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ゲルドアルド─蜂の巣の魔人と機械の巨人─  作者: 産土
スーパーレガクロス内戦編

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ゴリラ舞う・1

三章に引き続きメカゴリラです。


ブックマーク登録ありがとうございます。


◆ゲシュタルトシティ。ドーム型多目的試験場。




敵意剥き出しの視線が自分達の主で向けられている。


主であり、自分達が棲む巣の化身であるゲルドアルドを、レガクロスの金属眼球越しでも判る不快な感情で睨んでいる。


土地を間借りしている組織であるゲシュタルトの施設を破壊しながら落下してくる見知らぬレガクロス。


そんな者達が突然現れたとき、ゲルドアルドが引き連れている、群れを守るために自爆すら厭わないニトロハニービーである彼女達が、どういう反応するのか。


それは火を見るよりも明らかであり。


そして火よりも激しく分かりやすい手段を持って行動に移される。


レガクロスに匹敵するレディパールの巨体。それに見合う大きさの一対の翅の先に三メートルの〈ロイヤルニトロワックスミサイル〉が形成されている。

レディパールは何の躊躇いもなく独自判断で発射。レディパールに続いて八体のニトロハニービーデストロイヤーと六体のニトロハニービーバンカー達それぞれが一対の翅の先から計二十八本の〈ニトロワックスミサイル〉を一斉発射。


ドーム天井を爆破し、発生した瓦礫と煙をいち早く突き抜けた先頭の黒いレガクロスが自分に迫る大量のミサイルを視認して、中の操縦者は身を強張らせてしまう。それはMPを通じて機体にも反映された。黒いレガクロスが身を強張らせてしまう。

MP操作は思考でダイレクトに操縦できる反面「私、動揺しました!」という人間的な無駄な動きも伝えてしまうという欠点も存在している。


ゲルドアルドよりも戦闘慣れしているメックマンの「あいつら素人だな!」という陽気な声と、先頭の黒いレガクロスに〈ロイヤルニトロワックスミサイル〉が突き刺さるのは同時だった。


固まったニトロハニービーの蜂蝋は鋼のように硬い。


先頭の黒いレガクロスに〈ロイヤルニトロワックスミサイル〉の一本が機体の真下、脚と脚の間の股間に深々と突き刺さる。バルディッシュが大柄な男性体型なので見ていると男の下半身が思わずキュンとなる凄惨な光景だ。強打ではなく突き刺さっているので、男女の垣根を越える嫌な光景である。

もう一本はゲルドアルド達を見下ろすように下に向けていた、顔面を剥ぎ取るように黒いレガクロスの頭部を粉砕している。


ニトロハニービーの爆発する蜂蝋は危険な爆発物だが非常に扱いやすい。


何故ならニトロハニービーの固有スキルでしか蜂蝋は爆発しないからだ。


しかも蜂蝋を作り出した個体のスキルでしか爆発せず、唯一クイーンニトロハニービーだけは自身の群に属する個体の蜂蝋を起爆出来るが、それを抜けば火で炙られようが衝撃を加えようが絶対に外的要因で爆発しない。


完全にカウンターとして決まった巨大な〈ロイヤルニトロワックスミサイル〉は、急降下していた黒いレガクロスを、映像を逆回しするように上空に押し上げた。

自由落下の勢いとミサイルの推進力の会わせ技が、股間に突き刺さったミサイル更に機体の奥深くへと誘う。装甲や金属骨格が歪み軋む不快な音は、まるで黒いレガクロスの悲鳴のようだ。


不運な事にその機体に続いて煙を抜けようとした二機の黒いレガクロスが、打ち上げられた機体に巻き込まれた。

お互いの背部から伸びた、翼膜の無い蝙蝠の翼に見える筒上の推進機を備えた翼と、長く太い翼と同じ推進機を先端に備えた尻尾が絡まったのだ。


先頭の黒いレガクロスに巻き込まれた、打ち上げられた二機の黒いレガクロス。そこに二十八本の〈ニトロワックスミサイル〉が次々と襲いかかる。

突き刺さりはしなかったものも、黒い装甲を歪ませめり込み、そのまま推進機となって黒いレガクロス達をドームの外へと追いやる。


(起爆。)


