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【コミカライズ 】婚約破棄された追放聖女は、もふもふ公爵に愛される  作者: 新 星緒(コミカライズ3作品連載中)


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18・魔獣とお祈り

「逃げますよ!」

 コンラートが振り返り、私の腕を掴んだ。

 大臣たちも扉めがけて走っている。


「オーバンを見て!」

 彼は驚愕の表情で床にへたりこんで、魔獣を見上げている。

 そこに魔獣が襲い掛かった。

 近衛兵が駆けつけ剣を叩き込む。魔獣の体から緑色の血のようなものが吹き出るけれど、たいしたダメージを受けていない。


「エヴリーヌ様、早く」

 コンラートが私を引っ張る。

 だけど、魔獣はどんどん増える。

 そして魔王様は、私には魔獣を弱体化させる力があったと言っていた。


 それならば私がすることは、ひとつだ。

 私が動かないからコンラートも護衛たちも、とどまっている。


「私が祈らなければならないと思います」

「逃げなければだめです!」

「少しだけでも、試させてください!」


 幸い部屋の隅にいる私たちは、まだ魔獣に気づかれていない。目の前に次々と現れる近衛騎士たちに気を取られているようだ。

 でも、のろのろしていたらコンラートたちにも危険が及ぶ。

 床にひざまずいて、首を垂れる。

 手を組み、いつもと同じ祈りを女神に捧げる。


 魔獣の咆哮、たまに混ざる人の悲鳴。

 コンラートと護衛たちが、魔獣から私を守るために囲んでいる。

 彼らに怪我をしてもらいたくない。


 必死に女神に呼びかけ、祈る。

 あなたの民たる私たちがこの地で生きられるように、私たちを蝕むものが無害なものとなりますように、と。

 やがて、いつものように全身が温かいなにかに包まれる感触がした。それが四方八方に伸びていく。


「魔獣が怯んでいるぞ!」

 そんな声が聞こえてきた。祈りがちゃんと効いているみたいだ。

 より願いをこめて、しっかり祈る。

 断末魔の叫び声。床が揺れ、窓ガラスが割れる音がする。


◇◇


 どれほど祈っていたのか。


「エヴリーヌ嬢!!」とクリストフ様が私を呼ぶ声がした。

 目を開くと、もふもふの彼が私の目の前にいた。

「お帰りになってくださったのですね!」

 思わず立ち上がり駆け寄り抱きつく。そのとき、

「最後の一体を倒したぞ!」という声がして、間を置かずに勝ち鬨(かちどき)が上がった。

 

「すごいな、人間よ。よくも短時間で全魔獣を倒したものだ」

 そう言ったのは、秘書官を従えた魔王様だった。

「聖女様の祈りのおかげだ!」と緑の血にまみれた騎士団長が叫ぶ。

「聖女様!」

「我らの救いの乙女!」

 嵐のように賞賛の声が上がった。


「個人的には逃げてほしかったが」とクリストフ様が囁く。「だが君の勇気が被害を最小限に抑えたんだ。ありがとう、エヴリーヌ嬢」

「そのとおりだ!」と陛下が騎士たちの間をぬって、姿を現した。「気高き聖女に心からの謝意と賞賛を。それに比べ、我が息子は」


 苦々し気な声を出した陛下の視線をたどると、床に横たわるオーバンらしき姿があった。彼だと判別できるのは、指にはまった指輪だけだ。全身血まみれで、特に顔は、形すらもわからないほど、ひどい状態だった。


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