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皇子達に福音の鐘を鳴らせ!  作者: はつい
第Ⅰ楽章:皇子は再び旅立つ。
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第11曲:ドナドナ

「しっかし、なんであんなメに会うんだ?」


「・・・オレも大概鈍感だという自覚症状があったけれども、イクミも大概だね。」


「なんだよ、ソレ。」


 痛む腹を押さえて、あれから小屋を出ると、俺達は再びあのレンガの外壁の前にいた。


「樹脂かなにかで隙間を埋めて固めてあるな。」


 壁を撫でながら、その構造を確認するアルム。

まぁ、俺的にはブチ破れそうな壁だなぁとしか・・・。


「この大きさだと、アレかなぁ、地面にも相当深く?」


「多分。」


 やっぱりブチ破る方向性かなぁ、コリャ。


「ヤレヤレだぜ。で~、アレが例の大門ってヤツか?」


 金属製の大きな門。

材質は鉄か?

赤っぽいのは錆び?純度が低いのか、鋳造技術が低いのか。


「これも相当厚いな。もしかしたら、通路みたいなのが繋がっているのかも知れない。」


 今度もぺたぺたと門に触るアルムにならって、俺も門に触れる。


「いけそう?」


「んぁ?多分・・・イケる。」


 視界内に収まるのならば、ほぼ確実に処理出来る。


「これで、抜ける事に関しては問題ない、と。あとは・・・。」


「どんだけ時間が稼げるかだよな?」


 二人だけで逃げる以外の場合、移動速度が遅い分、如何に時間を稼いで距離も稼ぐかだ。


「相手の足を潰すという手段もあるけれど・・・。」


「無理に近いですね、はい。」


 そこまでするとなると、相手の本拠地に乗り込むくらいの事をしなければならないもんなー。


「ぎゃふんと言わせたくはあんだよな、ぶっちゃけ。」


 そりゃあさ、牛や豚、もしくは作物みたいにと考えれば、この世界と違う倫理観を持ち込んで適用している俺達の方がおかしかったり、非常識なのかも知んない。

でもさ、食べる為とか生きる為のソレと、コレは違うと思うんよ?

なにより、悪戯に傷つけられる命というのは、気に食わん。

これから先、意外とこの倫理観が災いして死ぬかもなぁ・・・。

でもまぁ、頑張れお兄ちゃんだよな。


「聞いてるか?」


「ん?全然。」


「あのねぇ・・・。この壁の外周がどれ程なのかまわってみたい。時間が許す範囲で。」


「構わねぇよ?その間にいい案が浮かぶかも知れないし・・・アルムに。」


「オレかよ!」


 どう考えてもアルムの方が能力が上なんだもんよ。


「とりあえず、今、外に出るまでは確定で可能なワケだ?」


「そうだね。」


「逃亡経路と逃亡先も考えないとなぁ。俺達、この箱庭世界しか知らんし。」


「彼女達に任せるしかないね。オレは一瞬だけ全員で次元を渡るのも考えたけれどね・・・。」


「一瞬で正解。」


 そんな無茶が通るなら、俺が先に提案してる。

・・・子供は発狂する可能性だってあるかも。

外周を歩きながら、あーでもない、こーでもないと言い合いながら結構な距離を歩いても、いい案は出てこない。

干からびるには早いと思わないか?俺の脳ミソちゃんよ・・・。


「ん?この鳴き声・・・。」


「鳴き声?」


 アルムに聞こえて、俺には聞こえない。

幻聴?

なワケねぇか。


「牛・・・か?」


 そう言うアルムの言葉に、俺はかなぁ~り興味が出ました。


「アルム、行くぞ。案内ヨロシク。」


 アルムに案内を頼んで歩くと、確かに牛らしき生き物の鳴き声。


「あら?」


「ん?」


 放牧された牛らしき生き物と・・・。


「ドルちゃん?」


 眼鏡があったら、満点少女のドルちゃんが牛の世話(?)をしていた。


「えーと、コレ、牛?」


「え、あ、はい。ほ、他にも豚とか、あの、います。」


 ぎ、ぎこちない・・・そのうえ、キマズイ。

何故?


「じぃー。」


 あぁっ、アルムからの冷たい視線?!

しかも、声にまで出てるよ!


「って、豚?あー、本当だピンクの豚ちゃん。」


 ・・・が、牛並みに大きい。

いや、牛が俺の知っている牛より遥かに小さいんだ。


「デカいな・・・。」


 アルムも同じ感想らしい。


「これなら、食料問題解決するかもな。」


 そっちかぃっ!


「ところで、ドルちゃんや、そのさっきはゴメンね。」


 とりあえず、こういう事に関して謝っておけばいいという男の選択肢って、本当に浅はかだよな。


「いえ、まさか、多種族の方に、きゅ、求婚されるとか、その驚いた・・・ので・・・。」


 きゅっ・・・。


「球根?花が咲く・・・。」


「それじゃなくて、婚姻の方の求婚だな。どうやらこの地のエルフの文化だと、種族の特徴である耳に異性が触れるというのは、特別な行為らしいね。」


 冷静な解説ありがとうよ、アルム。

親切過ぎて泣けてくらぁっ。


「間抜け。」


「トドメ刺しにくるなよ。」


 いや、確かにドルちゃんは美人さんだぞ。


「どうするのかな?」


 むむっ・・・。


「無事に出られてから考える。」


 ・・・そんな微妙な顔して俺を見んなや、全く。

しかし、こんな事になるなんて・・・。

俺は冷たい視線と熱い視線の狭間で泣きそうになりながら、豚を眺める。

やっぱりデカいな・・・。

うん、デカい。


「・・・ドルちゃん?この中にいる豚とか牛って、それぞれ何頭ずつくらいいんの?」


 俺の質問に対し、返ってくるドルちゃんの答えが期待通りのモノである事を祈った。

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