時空間魔法陣と問題児
描けたぁぁああああ!
・・・・・・すいません。取り乱しました。
それでは、どうぞ!
泉涼祭が終わり、オカルト研究部にもようやく日常が戻ってきて、桜たちは平和な日々を送っていた。
ただ一人を除いて・・・・・・
「できたぁぁぁあああああああああ!!!」
「うおわっ!?」
「どうしたんだよ、楓。そんなに慌てて」
「そうだよ、そんなに発狂して」
「・・・・・・確かに、・・・・・・して」
「雫さん!?今なんて言ったの!?あと、お前ら最近俺の扱いひどくね?そういうのは、蓮の役割じゃなかったの?」
「・・・・・・ふっ、楓が知らない間に俺は新たなる世界に足を踏み入れた」
「「「「「ソーデスネ」」」」」
「「・・・・・・・・・・・・」」
「すごい棒読み!?そして、椿と葵はどうして温かい目で俺を見てるの!?」
「なるほどな」
「なんで、お前が納得してるんだよぉおおお!!」
などと一通り無駄話をしたあと、改めて蓮が楓に問いかける。
「んで、何ができたんだよ?」
「ああ、そうだった。時空間魔法の魔法陣がようやく完成したんだよ」
「・・・・・・悪い。もう一回言ってくれ」
「だから、時空間魔法陣が完成したんだよ!」
楓の言葉に蓮だけでなく、他のみんなも耳を疑う。
それもそのはずで、楓が魔法陣の手がかりを見つけたのは無人島に散歩に行っているときで、そのとき蓮たちは普通に授業を受けていたので知らなかったのである。
楓もそのあと、泉涼祭の準備で忙しく手がかりを見つけたことを蓮たちに言い忘れていたので、蓮たちは時空間魔法陣の完成の目途が立っていた、ということさえ今まで知らなかったのである。
「それで、どうやって完成させたんだ?つーか、どういう作りなのか魔法陣を見せてくれ」
「ん、わかった。・・・・・・これだ」
「・・・・・・かなり複雑な魔法陣だな。しかも、肝心の行き先が描いてないのはなんでなんだ?」
「それに、この魔法陣六つの魔法陣が重なってできてるよね。これじゃあ起動の時に、お互いの魔法陣が反発しあってうまく作用しないと思うんだけど」
「おっ、よく気づいたな桜。確かにこの魔法陣は発動しないな、魔力だけじゃな」
「・・・・・・つまり、魔力だけでなく、他の力・・・・・・例えば妖力とか霊力とかをそれぞれの魔法陣に流せばこの魔法陣は発動するってこと?」
楓の言葉の意図を読み取り、言葉の続きを口にする椿に楓は大きく頷いて補足説明する。
「そういうことだ。込める力は、俺達が今現在身に着けている六つの力をそれぞれの魔法陣に流すんだ。ちょっとこの石を見てくれ」
そういって、楓は無人島で作った全ての力を均等に込めた石を桜たちに見せる。
「この石は偶然できたんだけどな。六つの力が混ざり合ってないだろ?そして、これには俺の力が込められている。だから、俺は石を通して周りの魔力や霊力を読み取れるんだよ」
「なるほど。その原理を使えば、魔法陣を使って私たちと同じ力が存在する世界を見つけられるってことね」
「・・・・・・そっか、だから魔法陣に行先の座標が描かれてないんだ」
「そういうこと。まぁ、それはこれからやるとして、みんなに頼みたいことがあるんだ」
『頼みたいこと?』
「うん、どこにその世界があるかは俺が調べるからさ。みんなは、完成した魔法陣でさっき俺が見せたみたいな石を作って異世界に飛ばしてほしいんだ」
「・・・・・・ん、まかせて」
「それはいいけど、なんで私たちが飛ばさないといけないの?」
桜の質問に楓はああ、そうだった、といって説明する。
「俺が石を飛ばしても、そこの地形がわかるのは俺だけだからな。情報は共有しておいた方がいいだろう」
「なるほどな。それじゃあ、パッパとやっちまうか」
