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047 誘蛾灯

―――今更ではあるが、アルバニア王国には、二種類の港がある。


 そして、今回ルドラたちがいるのはそのうちの一つ…ゴルバニア港町と呼ばれる場所だった。


 アルバニア王国であれば、アルバニア港ではないか?


 そういう疑問もあるが、実はこの港は…元々は、黄金が産出された鉱山の跡地でもあったのだ。


 ゴールデンな賑わいを見せた場所であったが、物事には何事も限りがあるもの。


 そのうえ、産出量もかなり少なかったようで、そう長続きはしなかったうえに、魔物たちの襲撃がかなり多く発生する不幸にも見舞われた末に…とんでもない大爆発が生じ…海とつながったらしい。




 愚かさゆえに、神が起こした天罰か、あるいは自然の偶然か。


 それはわからないが、とりあえず海がつながったのであれば貿易の場所としての再利用がしやすく、魔物が海からやってきやすい場所でもあったので、むしろ戦いにまだ慣れていない従魔騎兵たちの都合の良い実戦の場所としても扱えるようになった結果、かつての黄金の時とは違う賑わいを見せる場所として、生まれ変わったのであった。





「ついでに言えば、今が旬の初々しい従魔騎兵たちを見て、今後の国の将来を見やすい場所としても有名であると聞いたが…別の噂が、独り歩きしているそうだな、爺や」

「ええ、そうでございます。何でも今、浜辺の方にこの世のモノとは思えない、美しい女たちの戯れが見えるとか、天女の訪れだとか…」

「ふむ…一応はこの海の魚介たちの友好的な態度で、魔物たちを退けたりしている分、より安全が確保される場所として観光地としても良い場所だが…」

 


 ガルバンゾル帝国の第一皇子にして、今は腹痛で政務に支障が出ている皇帝に代わり、他国での交渉を担っているバストリアは、昔からのお供である執事のセバドズに対して問いかけていた。


「アルバニア王国への、警戒は我が弟でゼストリアもしていたからな…父上に対して今は王国へ戦を仕掛けるべきではないとか説明していたが、さてどのようなものがいるのかと楽しみにしていた矢先に、面白そうな噂もあるとはな」


 これだから、他国へ交渉に向かう時に面白いモノがあるから楽しみが常にあるのだと、軽く笑うバストリア。


 交渉役としてこうやって諸外国を回るからこそ、自分自身の目で直接確認できるのが良いのだ。






「まぁ、気になるのなら見たほうが良いか。爺や、頼む」

「ほっほっほ、承知いたしましたぞ。万が一にでも罠の場合は、逃げますがな」

「まぁ、こんな場所でそんな危険な目に遭うこともあるまい。魚共が目を光らせているはずだからな。…今更だが、文字通り光っている奴がいるが…」


 帝国でも、ここまでの色物は見ないだろう。


 面白いとはいえ、物事には滑るものもあるため、ほどほどで良い。



 そう考えつつ、バストリアは目的地へ向けてすぐに動いたが…彼は知らなかった。


 その天女の話と、王国内の従魔の話で、対象が一致しているという事実に。


 さらに言えば、今は夏であり水着姿の美しさと、心の底から主と一緒に楽しむその華やかさが、どれほどの威力を持っていたのかということも、理解していなかった。









―――場所は変わって、ガルバンゾル帝国。


 第二皇子のゼストリアは今、頭を抱え込んでいた。


「…マジかぁ、確実だろうとは思っていたけど、三位一体でそこまでやれるのかぁ」

「マジでございますが…皇子、大丈夫でしょうか」

「ドクターヴィガル、これで大丈夫に見えるか?」


 執務室にてぐったりとした様子を見せる彼の姿を見て、心配そうな声をかけるが、どうやら見た目通りの状態らしい。


「聖公国アヴァロニストの、汚物にして悪名高かったとされる大司教の失脚…表向きには神々の断罪を直に受けての蟄居とあるが…違うだろう?」

「ええ、報告によれば大魔王三体分の呪詛をぶち込まれた様子かと」

「うわぁ」


 どれほどの運の悪さで、相手にしてしまったのだろうか。


 色々と黒いうわさが絶えなかった大司教の末路…それに導いたであろう話を聞き、ゼストリアは辟易した気持ちになった。


「…いや、本当にシャレにならんだろ。ハクロというものがアラクナーと言う大魔王の姿を持つのはわかっていたが、追加で明かされたのがギランのギガス・アルケミアオーガ、リリスのクトゥルフ・スキュラ・ベータ…どっちもアラクナー同様の巨体を誇りつつ、大魔王か」


 帝国の諜報員をもってしても、これだけの規格外が集まる者がいた記録があっただろうか。


 むしろ、これだけのやばい戦力を有しながらも悪意を持たないその主に敬意を表すべきか。


「しかし、大司教のことはほぼ自業自得とはいえ…これだけの違法薬物に、国際禁止されている遺物の山か。この帝国であっても、禁じられたものを、奴はどこから手に入れたんだ?ドクターヴィガル、我々とは関係ないモノから来ているよな?」

「それは間違いないかと。いくらマッドな実験をやりたいとは言え、下手な伝手は使わず…むしろ、ここまで手に入れる手段があったのかが気になりますな」



 やばいものを扱わないことはないとはいえ、大司教の手に入れてきた品物の入手ルートが気になるところでもある。


 ここまでの見事に国際法を何重にもぶち抜いて違法なものを引き込むには、背後に相当大きなものが無ければ難しいだろう。


「…帝国内でも気を付けなければいけないか。あるだけで、国際法違反で各国からの非難が目に見える」

「国内に魔物を転送する方法も使えますがな」

「一応、それ合法」


 戦略的手段に合法も違法もあるのか。


 そこは思ったが、考えないほうが良いだろう。




 そんな時だった。


「おお、皇子へ報告を申し上げます!!」

「お?」




 急に飛び込んできたのは、皇子の配下である諜報部隊の一人。


 何やら急いだ様子で飛び込んできた。


「どうした?」

「そ、それが第一皇子に関してのご報告!!心臓発作でぶっ倒れました!!」

「何だと!?あの兄上が!?よ、容体はどうなのだ!!」

「回復しましたが、現状その、えっと…いやそもそも、起きた原因というのも‥」

「何だ、やけにはっきりしないな…ん?」


 何やら言いよどむ報告内容に、眉を顰めるゼストリア。


 どう考えてもこれは、ろくでもない報告が確定している時のモノだ。


「そういえば兄上は今、他国へ…それこそ、話しやすい海の方に…まさか」

「はっ、それが今、あの例の従魔及び主と接触して…その中の、鬼の方に恋をしたと」



「ーーーーぬわぁにをやっているんだ、あの兄上(馬鹿)はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 思わぬ報告に対して、激怒したゼストリアの怒声。


 そのすさまじさは城を揺らしたのであった…

予想できた光景か

なんにしても次回に続く

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