危険!」
「山も危険!」
「じゃあどこなら安全なんだよ!」
アキラが叫ぶ。
「家!」
ユウが即答した。
「それはそう!」
再び車内に笑い声が響く。
ストツーは魔物を蹴散らしながら、串木野市方面へ向かって走り続けていった。




