表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/54

45_本来の目的

あの蜘蛛女の名前はポーラと言うらしい。

……いや、今更どうでも良いのかもだけど、ボクが駆け付けた時には、皆がそれを知ってたのがちょっと驚きだった。


リジュネア様を見付け出したボクらは、ポーラの屋敷で警備兵が集まるのを待った。

そして、事情を説明して庭に転がったゴロツキ達を引き取ってもらった。

彼らはランザー子爵の指示で別件の犯罪に関わっている可能性があるため、厳しく取り調べてもらいたい。


そして、忘れちゃいけないリジュネア様の件だ。

彼女の扱いには細心の注意を払うよう、警備兵さんに口酸っぱく言い添えた。

何せ彼女をぞんざいに扱ったなら、最悪、国際問題に発展する可能性だってあるのだから。

当然、ボクらは彼女がどんなヒトか説明したし、真偽が疑わしいならイズークェリシャさんに確認を取るように訴えた。


流石に現宰相の娘で近衛師団副団長でもあるイズークェリシャさんのお名前は無視出来なかったようだ。

彼女のお名前を出した途端、こちらの話をより真剣に聞いてくれるようになった。

その後、ボクらはリジュネア様と共に帝城入口に併設された軍の建物へと移動し、朝まで状況説明を行った。

ここでもイズークェリシャさんのお名前が効いたのか、とても丁寧に対応してもらう事が出来た。


その後、朝が来てイズークェリシャさんが出勤し、事実確認が取れてからは下にも置けない扱いにランクアップされてしまった。

ここで、イズークェリシャさんの計らいで、ボクらは豪華な応接室に案内されて、やっと仮眠を取ることを許された。

当然、リジュネア様はボクらとは別に、帝城内でムーエット様が用意した一室へと案内されたようだ。

この時、アンゼリカさんとカレンさんもリジュネア様に付いて行ったため、ボクらは七人で仮眠を取ることになった。

……うん、今更この七人でまとまって寝るくらい、何も問題は感じないしね。


**********


コンコンッ


「……起きているか?」

イズークェリシャさんの声でボクは目を覚ました。


「……いえ、今起きました。」

「それはすまない。

……食事の用意をしてあるのだが、食べるかい?」

「いただきましょう。」

帝宮での料理とか、興味ある!

でもまぁ、ボクら冒険者風情に振る舞われるのは、使用人用の食事とかだろうけれど。


チラッ


外を見るとまだ明るい。

昼を過ぎたあたりだろうか?

ボクらは、まだ寝ていた者を起こして、イズークェリシャさんに付いて行った。


「あら、お目覚めのようね。

ありがとう、私からもお礼を言わせてもらうわ。」

通されたのは応接間のような部屋であったが、そこにはムーエット様もいらっしゃった。

流石にリジュネア様達は居ない、きっとまだ寝ているのだろう。


……そうだ!


「あの、ムーエット様、昨日は手土産も無しで失礼いたしました。

これ、他国の遊技盤なのですが、ご興味がおありでしたら。」

ボクは、『アイテムボックス』からカダーで仕入れたリバーシとルドーの遊技盤を取り出し、ムーエット様に差し出した。


「……今、どこから出したの?

……まぁ、良いわ。

貴方達の事は信用しているから、私は煩く言う気は無いけれど、此処では魔術の使用は控えてね?

あと、遊技盤についてはありがとう!

こういうの大好きよ。」

そう言ってムーエット様はウフフと笑う。

……本当に、仕草は完璧なんだよなぁ。


しかし、『アイテムボックス』を開いたのは、確かに軽率だった、反省。

仮に帝城内に手ぶらで入った犯罪者が、『収納』で武器を取り出したりしたら危険だ。

それを防ぐために、帝城内での魔術の使用を禁止するのは理に適っていると思う。


ちなみに遊技盤について、ムーエット様にはいつもの如く、「量産する際は孤児院を利用して欲しい」旨をお伝えしておいた。

ムーエット様も快諾して下さったので、ボクとしてはこれで満足。


その後、ボクらは暫く食事をしながら歓談した。

皆が食事を終えた頃、イズークェリシャさんが話を切り出してきた。


「──さて、君らへの冒険者としての報酬なのだけれど、アンゼリカに代わってムーエット様から支払われる事になった。」

「えっ?!」

報酬に関して、ボクらはあくまでアンゼリカさんに頼まれて動いていたので、王族であるムーエット様が肩代わりする事に驚いてしまった。


「……まぁ、一歩間違えばシエルエスタとの国家間問題に発展してもおかしくなかった話だからな。

国から正当な報酬があって然るべきだ。」

「そうそう、望みの額を言ってちょうだい。

妹の様に可愛がっているリジュネアの恩人だもの、私が出せるだけのお礼はさせてもらうわ。」

イズークェリシャさんとムーエット様が口々に語る言葉に、ボクは少し悩んだ。

……そう言えば具体的な額は決めていなかったんだよね。

皆の視線がボクに向くのを感じる。


ふむ……。


「では、希望額は──」

ボクは元々アンゼリカさんに要求しようと思っていた額に、ちょっと色を付けた額を答えた。


「──あらら、そんな謙虚で良いの?