そう言って蓮は、楓に力の込め方を聞いて適当な石を探しに外に出る。桜たちも力の込め方を一緒に聞いていたので、同じく石を探しに外に行った。
「んじゃあ、俺はサクッと魔法陣を完成させますか!」
楓は大きめの紙を取り出し、そこに先ほどみんなに見せた魔法陣を書いていく。そして、こちらも先ほど見せた石を魔法陣の上に載せる。そのほかにその石と同じ石を二個ほどポケットから出しておく。
この石は、楓が散歩から帰ってきた時にすぐに使った石で、あと七つほど作ってある。
「つーか、この石も名前付けた方がいいよな。全部の力を込めた石じゃ長いし、力が混ざってるんだから混石とか?いや、混ざってはいないんだよな。魔石は違うし、霊石、妖石・・・・・・要石・・・・・・かなめいし、うん、要石と名付けよう!」
楓は要石と名付けた石に込めた力を改めて感じ、魔法陣へ意識を向けた。
「さて、とそれじゃあ始めますか!」
そういって楓は魔法陣に六つの力を流し始めた。
楓は目を瞑り、石と同じ力を持つ世界を探していく。
いくつもの世界を感知していくが、どれも魔力しかなかったり、そもそも何の力も持ってなかったり、せいぜい魔力と霊力の二つの力がある世界が何個かあるぐらいである。
(やはり、そう簡単には見つからないか・・・・・・)
それからも、楓は石と同じ気配を探っていくが、それらしい気配は一向に現れない。
(おっ、三つの力のある世界を発見!・・・・・・もうこれでいいんじゃないかな?)
途中で意思が揺らぎかけたことがあったが、三つがあるなら、と自分に言い聞かせて気配を探っていく。
すると、先ほど見つけたばかりの三つの力のある世界がちらほらと増えてきた。
(なるほど。奥に行けばいくほど数が増えるってわけか。・・・・・・よし!四つの力を感知した!もうひと踏ん張りだ!)
その後も順調に増えていき、遂に五つまで達することができた。あと一つとなり、問題が起きた。世界の数が減っていたのである。最初は数えきれないほどあったのに、今では感じたところ二~三百ほどしかない。
(おいおい、ここまできてありませんでしたってのはよしてくれよ!?ん?あれは・・・・・・)
あと残り数十というところでギリギリ六つの力を持つ世界を感知することができた。
(あ、あった!良かった!さっそくどんなところか調べてみるか・・・・・・っと、その前に他にもないか探してみるか)
楓はできるだけいい世界に行きたいと思い、他にも同じような世界がないか探し出した。その結果、もう一つ同じように六つの力を持った世界を発見することができた。
(二つだけか・・・・・・。他に世界はないのか?何か引っかかるんだがな」
そういって楓は意識をもう一度集中して世界を探し出す。そうすると、一つの世界を発見することができた。
(見つけることはできたがなんだ、この世界は?なんの力も感じない。でも何かおかしい感じがする。薄い膜でおおわれているような。・・・・・・うーん、なんか気になるしな。とりあえず、この三つでざっくり調べてみるか)
楓は、ポケットから出していた二つの石を一つ目と同じように魔法陣の上に置き、それぞれの世界へと転送する。
「ふぅ・・・・・・、ようやく第一段階は終了だな。さてと、じゃあ第二段階行ってみるか!」
一息ついて、楓は次の段階へと進もうとする。
ちなみにだが、楓は汗をびっしょりと掻いていて、頭痛により顔を歪ませていた。それもそのはずで、何億という数の世界の中から、たった三個に世界を絞らなければいけなかったのだから脳に負荷がかかって当然である。
楓の言う第二段階とは三つの世界に石を送り、石を通してその世界の情勢やその世界自体の力の許容量を探ることである。
戦争ばかりしている世界やきな臭い世界、そして、何より力の許容量が少なすぎる世界では楓たちが楽しむことができないし、それ以前にストレスが溜まるからだ。
