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完璧令嬢の辺境開拓記〜私を捨てた王太子が国を傾けている間、私は辺境を世界一豊かな地にし、私は運命の人と世界一幸せになります〜  作者: 虹の箸


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完璧な公爵令嬢は、愚かな王太子の手で自由(辺境)へと追放される

新作を初めてみました。ザマァとスローライフを自分の未熟な筆力でどこまで書けるのか?がんばります。

王立魔法学園の卒業を祝う記念パーティー。

数多の魔法石で彩られたシャンデリアが眩い光を落とし、優雅なワルツの調べが流れる大広間は、国の未来を担う若き貴族たちの熱気と華やかな香水に包まれていた。

いよいよパーティーの出席者の中で最も位が高く、生徒総代の王太子ユリウスの挨拶と、パーティー開始の宣言(よていちょうわ)を皆が待っていた。

しかし、


「セレスティア・グランチェスター! 私は今この瞬間をもって、お前との婚約を破棄する!」

突如として響き渡った王太子ユリウスの甲高い声が、その予定調和を断ち切った。

音楽が不自然な音を立てて止まり、広間にいた何百という視線が一斉に中央へと集まる。

そこには、王太子ユリウスと、彼の腕にぴたりとすがりつく小柄な少女——先月『聖女の力』が発現したばかりの男爵令嬢、リリィの姿があった。

「……殿下。それは、いかなる理由でしょうか?」

指を差された公爵令嬢セレスティアは、一切の動揺を見せることなく、扇を閉じて静かに問い返した。

夜空を思わせる艶やかな漆黒の髪に、宝石のように冷たく澄んだアメジストの瞳。誰もが息を呑むほどの比類なき美貌を持つ彼女は、背筋をピンと伸ばし、ただ静かに婚約者を見据えていた。

「とぼけるな! お前は私の愛するリリィに嫉妬し、陰湿な嫌がらせを繰り返した! 階段から突き落とそうとしたり、教科書を切り裂いたりしたそうだな!」

「ユリウス様ぁ……私、とっても怖かったんですぅ……」

リリィが不安げな上目遣いでユリウスを見上げ、その胸に顔を埋める。

美しいというよりも、小動物のように庇護欲をそそる可愛らしいルックスの彼女は、甘え上手という言葉が服を着て歩いているような存在だった。

「おお、可哀想に。もう案ずることはないぞ、私のリリィ。……お前のような冷酷で、可愛げのない女は私の妃には相応しくない! 常に氷のようにすまし顔で、少しはリリィの愛らしさを見習ったらどうだ!」

勝ち誇ったように言い放つユリウスを見て、セレスティアは内心で深く、深くため息をついた。

(嫌がらせ? 階段から突き落とす?……私が、いつそんな暇を持て余していたというのですか)

セレスティアがすまし顔でいるのには理由があった。単純に、疲労困憊して笑顔を作る筋肉すら動かしたくなかったからだ。

次期王妃として、幼い頃から血を吐くような政治の研鑽を積んできた彼女の日常は、過酷そのものだった。

学園の勉学はもちろんのこと、遊び呆けて「リリィとの真の愛」とやらにかまけている王太子の執務を、彼女は裏ですべて完璧に代行していたのだ。

山積みの国政書類の決済、各派閥の貴族たちへの細やかな根回し、国家予算の計算……。睡眠時間を削り、目の下にできかけたクマを化粧で隠してまで、この国を支えてきたというのに。

「弁明もないとは、罪を認めたということだな。よろしい、ならば王太子としての権限で命じる!」

ユリウスの言葉に、周囲の貴族たちが息を呑んだ。

「罪深き公爵令嬢セレスティアよ。お前のような冷血な女には、我が国の最果てがお似合いだ。帝国と国境を接し、魔の森や危険なダンジョンを抱える北の地……『鮮血の辺境伯』レオンハルトへ嫁ぐよう命じる!」

広間にどよめきが走った。

北の辺境。常に帝国の侵略の脅威に晒され、魔物があふれる過酷な土地だ。おまけに辺境伯レオンハルトは、戦場では鬼神のように恐れられる無口で冷酷な男だと噂されている。

これは実質的な死刑宣告に近い、過酷な追放劇だった。

「レオンハルトは先の帝国との一戦で武勲を上げている。褒美としてちょうどよかろう、金も領土もかからないしな!」

ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべるユリウス。彼は、プライドの高いセレスティアが泣き崩れ、許しを乞う姿を見たかったのだろう。

しかし。

「……承知いたしました。殿下の御心のままに」

セレスティアは、ドレスの裾を優雅につまみ、芸術品のように完璧なカーテシー(淑女の礼)を披露した。

一切の乱れがないその動作に、ユリウスは拍子抜けしたように目を丸くする。

「なっ……! お、お前、自分が何を言われたか分かっているのか! あの恐ろしい辺境領の辺境伯に嫁ぐのだぞ!」

「はい。殿下の寛大なる御裁定に、心より感謝申し上げます。では、私は辺境へ向かう準備がございますので、これにて失礼いたします。殿下も、どうかお健やかに」

言うべきことだけを口にし、セレスティアは踵を返した。

ざわめく貴族たちの間を、一輪の花が通り過ぎていく。誰も彼女に声をかけることはできなかった。

大広間の重厚な扉を出て、冷たい夜風に当たった瞬間。

セレスティアは、きつく結んでいた唇をふっと緩めた。

(ああ……終わった。ようやく、終わったわ!)

絶望など微塵もない。彼女の胸を満たしていたのは、圧倒的な解放感だった。

(徹夜の書類仕事も、我が儘な貴族の相手も、あの愚かな王太子の尻拭いも、もうしなくていいのね! 辺境がなんだというのでしょう。魔物だろうが鬼神だろうが、過労死寸前のあの執務室に戻るより百万倍マシですわ!)

これから向かうのは、厳しい寒さと魔物の蔓延る辺境の地。

しかし、有能すぎる公爵令嬢にとって、それは地獄ではなく、重圧から解き放たれた「自由な楽園」への切符に他ならなかった。

一方、王都は彼女(おうとのフィクサー)という巨大な支柱を失った。

今後このことがどのように影響していくのか…


そんな事はもう関係ない。しがらみから完全に断ち切られた、セレスティアの足取りは、羽が生えたように軽やかだった。

なんとか1話目を書きあげる事ができました。お読みいただきありがとうございました。

そして、もし「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ページ下部にある【ブックマークに追加】や、【☆☆☆☆☆】の評価を押して応援していただけると、今後の執筆の何よりの励みになります!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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