第10曲:誘惑
「誰だ?!」 「きゃっ。」
うとうとして、完全に落ちる直前に、誰かが額を触れる感触がして、思わず掴んでしまった。
「あ・・・えーと・・・。」
エルフが一人。
ご多分に漏れず、金髪・緑眼で・・・何故か、その髪は三つ編み二本に束ねられている。
「・・・眼鏡があったら、更にプラス30点。」
何を言ってんだ、俺。
つか、眼鏡の点数配分高ェな、オイ。
「あ、あのっ、汗をかいていたから・・・その、拭こうと思って・・・。」
・・・俺、悪者?
何もそんなビクビクせんでも。
「あ、それはどうも。えぇと・・・・・・君、誰?」
失礼だな、今の俺。
「先程・・・リルを治療して頂いた時に・・・。」
治療?リル?
「あー、もしかして、怪我したコを担いで来た?」
「は、はい・・・。」
意外と地味子さんだったのね。
「ど、ドルテと申します。」
「ふむふむ。"ドルちゃん"ね。あ、そーだ、ドルちゃん、コレ、そのリルってコに夜飲ませてっと。あ、食後ね。」
俺はバッグの中にあった薬を彼女に渡す。
「気休めくらいにしかならないかも知んないけど。」
「全然です!こんな高価そうな薬まで頂いて!」
やっぱり身体構造の差だろうか?
いや、科学薬品なんて無いし、使わないから、そういう意味で効き目が強いのかも。
「気にしない、気にしない。」
気を遣われてもアレだし。
今ではもう手に入らないけれど、元々、俺の世界ではそこまで高価じゃないし。
「あ、ドルちゃん?」
「はい!」
うん、元気なコトは良き事ですね、はい。
「ちょーっち質問。この集落ってどれくらい人数がいるの?」
「えぇと・・・。」
大きな目をくりくりさせている考えている様は可愛いな。
「40人いるか、いないか・・・です。」
意外に少数。
逃げるならば、人数は少ないに越したコトはない。
「皆、女性?」
「子供を除けば・・・。」
戦力はアテにならんか。
どのみち、俺には集団戦、しかも更に難易度が高い(と思う)撤退戦の指揮は出来ない。
平和ボケしたジャパニーズですから。
「・・・ん?んじゃあさ、人間達は何処から入ってくるの?」
閉じ込められるてるたって、出入り口くらいはあるだろう?
まさか、空から落ちてくるとか、梯子で20m近く降りて来るとか・・・ないよな?
「・・・大門が一つだけあって・・・その先の城から・・・。」
「あ゛。」
目の前の彼女の身体が微かに震えているのに気づくのが遅かった。
「ごめん、もう聞かないから。」
彼女達にとっては、人間は恐怖の対象なんだった。
俺は慌てて身体を起こすと、彼女を抱きしめる。
「ごめんね。」 「い、いえ・・・。」
恥ズイ。
ハズイよ、俺。
こんな光景、弟に見られたら、死にたくなりますよ、お兄ちゃんは。
「大丈夫。あんなヤツ等、いつか天罰が下るよ。」
恐らく、人為的にな。
出来る事なら、もう死んだ方がマシと思えるような方法がいい。
俺が16年間、持っていた既存の倫理観の大半は、この世界じゃ適用されないっぽいしな。
「あの、もう大丈夫です・・・から。」
「あ、そう。」
いや、マジで恥ずかしかった。
本当、リア充死ね。
しかしだ、相手は百人規模。
でもって、進入経路は一箇所のみ。
流石に壁越えはないと。
メモメモ。
人間に関しての詳細は、イリアさん・・・あー、エルザさんにしか聞かない方がいいみたいだな、コリャ。
「えぇと・・・ドルちゃん?」
実は、先程からずぅ~っと気になっている事が、自分にはあるのでアリマス。
「はい。」
じーっと彼女、いや、エルフ達を見てて、思ってたんだが・・・もう我慢出来ん!
「その、耳。触ってもいい?」 「えぇ?!」
トンガッテルノデスヨ。
「ドルちゃんの耳、どーしても触りたいんだ!」
だって、イリアさんとかにこんな事言ったら、殺されそうだもん俺。
「私、なんかのですか?」
「うん。」
「どうしても?」
「どーしても。」
ほんのり赤くなるドルちゃん。
まぁ、なんつーか、この人達にしたら、ただの耳フェチを暴露しているような発言だもんな、そりゃ恥ずかしいか。
でも、その尖がっているお耳が気になるのです。
気にならないでか!
「君の耳を触りたい。」
「・・・私なんかで・・・宜しければ・・・。」
やった♪
「じゃ・・・。」
彼女の耳を触る。
人間の耳みたく、少しひんやり。
そして、とんがりの先端部へ・・・。
「うぅん、ひんやりする・・・。」
ここも人間の耳たぶと同じ。
「んぁっ。」
とんがりをすりすりと撫でると、吐息に艶っぽい声が・・・。
「ただいま。」
「おかえりー。」
「えっ?!」
思わずに反射的に返事をしたが、声の主はアルムだ。
そしてその隣にイリアさん。
「・・・オマエ、何をしている?」
「え?」
「あ・・・イリア、そ、その・・・彼が・・・私がいいって・・・耳を触ってくれて・・・。」
「へ?」
あの、どういう展開?
「人が外出している隙に、キサマは何をしているんだッ!」
「ぐぼぉっ。」
手近にあった置き物(?)が、俺の腹部めがけて・・・。
「あっ、イリア!」
人に物を投げるだけ投げて、憤然とイリアさんは家から出て行った。
ドルちゃんは慌てて、その後を追って出て行く。
「おぶぇっ・・・一体、なんだってんだ?!」
意味がわからず、俺はアルムを見ると、アルムは冷たい視線を俺に送っていた。
「え?なに?」
「・・・・・・ばぁーか。」
ビデェ。
「だから、なんなんだってば?!」
「・・・あーほ。」
マジ、ヒデェ。
泣いていですか?泣いていいですよね?
というか、誰か説明してプリーズ!
プリーズ ギブ ミー!ヘルプ ミー!!