(ふむ、一つ目の世界はなんか雰囲気が悪いな。ほとんどの人間が貧しい生活を送ってるみたいだし。それに、治安が悪い。力の許容量は多めだがここは無いな。
二つ目の世界はみんな裕福というわけではないが、目立った貧困や争い事はないな。ただ、力の許容量は少ない。うーん、とりあえず保留で。
さて最後はなんか薄い膜で覆われてた世界だな。っうお!?なんだこの力は?しかも六つの力全部揃ってるし、なんかほかにも力があるな。それに力の許容量もバカみたいに多い。あとは、世界情勢だな。どれどれ、うん、なかなかいいんじゃないかな。それにほかの二つの世界にいなかった獣人やエルフなんかの亜人もいるっぽいし。
問題があるとしたら、魔獣が若干強すぎるような気がするな。俺達だったら余裕だけど、正義たちだったら苦労するだろうな。・・・・・・まぁ、うん、ここにするか。これで第二段階は終了だな。あとは、ここの位置を魔法陣に組み込むだけだ)
そういって楓は魔法陣を完成させるため真っ白な正方形の紙を出して魔法陣を書き始める。
すでに、息は絶え絶えだがここで終わらせてしまわないと今日はこれ以上できそうにない。自分の体に休んだら寝るぞと言い聞かせて魔法陣を書き進める。
「出来たぁあああー!」
書き始めてから十数分後ようやく魔法陣が完成して、楓は机に倒れこんだ。
「もう・・・・・・無理。・・・・・・寝る」
「・・・・・・んぅ、ふあぁ~」
それから、小一時間経ちすっかり日も落ちたころ、ようやく楓が目を覚ました。
「おっ、やっと目を覚ましたか」
「・・・・・・んあ、誰だ?」
「俺だよ!清く正しく格好いい、蓮さんだよ?」
「「「「「「「ソウデスネ」」」」」」」
「だから、なんで棒読みなんだよ!?たまには俺だってボケていいだろ!?」
「・・・・・・誰?」
「なんでお前がボケてんだよ!?いい加減にしろ!」
などと起きて早々蓮いじりが始まったが、楓はただ単に寝ぼけているだけである。
それから、数十分経ちようやく楓の眠気がとび話ができる状態にまでなった。
「・・・・・・ふぁ~、疲れた~」
「・・・・・・起きてすぐに疲れたなんて言う奴始めて見たぞ」
「まぁまぁ、蓮ちゃん。実際、楓ちゃんは頑張ってくれたんだから疲れてもしょうがないよ」
「それで、楓、魔法陣は完成したのか?」
蓮と桜の話でまた脱線しそうになったが、椿が話を戻した。
「ああ。なんとか完成したよ。ほれ」
そう言って楓は、楓の下敷きになっていた魔法陣を書いた紙を取り出す。
「本当だ。ちゃんと行き先も書いてある。でも、前のと少し変わってない?」
椿の言葉に桜たちも魔法陣をのぞき込む。よく見ると確かに少しだけ魔法陣自体が変わっていた。
「ああ。それは、その世界にはどうやら、六つ以上の力が存在するらしい。それで、二つほど空白の魔法陣を三つごとに一つずつ入れといた。それで、転移するときにもしその六つ以外の力が障害になった時は、その魔法陣が力を吸収してくれるはずだ」
「六つ以上の力?つまり俺たちの知らない力があるってことか?」
「そういうこと。まぁ、とりあえず、使ってみてくれ。みんなも要石作ったんだろ?」
「要石?」
「この石のことだよ。なんか名前がないと困るだろ?・・・・・・そういうわけで、使ってみてくれ」
「ふーん、まぁ、それもそうだな」
「楓もそう言ってるしやってみようよ」
葵の言葉にみんなが頷いて、要石を取り出す。
話し合った結果、みんなでそれぞれ魔法陣を起動し要石を送ることにした。理由は、全員が魔法陣を使って違和感がないか試してみることと、どうせならいろんな場所に要石を送って、出来るだけ多くの情報を集めようということになったからだ。
準備が整ったところでそれぞれが魔法陣を起動し、要石を送り向こうの世界のことを探りだした。
