表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された追放聖女は、もふもふ公爵に愛される【コミカライズ決定!】  作者: 新 星緒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/25

21・もふもふと幸せな午後

 心地よい日差しに、素敵なもふもふ。久しぶりにのんびりできる午後で、私とクリストフ様は寄り添って心地よくまどろんでいた。


 とても幸せなひとときだけど、本当はこれもマナー違反らしい。でもなぜか、『聖女はもふもふに癒されることにより、重圧からくるストレスを軽減している』というのが世間の共通認識になっているようだ。今では(主に陛下夫妻から)積極的に、クリストフ様と過ごすよう勧められている。


 婚約をする日にちも、決まっている。良き日を選んだ。問題は昼間にするか、月の出ている夜にするかということ。というか、気にしているのはクリストフ様だけだけど。私はどちらでも構わない。


 ――本当のことを言うと、フェンリルのクリストフ様のほうがいい。


「公爵閣下――!」


 突然大きな声がして、クリストフ様も私もビクリとして声のしたほうを見た。

 そこにいたのは、ランプを手にしたアシルだった。うしろに苦笑しているコンラートがいる。


 結局ルヴィエ家への罰は罰金だけになった。ただ、セヴィニェ公爵(つまりクリストフ様)の後見付きという条件でだ。普通ならありえないし、屈辱的と感じることだろうけど、アシルは喜んでいる。

 ちなみにイザベルはオーバンの死にかなり動揺していて、幽閉には義母がついていくことになった。義母は出発前に私に、アシルを頼むと何度も頭を下げていた。私は『任せてください』と約束をした。


 でも、アシルはそんなことはまったく気にしていない。妹と母の出発を見送ることもしなかった。

 そんな変人がクリストフ様になんの用なのだろう。

 立ち上がり、スカートの埃を払う。


「できましたよ!」

 と、義兄は誇らしげにランプを掲げた。

 そういえば、太陽の光を蓄積して遣う魔道具のランプを開発中だと聞いている。お父様の葬儀に出なかったのも、そのせいらしい。


「蓄光ランプが完成したのか?」とクリストフ様が尋ねる。

「そうですけど、そうじゃない」とアシルがなぞなぞのようなことを言う。「これはなんと、月光ランプなのです!」

「月の光?」

「公爵閣下は月の光で人の姿に戻るのでしょう? このひとに――」とアシルはコンラートを指さした。「作るよう頼まれたんですよ。じゃ、照らします」


 アシルがランプをクリストフ様に近づけて、上部を押した。カチリと音がして、水晶の色がわずかに変わる。

 とたんにクリストフ様のもふもふの輪郭がくずれ、人の姿になった。


「成功だ!!」とコンラートとアシルが叫ぶ。

 クリストフ様は驚いたように自分の両手をみつめていたけれど、やがて私を見た。


「エヴリーヌ! これで昼間に婚約式もデートもできるぞ!」

「そうですね……」

 思わずクリストフ様から身を引いてしまう。

「この姿は嫌か?」


 クリストフ様が悲しそうな顔になる。


「いえ、そんなことは」

「無理はしなくていい」

 そう言ってクリストフ様はランプのスイッチを切るよう、アシルに頼んだ。

 すぐにフェンリルの姿に戻る。


 アシルとコンラートはランプを円卓に置くと、肩を落として帰って行った。

 しょんぼりとしているクリストフ様のあごの下に顔をうずめる。

「本当に違うのです」

「いや、君が好きなのはもふもふの私だ。わかっている」

「もちろん、もふもふは大好きです! でも、そうではなくて。人の姿のクリストフ様だと、落ち着かないだけです。慣れていないからドキドキしてしまって」

「エヴリーヌ。もしかして、それは――」


 クリストフ様はそこで言葉を切って、黙ってしまった。


「『それは』なんでしょう?」

「まあ、今はいい」とクリストフ様。「とても幸せな気分だ。ゆっくり時間をかければいいようだからな」

「私はちっともわかりません」

 

 少しだけ悔しくて、きゅっと抱きつくと、

『わふん』と可愛い声が聞こえた。

「クリストフ様の『わふん』大好きです」

 すてきなもふもふに包まれて、お日様の匂いを胸いっぱいに吸って。

 この先ずっとクリストフ様と一緒にいられるなんて、とても幸せだと思う。

 早くひとの姿にも慣れなくてはね。




《おしまい》




◇あとがき◇

これで完結ですが、このあとクリストフはエヴリーヌに恋を自覚してもらうために、全力で口説きにかかるのだと思います。

でも慣れていないので、ポンコツ…(*´艸`*)


最後までお読みくださり、ありがとうございました!

よければ、下の評価を入れていただけると、とても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 遅れながら完結、おめでとうございます! 周りのバックアップのお陰でついに!!! というところで、エヴリーヌの反応がじれじれで可愛かったです(*^▽^*) そして『わふん』もまた……! …
[良い点] エヴリーヌのどこまでも無自覚な様子がとても可愛いです。無自覚だからこそ何でも言ってしまう…。 [一言] 完結おめでとうございます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