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部屋の外で耳をそばだてるステラとチロル。ミアたちに聞こえないように、ひそひそ声でリュカの発言について探り始める。
「あいつさっきなんて言った?」
「チロルの聞き間違いでなければ、一生かけて守ると誓った人だと」
「私もそう聞こえた。リュカは元騎士団副団長だし、一度立てた誓いを破るような人間じゃない。だが現にリュカは私たちと旅をしているじゃないか。守るべき愛しの相手はどうした」
「そんな大切な人がいるのに、ミアちゃんとイチャイチャするなんて許せませんよ。騎士の風上にも置けない。不埒です不埒!」
「さてリュカ。どう言い訳するんだ?場合によっちゃ私もミア側について君を責めたてるぞ」
部屋からは物音一つ聞こえてこない。あの二人は今、どんな顔で向かい合っているのだろう。
長い沈黙を先に破ったのはリュカだった。
「申し訳ありません、ミア様。彼女のことについて先に話しておくべきでした」
「ほんとにそう思ってます?呪いで夢を見たせいでバレちゃっただけで、そうじゃなきゃずっと黙ってたつもりでは?」
「う…」
リュカが苦し気に口を噤んだ。
「リュカお姉さま、そこで黙ったらダメでしょ」
「言い訳の余地もないと認めたようなもんだよな」
「ミアちゃんの舌戦は凄まじいですよ。リュカお姉さまが勝てるわけありません」
「一応助太刀の準備だけはしておけ。ミアが宿ごと壊すかもしれん」
いたたまれない空気を再度リュカが破った。
「お話しないほうが、ミア様にとってもいいかと思いまして」
「どうしてですか。私たちは恋人どうしなんですし、隠し事はなしと決めましたよね。そのクローディアという方はリュカ様にとって特別な存在。仮にですよ。仮にその方とプラトニックな関係だったとしても、やっぱり隠されるのは嫌なんです」
「すみません…」
「聞きたいのは謝罪ではなく説明です」
チロルが頭を抱えた。
「ダメですあの人は。さっきから不正解ばかり選んでますよ。浮気かなんか知りませんが、ミアちゃんのためを思って隠してたなんて保身のための言い訳にしか聞こえませんって。ほんとリュカお姉さまって顔とスタイルと引き換えに、なにか大事なものを失ってますよね」
「そこまで言わなくても…と擁護してやりたいが、ちょっと無理かな」
「ステラお姉さまがミアちゃんの立場だったらどうしてます?」
「殴り倒してるよ」
殴りこそしないが、扉の向こうでミアが怒りに震えているのが気配で伝わってくる。
「クローディアとは、その、あくまで騎士としてお守りするという誓いを立てただけでして」
「では先ほど夢の中でクローディアさんを抱き寄せ、甘いささやきを漏らしていたことへの説明を」
リュカがまた黙った。
チロルが扉に背中をつけたままジタバタ暴れだす。
「ああもう、聞いちゃいられませんよ。いっそのこと浮気してましたって言えばいいのに」
「まだ浮気と確定したわけじゃないだろ。まあ特別な関係の相手であることに間違いはなさそうだが」
「やましい事がないなら堂々と弁明すればいいのに」
「こりゃリュカの精神が持たんぞ…」
リュカが逃げ出そうとしているのか、ベッドに縛り付けられた手足を動かすギイギイという音が聞こえてきた。




