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第1話 見えていないものが見えているのではないか

AI時代の創作論。これは後書きであり、次の企画書でもある。


『描線眼鏡』は、想像力で眼鏡を通して見えないものを見つめ、創造力でペンによって世界に線を刻む物語です。

この編集後記では、完結した物語の裏側で、どのように設定が生まれ、キャラクターが動き、現実の災害や科学史、漫画史、そしてAI時代の創作論と結びついていったのかを振り返っていきます。

 描線眼鏡の発想に至る以前から、漫画家や作家、作曲家などあらゆるクリエイティブな活動をしている人には、「余人には見えていないものが見えているのでは無いか?」という問いがありました。

 ルネサンスの巨匠ミケランジェロの哲学として、「彫刻とは、大理石の中に既に眠る像を解放する作業である」という言葉が伝わっています。これは見えない本質を捉える想像力と、現実に刻む創造力を端的に表現する、優れた創作哲学のあり方だと感じています。


 描線眼鏡の物語を描き始めたきっかけは、こういった高尚な哲学とはかなり距離のある、俗っぽい生活と妄想から産まれたものでもあります。

 一時期、ネットを通じて知り合った相手とちょっとしたエッセイやコラムを交換していた時期に、文才を誉められ、「小説など書かれてみたら如何ですか?」などと煽てられ、調子に乗って何かしら小説の題材を探してみようと思うに至りました。


 そんな中、2024年1月初旬のある晩、妙な夢を見ました。


「あるアイドルタレントと一緒にモンスターハントに出る」という、いったい何の願望なのか、妄想なのか、深層心理なのか、自分でも判断に困る夢です。

 年がいもなくそんな夢を見てしまったことに、少し自分の精神状態を疑いました。

 しかし同時に、こうも考えました。


「では、この夢が現実化するとしたら、どんな条件が必要なのだろうか」


「モンスターが出てくるのはゲーム内世界でしかあり得ないし、そのリアリティからVR世界であろう」


「いや現実のアイドルと一緒なんだから、ARゲーム世界だったんだろう」


「ARなら当然にスマートグラス越しに世界を見ているんだろう」


 こういった連想と、「余人には見えていないものが見えているのでは無いか?」という以前から抱いていた問いが合体し、物語の題材になるのではと考えました。


 次の段階で、スマートグラス=眼鏡と創作の連想から、自分の世代では自然と漫画家・手塚治虫を発想し、次に手塚師と同時代人で、当時米国や世界で公開され様々な話題を呼びながら日本での公開は遅れていた米国映画「オッペンハイマー」から科学者オッペンハイマーとの連携を連想し、と次々続々自分の中で物語が広がって行きました。


 物語の起点は戦中戦後に置いても、その展開は現代社会に置きたいと考え、年始に発生した能登半島地震と、その救援に赴いた海保機と日航機の羽田衝突事故、地震で焼失してしまった永井豪師の記念館、地震で鏡を支える精密な防振系に傷を負った重力波望遠鏡KAGRA、様々な要素が自分の中で有機的に結びついて行きました。


 そして描き始めた物語を「小説家になろう」に初投稿したのが、2024/3/11。能登半島地震とオッペンハイマーに始まる核時代の揺らぎを描いた物語は、東日本大震災と福島第一原発事故を想起させる日に発表したいとの思いがありました。


 現状版でも少し形を変えつつも、第1話「序章」第2話「羽田」第3話「儀式」として描かれているエピソードはこの時描いたものです。

 しかしながら壮大な構想・妄想に対して、自分の整理や考察、文章自体を書き進むにあたっての行き詰まり、おりしもきっかけとなった相手との別れなどを通じ、以後1年強物語を放置するに至りました。


 では、なぜ放置していた物語をもう一度書き始めたのか。

 そして、なぜそれが『描線眼鏡』という形になったのか。

 この編集後記では、AI時代の創作論と重ねて、その過程を少しずつ振り返っていきたいと思います。


『描線眼鏡』本編は第1部、第2部、第3部を経て、ひとまず物語として完結しました。


ただ、作品としてはまだ整理したいこと、振り返りたいこと、そして今後へ繋げたいことが多く残っています。


眼鏡とは何だったのか。

ペンとは何だったのか。

魔とは何だったのか。

なぜ漫画家が戦い、なぜ創作と災害と科学史が結びついていったのか。

そして、AI時代において、創作とはどのように変わっていくのか。


この編集後記では、そうした本編の裏側にある発想や制作過程を、資料集ほど硬くならない形で振り返っていく予定です。


読者向けの後書きであり、創作者向けの制作ノートでもあり、今後の漫画化、PV、Web体験、VR/AR、共創企画などへの展望を整理する場にもしていきたいと考えています。


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