表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/108

逃走成功とオレ

「なぁ」

「……」

「おいってば」

「……」

「おいこら、痛ぇんだよ!!」

「ぐぁっ?!」


 後ろから頭突きをかました。

 やっとこさ止まった。


「な、何しやがる」

「こっちの台詞だ。人の手ぇぐいぐい引っ張りやがって。ゴムゴム○実食ってたら確実に伸びてたぞ。つーか、引きずられかけてたし、握られ過ぎてアザなってっし、この落とし前どうしてくれんじゃワレ」

「あ、あぁ……悪い」

「良し」


 何とか振りほどいた手をさすりながら、オレはさっきの場所からオレを引っ張りだしたそいつを見上げる。

 ピンクの髪、ピンクの眼、チョコレート色の肌。


「サンクス、えーっと……アポロ」

「アドルフ。アしかあってない」

「あぁ、そうそう。アドルフだった」


 さっき駅で別れたはずのDDDの班長だった。


「強く掴み過ぎたか……すまん、だいじょうぶか?」

「いや、まぁ良いけどさ」


 さわんなっ!

 また触ろうとしてきたんで手を奪い返しておく。ついでにパンパンと払うと「その反応はさすがに無いだろ」と低い声が聞こえた。

 それにオレは視線を手に落としたまま、「痛いのとか好きじゃねぇし」と呟く。

 痛いのは嫌いだ。

 痛い思いをするのも、させるのも嫌いだ。

 でももう平気。平気、平気、平気。

 目を閉じてオレは心の中で繰り返す。

 そのオレの様子に何を勘違いしたのか、アドルフが困ったように眉を下げる。


「その……だから悪かったって。ちょっと力入りすぎてた」


 ピンクの髪をガシガシと掻いて、「大丈夫だったか?」とか聞いてくる。


「何がさ」

「さっきの奴。事情確認しないでお前引っ張ってきちゃったけど良かったんだよな?」

「あー……「アレ」ね……うん。うん、むしろなんつーか、助かった」

「知り合いか?」

「残念ながら」

「そんな感じだったよな」


 苦笑したアドルフにオレも苦笑いを返し、あざが出来てる手首を体の後ろに隠す。

 上手く笑えてっかね、オレ。

 ま、リムりんやヴィーたんならまだしも、オレがニヤニヤしても不気味なだけどさ。


「ちょっと、まぁ、目ぇつけられててさ。何かと絡んでくる奴だったからさ」

「お前、困ってる雰囲気すっごい出てたもんな」

「ふーん、そっか」


 あっけらかんと笑うアドルフにオレは曖昧に頷く。

 表に出てたか。

 オレもまだまだ修行が足りんぜよ。どげんかせんといかんぜよ。


「で、あんたがどっから湧いて出たかは興味ねぇけどさ」

「湧いて出た事決定済み?!」

「箱詰めにされて出荷されると途中か」

「チョコじゃないって」

「うん、知ってる。知らん訳ねぇじゃん」

「お前……」

「……ごめん、八つ当たりした」

「お、おい……」

「ちょっとタイム」


 オレはその場にしゃがみこんで膝を抱える。


「大丈夫か?」

「出来れば話しけねぇでくんねぇ?」

「あ、あぁ……お前の知り合い探してこようか?」


 だから、話しかけんなつってんじゃんか。

 オレはギンッとアドルフにガンを飛ばす。

 あーもー、これも八つ当たりだ。

 こんな事したかねぇんだって。頼むからそっとしといてくれよ。

 八つ当たりなんて最低だ。カッコ悪い。ダメだ、鬱だ、死のう。


「いや、死なんけど……」

「……何か良く分からないが……取り合えず良く頑張ったな」


 頭わしわしされた。

 グーをかましておいた。


「何故にっ?!」

「揺すられたら酔うだろうが、こんのアホんだらぁっ!!」

「逆ギレされたっ?!」

「正当な怒りじゃボケぇっ!!」


 ぎゃーぎゃーやってると、後ろからむんずっ、と襟首を掴んで摘まみ上げられた。

 ぶらーん。


「何をしている」


 この魅惑の腰砕けボイスの持ち主をオレは一人しか知らん。

 すーっと頭から血が引いて、急激に冷静になったのを感じながらオレは首を捻ってあんまり確認したくない顔を確認する。

 ……うん、やっぱ見るんじゃなかった。


「よー、デュラン」

「俺はその方向には存在しないがな」

「知ってる」


 わざとに決まってんだろうが。


「あ、ボス……」

「アドルフか、奇遇だな。何か問題でもあったか?」

「いや、そう言う訳じゃないんですけど……仕事終わったんでちょっと休暇もらったんです」

「そうか、お疲れ様」


 優雅に微笑むデュランに、気まり悪そうに視線を逸らすアドルフ。


「じゃあ、俺はこれで……仲間待たせてるんで」

「ああああー!!」

「どうしたナカバ」「ど、どうした?」

「アポロ!」

「アドルフ。俺がどうしたって?」

「奢れ」


 オレの言葉にアドルフが「はぁ?」みたいな顔をする。

 それにつりさげられたままオレはバタバタと手足を振り、


「奢れ。約束。金入ったんだろ?」

「あ、あぁ……」

「なら奢れ」

「今から?」

「今を逃せば次は無い」


 と、思う。基本的に奴は必殺仕事人だから。

 オレの言葉にデュランも「ふむ」とか頷いて、


「そうだな……お前が戻ったらアイスクリームでも食べようか、とあの二人も言っていた所だ。丁度良い」

「おお、アイス!」


 食いたい! 食いたい! 食わせろ!


「どうする? アドルフ」

「……構いません、けど。ちょっと仲間に断りだけ入れて来ます」

「だそうだ」


 いぇい、やりー!

 テンションが上がったオレをみて、アドルフが何か笑った。

 お前、人を笑うのは良いけど財布はお前持ちだって事忘れんなよ?


 

【作者後記】

立ち直るや否や、おごれと強請る。それがナカバのくおりてぃー。

どうも、衣食住なら一位は食と迷いなく答える尋です、今晩は。


ご来訪下さったそこの貴方、ありがとうございます。

拍手下さったそこの貴方、どうもです。

デュランだと思ったのに!と言うそこの貴方、……ニヤリ(ぁ)。その辺は次回で。


と言う事で、ヒーロー(?)はアドルフでした。

正解者の皆様、おめでとうございます。

正解賞品として、えーと……画面の向こうの尋の拍手をお贈りしましょう!

え? 要らない? そうですか……レア度は高めなんですけど(知らんわそんな事)。


まだまだ続きます。

次はデュランのターンです。宜しければまた土曜日にUP予定ですのでお待ち下さい。


作者拝

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