レディパールの命令で、黒いレガクロスをドーム外に押し返した全てのニトロワックスミサイルが一斉に爆発。

七色に燃え光るニトロハニービーの蜂蝋特有の美しい爆炎が、ドームの外で花咲く。


「ひょーゲルさん、相手は素人だぜ。

いきなり不特定多数の前で処女喪失で吹かせるなんて一生物のトラウマじゃーん」


「俺ちゃん余りの所業に震えちゃーう」とメックマンが品の無い言葉で囃し立て、股間を押さえて身体をくねらせ、わざとらしく震える。

わざわざマスクを外して見た目だけは大和撫子の姿でくねくねするメックマンを見たゲルドアルドは「コイツ絶対中身女じゃない」と思った。会う度に思っている。


「その見た目で股間を押さえるのやめてくださいメックマンさん。後、周りのメカゴリラも器用に股間押さえるのやめて」


更に周囲ではメカゴリラ達が叫びのゴリラフェイスになって内股で股間を押さえていた。


それを見てゲルドアルドは引いている。


ゴリラフェイスの表情とポーズのミスマッチが不気味だ。


『『『『震えちゃーう』』』』


声を見事に重ねてゲルドアルドをイラっとさせる見事なチームワークを披露してくるメカゴリラ軍団。


黒いレガクロスの破片が……何故か黒だけではなくて、オレンジ色の手足がバラバラと落ちてくるなか、メカゴリラなギルメンが声揃えてメックマンの真似をしてくる。


凄くイラっとする光景だ。


「うぜぇ……というか皆さん、ティータ姫殿下いるの忘れてません?

お行儀よくしろとは言いませんけど、あんまり変なこ……うわっ!クロックロード!?」


ゲームと言えど王族の前ですよとギルメンを注意するゲルドアルド。説教の途中、真横にいつの間にか神々しい輝きを放つ黄金のレガクロス、クロックロードが直ぐ隣に居ることに気付きレディパールの上でのけ反ってしまう。


クロックロードは何故か満足気に機体の首を何度も上下させていた。


『ひょーゲルさーん、初なヴァージンガール達のおかわりだぜぇー?』


一番近くに居るメカゴリラの拡声器からメックマンの声が響いた。同時に操縦者不在で停止していたMP増殖炉が唸り上げ、彫刻のように微動だにしていなかったメカゴリラが、機体全体を震わして再起動。


ゴリラフェイスの両目が真っ赤に輝く。


爆発に気付いて来たのか、破壊されたマジックミラー式のドーム天井の上に新たに十体の黒いレガクロスがゲルドアルドの目に映る。

というかいつの間にレガクロスに乗り込んだのかメックマンさん……。


ゲルドアルドとメックマン達が呑気な会話をしている間も警戒していた、レディパール達が再びミサイルを発射。


黒いレガクロス達が七色の爆炎に包まれるが、翼と尻尾を丸めて球場の雷に包まれた八機の黒いレガクロスが突き抜けてくる。

それはバルディッシュⅣに搭載されている〈エレクトロシールド〉に酷似していた。


密集していないせいでレディパールの〈ロイヤルニトロワックスミサイル〉が直撃した機体以外は損傷は軽微。

やはり破壊された機体の残骸は黒だけではなく、オレンジ色の残骸が混じる。


良く見ると酷似しているのは武装だけではない、機体自体も背部から伸びたジャベリンと似た翼と尻尾以外は、バルディッシュⅣにそっくりだ。


バルディッシュⅣの胴体から不自然に伸びる背部へと繋がるパイプや、別デザインの装甲に機体が挟まれるように胴体に食いつかれている姿。

その様子はゲルドアルドやメックマン達に「寄生虫」「宿り木」等、パラサイトな生態の生物が脳裏に浮かばさせる。


「なるほど定番ですね」という住人には理解できない、そういう娯楽に慣れ親しんだプレイヤーならではの納得を持って、黒いレガクロスの正体をゲルドアルド達は正確に看破した。


久々に生身で激戦の予感を感じるゲルドアルド。


配下のハニービーが揃っている状態なのと、死への恐怖はだいぶんましになっているので余り緊張感は、無い。


二人の未熟なクイーンを抱えているのが、不安と言えば不安だ。


「……巣にも黒いレガクロスか、あっちの巣から援軍に来てもらおう」


更に三機の黒いレガクロスの追加がミサイル攻撃を生き残ったレガクロスの背後に現れている。しかも追加の三機は一機だけ形が違う。


新たな見覚えのある機体を見たゲルドアルドは横目で『あぁぁぁぁぁぁぁ!!俺ちゃんのレガクロッス!?』とわざわざゴリラフェイスを叫びの表情にして驚愕を現すメックマンの乗るメカゴリラを見る。