ちなみに楓は「腹減った」といって少し前に学食に行った。どうやら、仲が良くなった学食のおばちゃんたちに何か作って貰うらしい。
「で、お前らは何をやってるんだ?」
楓は部室に帰ってきて早々そんな言葉を口にした。それもそのはずで、桜たちはこの部室の半分はあるだろう巨大な紙に何やら書きこんでいたのだ。そう言いたくもなるだろう。
「何って、地図を書いてるんだよ?」
だが、桜たちからすれば至極真っ当のことだったようで、桜はなんでそんな質問するのかというような顔で当たり前のように答えた。
「うん、だからなんで地図書いてるんだ?」
未だに状況がわからない楓に椿が説明を始める
「ほら、それぞれで要石?だっけ。あれを送るってことになったでしょ?それで、そのあとお互いに情報交換しようってことになったんだけど、言葉じゃいまいち伝わりにくいって雫が言ってそれもそうだって話になってね。
それなら絵に書いてみたらどうだって言う話になって、それならいっそ向こうの世界の地図を作って、その地図にそれぞれが感知した情報を書き込んでいけばいいんじゃないかっていうことになったんだよ」
「・・・・・・なるほどな。それで、なるべく詳しい地図と情報を書き込むために、こんなバカでかい紙を用意したってことだな?・・・・・・んで、どのくらい完成したんだ?」
「ん~?大体六割ぐらいかな?実際に見て調べたわけじゃないから、景観とか環境とかの詳しいことはわからないし、人口は分かっても国の名前も国境もわからないけど。とりあえず、わかる所まで書いてるって感じ」
桜の答えを聞きながら地図を見る楓の顔は少しずつ驚愕の表情に変わっていった。
「おいおい、これって・・・・・・」
「・・・・・・うん、この世界と大体同じ」
そう、地図には強い生命反応や神族と思われる存在のいる場所も書いていたが、楓を驚かせたのはそこではなかった。
地図そのものの形が、楓たちが現在いる世界、地球にそっくりだったのである。もちろん、細かな違いはあるが概ね地球とほぼ同じ形をしている。
「だがこの世界、というかこの星かなりでかいな。こっちでいう木星くらいあんじゃないのか?」
「そうだね。木星は地球の約十倍だから、かなり広いと思うよ」
「まぁ、でも形がこの星とほぼ同じなら行先は決定だな」
そういって、楓は地図から目を話し、桜たちを見る。八人とも異論はないようで、桜や蓮は頷いている。
「それじゃあ、日本の東京に当たる所の近辺ってことでいいな?できれば、あまり人が来ない森の中なんかが良いんだけどな」
「それは、要石をその近辺に送って、人が来ない場所を調べればいいんじゃないですか?」
「そうだな。その方が確実だな」
楓の言葉を聞いた茜が楓に助言し、楓もその案に乗った。
「じゃあ、椿。要石送って調べてくれないか?それと、大まかな情報が乗った世界地図と細かい情報が乗った地球でいう日本に当たる所の地図を作ってくれないか?」
「わかったよ。持ち運びできるサイズでってことだね?」
「ああ、頼む」
「そうだね。世界地図はともかくこの日本(仮)の地図は、できるところまで徹底的に調べて書きたいから少し時間貰いたいかな」
「そのぐらいだったら、全然大丈夫だ。できたら、複製魔法で人数分用意してくれ」
「任せてよ。これは俺の領分だから」
「じゃあ、今日は解散!」
「りょーかーい!」
そうして、楓たちは部室を後にした。
いよいよ、第零章も終わりが見えてきました。
・・・・・・長かった。実に長かったよ、パトラッシュ!
でも、パトラッシュ。第一章はもっと長い予定だよ。
・・・・・・頑張れ、俺!
評価、感想・アドバイスなどがありましたら
よろしくお願いします。
それでは、また次話で会いましょう!




