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皇子達に福音の鐘を鳴らせ!  作者: はつい
第Ⅰ楽章:皇子は再び旅立つ。
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第9曲:自由への招待(アルム視点)

 ひとしきり鬱になったら、スッキリした。

壁を壊すなり、潜るなり、脱出の方法の手段としてはいくらでもある。

でも、今オレを案内している彼女がどうするかを聞かなければ。

あぁ、自前の剣があれば・・・。

きっとあんな壁、イクミの身体に負担をかけずに斬り裂いてやれるのに。

少々、オレは現在足手まといだ。

もし、戦闘にでもなったら、多少なりとも挽回出来るといいのだけれど。


「エルザ!彼が話しがあるそうだ!」


 決意も新たにしていると、どうやらエルザさんの所へ着いたらしい。

なんだおる、やっぱりエルフやエルザみたいな人を見ていると、思い出して癒される。

国に置いて来た人達を。


「あら、なにかしら?先程は助けて頂いて・・・。」


「あれはイクミの判断です。それに当然の事だと思っています。」


 怪我をしたエルフの少女も、オレが置いてきた人を思い出させる。

この思い出させるというのが問題だ。

自分で回想するのとは違って、半ば強制的に連想させるのだから。


「そうですか・・・。」


「さて、オレはイクミがああいう性格だから、慎重に行動しなければならないと思っているのですが。」 


 関わってしまったからには、ね。


「今回は簡潔に。オレ達はイクミの体調が完全に回復次第、ここを出ます。」


 出ようと思っているではなく、出ます、だ。


「ここを・・・出る?」


 エルザさんは、イリアさんと同じような反応を返す。

それだけ、大変な事というか、彼女達にとっては考えもつかない事なのだろう。


「ついては、幾つかの選択肢を提示させていただきたいと思います。」


 何か偉そうだな。

滅多にこんな口はきかないけれど、どうしても交渉ごととかは口調が変わる。


「オレ達と逃げる気はありませんか?」


 この集落に何人のエルフがいるかは知らないが、大人数で逃亡劇というのはかなりの危険を負う事になる。


「オマエ、まだ!」


「イリア、落ち着いて。どういった方法であの壁を越えるのかは知りませんが、もし断ると言ったら?」


 ・・・冷静に考えてそうだよな、そっちの方が安全だ。


「オレ達の逃亡の痕跡が残っては、後々問題になりますからね。それならば仕方ないです。ドルラス伯爵でしたっけ?そちらの方へ特攻、という流れにしますかね。」


 これは賭けだ。

結局、生命の尊厳もなく、支配される側の彼女達が変えようとする意志がなければ、事態は根本的なところで変わらない。

オレには経験上、それが解る。

だから、第三の選択肢、オレ達がこのまま次元を渡って、"無かった事にする"という事は、敢えて言わない。

それに、オレの・・・オレ達の怒りがそれでは治まらない。


「・・・あなた方が私達と一緒に逃げたとして、一体何の利益が?」


 利益?

利益ねぇ・・・。

本当はそういうのを考えるべきなんだろうね。


「イクミがイリアさんを気に入っているみたいだから、恋人か嫁になってもらうとか?」


「なっ?!」


 おぉ、今までに無い反応だ。

いや、すまん、イクミ。


「利益はオレ達が満足できる、かな。こんなの所詮、自己満足でしょう?ついでにイリアさんや他のエルフの方々の笑顔が見られれば、尚良し。何より・・・。」


「なにより?」


「腹が立って仕方がナイ。」


 イクミの世界で視たアレだ。

昔の王・・・えぇと、"ショーグン"というヤツが、城下に出て『成敗!』とかいう、あの気分。

いやはや、アレは王の鏡だね。

あと、"なんとかエチゼン"とかいう輩も、中々のキレ者だ。

ここは"元皇子"のオレもやってやらないとね。


「それに、オレ自身が納得いかない。」


「・・・少し・・・考えさせてもらってもいかしら?」


「勿論。どの道、イクミが復活しないとどうにもならないし、何より先程怪我した子の具合いが良くならないと。」


 オレはとりあえず、交渉のようなモノはここで打ち切る事にした。

アルムさんや、なんとかエチゼンのエチゼンは名前じゃねぇよ・・・

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