もしかすると無意味に操縦者の感情と連動しているのか知れない。


記憶とは違う黒色に変色し、背部にジャベリンのような翼と尻尾が追加されているが、全身に鮫を模した造形が施された特徴的な装甲と二メートル程金属の鮫を横に連結した左右に広がる奇妙な翼が確認できる。


確かにあれはメックマン専用にフルカスタマイズされたバルディッシュⅣ。

FC(フルカスタム)バルディッシュⅣ・シャークムート】だ。


切り抜けるのは無理ではないが、時間はかかりそうだとゲルドアルドは悟った。


雷の球体防護壁を自ら引き裂くように四肢と背部の翼や尻尾を広げ、同時に防護壁を解除する黒いレガクロス。


先に現れ八機に減った、黒いレガクロスが背部の翼にある筒状の推進機をゲルドアルド達に向ける。それぞれの先端から紫電の輝き漏れ光った。

続いて両腕がゲルドアルド達に向けられ、左右の腰部からぶら下がる金属の箱が同じく黒いレガクロス下方に居るゲルドアルド達に向けられた。それぞれの先には暗い砲口が口を開けている。


最近ゲルドアルドがサンダーフォーリナー越しに散々見たプラズマ弾発射の前兆だ。腕や左右の腰部パーツを向けるジャベリンにパラサイトされているバルディッシュⅣの行動は言わずもがな。


「〈蜂蜜作成〉〈ハニーシールド〉〈ハニークリスタルシールド〉〈フライングビーハイブ〉〈ゴーレムシールド〉ボクの防御魔法だと幾つか抜けそうなので各自防御を固めてください」


ゲルドアルドやメカゴリラ達を覆い隠す、巨大で芳醇な香りのする蜂蜜の円形盾が魔法で空中に形成される。その裏側に蜂蜜結晶の盾が蜂蜜の盾を支えるように形成。

防御魔法を展開したゲルドアルドは、周囲のギルメン達に「身を守れ」と言い捨て、魔法で生み出した球形の空飛ぶ蜂の巣の後ろにレディパール達と隠れ、近くで直立姿勢で佇んでいたバルディッシュⅣ型ゴーレム二体を呼び寄せ防御を固めた。


黒いレガクロスのゲルドアルド達に向けられた、砲口を兼ねた推進機から幾つものプラズマ弾が連続で飛び出す。


「「「「〈ゴーレム召喚〉〈ゴーレムシールド〉!!」」」」」

『『『『『〈マシーンアーマーブースト〉!』』』』』

『『『〈グレートマシーンアーマーブースト〉!』』』

「〈アーマーライド〉!」


レガクロスに搭乗していないギルメンが大慌てでゴーレムを召喚。同時にゴーレムの身体の一部を頑丈な盾に変形させて身を守るスキルを発動。

メカゴリラに搭乗していたメックマン達は操縦士系ジョブの乗り物の強度をするとスキルを一斉発動。

ただ一人、アイゼルフモーターコングがベースのキメラに騎乗していたギルメンが騎乗系ジョブのスキルで、自分と相棒のキメラを不可視のシールドで防御を固める。


プラズマ弾発射から間髪入れず、黒いレガクロス達の両腕、分厚く膨れた手甲状の装甲に備わる発射口から、魔法で圧縮高質化加工と内部に火種を仕込まれたオキシジェンスライムを撃ち出す〈アームオキシジェングレネード〉、腰部の小さな回転砲台から物理的な衝撃を伴う圧縮熱の塊を電磁加速で撃ち出す〈リニアヒートガン〉、太く重厚な箱型両足装甲の脛の部分表面、装甲が変形して出現した六十の発射口から次々と五センチの金属球〈レッグクレイモア〉が爆音と共に撃ち出され次々とゲルドアルド達に向かって降り注ぐ。


空気を弾けさせ光輝きながら迫るプラズマ弾。酸素の青に染まるオキシジェングレネード。音速で飛ぶ圧縮熱の塊。乱れ飛ぶ金属球……それがドーム内を埋め尽くすのではないかと思うほどゲルドアルド達に向かってくる。


ジャベリンのカタログスペックはゲシュタルトのメンバーなら大体知っている。バルディッシュⅣの武装はそれ以上に知っている。開発途中の試射で、そして戦争で実際に見てきた。


なので全員理解していた、巣から離れた状態のゲルドアルドの防御魔法では危ういと。

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