表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近頃は物騒なので番犬を飼います(書籍版は「わたしの番犬は過保護です。」に改題:〈上〉〈下〉発売中)  作者: 五十鈴 りく
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/46

32◆Bradley

 どんどん、離れるのがつらくなる。

 それでも、ルーシャの運命の時は近づいている。


 ミリアムと会った翌日、ロトから連絡が入った。いつものように木にもたれながら話す。


『――リスター公爵の弟君はすでに亡くなっているんだが、公爵に甥御がいるのは知っているな? フェネリー子爵だ。公爵の後継者として最上位にいるのは彼だから、孫娘が出てきて一番面白くないのは彼だろう。子爵にも息子が一人、娘が二人いる。この辺りがどう動くか、こちらとしても気をつけているが』

「フェネリー子爵の娘って、確か社交界デビューしてからすごい持てはやされてなかったか?」


 ブラッドは社交界とは無縁だが、噂くらいは聞いたことがある。


『ああ、上の娘がな。大変な美人だそうだ。彼女の祖母も、子爵令嬢という決して高くない身分でリスター公爵の弟君を射止めたというから、血筋だな』

「娘を王太子殿下の妃にしようと、子爵が他の求婚者を片っ端から断ってるって聞いたけど?」


 この国の王太子は、御年二十五歳。今のところまだ妃は決めかねているらしい。

 騎士であるブラッドは何度もその尊顔を見た。顔だけならジャックと張り合えるのはこの王太子かもしれない。

 優美で品格があり、若い娘なら憧れる存在だ。将来国を背負って立つ身だからこそ、勤勉で責任感も強い。


『王太子妃は美貌だけで選ばれるわけではない。家柄も才覚も必要だ。……フェネリー子爵は、娘を王太子妃に押し上げるためにリスター公爵の養女にしたいという話を漏らしたことがあるらしい』

「それって、リスター公爵の孫娘なんてヤツが出てきたら、ほんとに邪魔で邪魔で仕方ないんじゃないのか?」

『そういうことだ』


 そこでふと、ブラッドは嫌なことを考えた。

 まさか、そんなことにはなるまいと思いたいことを。


「なあ、リスター公爵家の孫娘が王太子妃の最有力候補とか言わないよな?」

『…………』


 ロトが黙った。

 そこで黙るのだけはやめてほしい。ブラッドはなんの罪もない木を叩いた。


「冗談だろ?」


 早く冗談だと言ってくれたら笑えるのに。

 ロトは嘆息しただけだった。


『そういう流れもある』

「そういう流れって!」


 あんな庶民臭いルーシャが王太子妃とか、そんなものに向いているわけがない。

 ――いや、向いている、向いていないなんてことは関係ない。ブラッドがそんなのは嫌なだけだ。


『だから、彼女には手を出すなよ』

「っ……」


 今、ブラッドがどんな顔をしているのか、そんなことまでは伝わらないはずだ。それでも、ロトには見抜かれているような気がして癪だった。


『だが、もし……。すべて片がついた後でなら彼女次第だ。少なくとも、もうしばらくは何も言わずに耐えてくれ』


 それは、ルーシャが公爵家も王太子妃の座もすべて棒に振ってブラッドを選ぶという、途方もなく低い確率にかけろと、そういうことだ。

 ルーシャが自分の置かれた状況を知るまで、ブラッドに先走るなと言う。


「俺は、ルーシャのことを困らせたいわけじゃない」


 それは本当だ。

 ルーシャが望む幸せがそこにあるなら、それは仕方がないことだと思う。

 ただ、ミリアムの時よりもずっと、見守ることがブラッドにとっては苦痛を伴うだけだ。


「絶対護る。ルーシャが何を選ぶとしても」


 この時、ロトが呻くような声を漏らした。

 らしくない執着だと、そんなふうに思っただろうか。

 けれど今は、ただルーシャに笑っていてほしいと願っている。


『……お前には恨まれるな』


 そんなことをボソリと言った。

 ブラッドを派遣したのはロトだから、自分のせいだと思うのだろうか。


「恨んでない。むしろ、前のままの俺でいる方が嫌だ。ルーシャに会えてよかったと思ってる」


 望む結末が手に入らないとしても。


 そうか、と言ってロトはしばらく黙った。

 とにかく、レーンたちと協力してルーシャを護る。今はそれだけだ。


 すべて終わった時、おのずと答えは出るのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