最終話 勇者と魔王は手を取り合うようです
「んで?和平協定というのは具体的にどう結ぶんだ?」
差し伸べられた手を取りながら魔王はそう口にする。
「んと、ルーナはさ……どうしたい?」
「どうしたい……か。こっちの世界、魔界が危険にさらされなければそれでいい。」
「それじゃあそれで行こう。……って、その魔界っていうのは?」
「は?お前、元魔王なんだろ?それぐらい知ってるんじゃ……」
「いいや、何も」
魔王ルーナは右手を額に当てながら深く溜息を吐く。
「まさか俺以上に魔術バカだったとは……いいか?詳しくは知らないが魔界は俺達を召喚するための世界ってことだ」
「そっちに行くこともできるって事か?」
「できる……とは思うけど方法は分からない」
首を傾げながら言う魔王を見て、レイは何か思いついたように手をポンっと叩いた。
「あ、じゃあさ……ちゃんとした契約をすればいいんじゃないのか?」
「ね?」といいながらベルとリーシャの方を向き、二人も何を言われたのか即座に理解した。
「確かに、リアベル国で式をすることは可能ですが……類を見ないことなので確実にとは言えませんね」
「問題ないよ。できるならすぐにやった方がいい。」
「しかし、他の国の者たちが黙っているとは思えません」
「そこはほら……父上やベル兄さんが何とかしてくれたり……」
もじもじとお願いをする弟を見て折れるベル。
こんなかわいい弟の頼みを聞けない兄がどこにいるというんだ。
「わかったよ。俺からお願いしてみるけど……しばらくはレイが魔王とつきっきりになるからね?」
「大丈夫ですよ!任せてください!」
これまたものすごいにっこり笑顔でサムズアップする弟。本来なら心配になるところなのだろうが、その心配は必要ないだろう。
「って事だ!お前、変な真似するなよ!」
「しないよ。お前には勝てないってわかったからな」
「一応言っておくが、こっちの条件も同じ……この世界を危険にさらさないこと。それさえ守ってくれれば永続だと約束しよう」
「わかった」
レイの言葉にルーナは頷き、無事(?)海底迷宮を脱出した四人。
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案の定、各国からものすごい怒られた勇者だったが今までの行いと父ロドフと兄のベルが何とかしてくれたことにより鎮火。何より勇者が魔王の傍にいるという絶対条件の元許しを得た。
今日は今までにないほど人類にとって大事な日。
「なぁレイ……これほんとに着なきゃダメ?」
「気持ちはわかるけど決まりだから仕方ないよ」
二人同時に溜息を吐き、袖を通す。
こういう式の時は何故重苦しい布を着せられるのだろうか……わからない。
「それでは今から、和平協定及び勇者と魔王の和解式を始めたいと思います。」
神父らしき人間が口にし、二人は手元にある資料に目を通す。
「一つ。魔王は我ら人間界に許可なく魔術を使用するのを禁ずる。」
「一つ。我らは魔界に許可なく攻撃するのを禁ずる。」
「一つ。この契約は永続のものとする。」
「一つ。英雄暦改め、魔雄暦とする。」
「では、差し支えなければこの書類にサインを……」
全世界の人間がこの出来事を目の当たりにしている。
勇者はマナを……魔王は魔力でサインを行いこの契約書をより強固なものにする。
二人は同時にサインを終え、それを神父に渡す。
そして二人は立ち上がり……一人ずつ話す。
「俺は、この勇者の思い描く世界を見てみたいと思った。まだ信じられない人間も数多くいると思う。ゆっくりと時間をかけて信用を勝ち取って見せる。どうか皆には見ていてほしい。魔王としてではなく、一人の人間として」
ルーナは言い終わると一礼し、一歩下がる。
「かつての勇者は言いました。二度と剣は持たないと。そして俺は……勇者だけじゃない。みんなが剣を持つことのない素晴らしい世界をつくりたいと思いました。俺一人では決してたどり着くことのない景色を、新しい景色をみんなで見たい。なのでどうか!力を貸してください!魔王も勇者も関係ないそんな世界を……みんなで作っていきたいのです!」
レイの言葉を聞いていたリアベル国の民たちは大きな拍手をしていた。
そしてそれを見ていた各国の人たちも同様……レイの言葉に打ちのめされていた。
「まったく……君らしいな」
ビーネは拍手しながらそう言葉をこぼしていた。
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そこからしばしの時が流れ……魔雄暦十年。
勇者と魔王の年齢がに十歳になった。今も二人は一緒にいることの方が多いくらい仲が良く、わずか十年で魔王と勇者というものはなくなった。
「なぁ、しってるかレイ……この人間界と俺らの魔界のほかにもう一つ世界があるらしいぜ?」
「へぇ、どんな世界?」
「天界っていう世界らしい」
「ふ~ん……天使とかそういうの?」
「そ。んでさ!今度行ってみない?」
「まぁ前に魔界も行ったしいいかもな!よし!今度行こう!」
漫画をぺらぺらとめくりながら話す二人。扉があきその姿を見てはレイの方へとべったりとくっつく人物。
「レイ様~!わたくしもご一緒させてください!」
「リーシャはお留守番だ。魔界に行ったときは大変だったんだから」
「え~!今回は何もしませんから!わたくしをおそばにおいてくださいまし~!」
「まぁまぁリーシャさん。一応レイは人間界代表だから仕方ないよ」
「あ、ベル兄さん!」
優しい笑顔でさわやか身が増したレイの兄、ベル・ノーヴァ。今はリアベル国を代表して世界各国を飛び回っているらしい。
「や、久しぶりだね。レイが元気そうで何よりだよ」
「それはこっちもですよ!色々な国を旅してどうですか?」
「まぁ全部は回れてないけどね。楽しくやってるよ」
「そうですか!それはよかったです!」
こんな何もない日常……誰も剣を持つことがない、平和な日常が……この先もずっと続くことを心から願うばかりだ。
そうして、魔雄暦は何千、何万と時を重ねていく。
あの時、勇者は自分の非力さに絶望をして剣を二度と持つことをしなかったのだろう。
それでも……やり方や考え方を変えれば誰も剣を持たない、絶望しない。みんながわらって暮らせる世界をつくれると確信したかつての勇者、レイ・ノーヴァ。
彼の名はこの先もずっと、この世界だけじゃなく……魔界や他の世界にも轟くだろう。
そう……誰もが信じてやまないのだ——————。
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