私の方は、その十倍でも全然余裕よ?」

「はい、お金にはそこまで困ってないので。

その代わり、ムーエット様に折り入ってお願いしたい事があります。」

うん、お金でもらうよりも、もっと他に王族の権威をお借りしたい事があるんだよね。


「あら、そういうことね。

分かったわ、言ってちょうだい。」

「魔王教の教主さんとお話させていただきたいのですが、ムーエット様の権限でお呼びいただく事は出来ませんか?」

ボクらがわざわざ帝都までやって来た、そもそもの目的は「魔王教」との対決だ。

ムーエット第三皇子から教主を呼び出してもらえば、あちらも拒否は出来ないだろう。


「魔王教?!

……何か訳アリな感じかしら?」

「はい、ボクの仲間の平穏の為に、無視できない因縁があるんです。

もちろん、手荒な真似は一切しません。

話し合いがしたいだけです。」

うん、話し合いで済むならそれで良い。

……すんなり話が済むなら、だけどね。


「……分かったわ。

ただ、それなら私も同席した方が良さそうね。

聞いた感じ、調停役が必要になりそうだし。」

「いえ、そこまでお時間を取らせるのは心苦しいのですが……。」

「良いのよ、時間なら持て余しているくらいなのだから。

何より、私の名前で呼び出すのなら、私が居なくちゃあ、おかしいでしょう?」


ありゃ。

他国を巡ったりした話にもなるし、ムーエット様の手前あちらが本音で話さなくなる可能性もある。

なるべくならお断りしたいけど、ムーエット様の言われることももっともなので仕方ないか。


「……分かりました。

では、お願いします。」


「はぁい。

……ねぇ、ズッ君?

そう言えば、あそこの教主さんなら……。」

「ああ……、確か今日、丁度この帝城に来ている筈だな。

まだ居るかちょっと確認させる。」


えっ、今日?

そんな都合の良い事ある?

……でもまぁ、事前に聞いた話を思い出すと、確かに今日辺りには帝都に来るという話だったから、おかしくはないのか。


「おい、ちょっと──」

イズークェリシャさんは部下に指示を出しに行ってしまった。

ボクは残られたムーエット様に話を振ってみる。


「……帝城に来ているのですか?」

「ええ。

あそこの教主さんには、とあるお役目があるから、毎月一度は来てもらっているの。」


「差し支えなければ、教えてもらえますか?」

「そうね……、構わないかしら?

でも、他では言わないでね?」

「はい、お約束いたします。」


「「翼の魔王」様って知ってる?」

「……はい、知ってはいます。」

知ってるも何も、二度もお食事を共にした仲ですが、これは言わないでおく。


「過去、帝国は「翼の魔王」様と衝突した事があるの。

そのせいで国家的に重要な作戦に失敗しちゃったのよね。」

ああ、帝国からすれば、「魔獣の森」を横断して進軍する作戦を邪魔された事になりますものね。


「その失敗を繰り返さないために、ジサンジ帝国は「翼の魔王」様とは良い関係を築こうとしているの。

その一環として、毎月決まった額を奉納しているのよ。

そして、直接お渡しする役目を「魔王教」に担ってもらっているの。

もともと、ジサンジ帝国内で魔王様の印象が悪くなり過ぎないように、イメージ回復させる目的で作られたのが「魔王教」だから、適任だったのよね。」

「へぇ……。

ちなみに、いかほどご奉納しているんです?」

「そぅねぇ……、具体的には言えないけど、軍事費と比べれば微々たる額よ。

けどまぁ、庶民にとっては結構な額になるわね。

そこそこの規模の商人並に裕福な暮らしが出来る程度、かしらね。」


へぇ……、具体的には分からないけど、ボクのような庶民感覚では確かに結構な額になりそうな印象だ。

……ん?

でも、アリアさんって、そんなに贅沢してる感じには見えなかったんだけどなぁ……。


「おぅい。

まだ「魔王教」の教主が此処に居たみたいなんで、留めてもらっておいたが、会うよな?」

と、ここでイズークェリシャさんが戻って来た。

どうやら教主さんを確保してもらえたようだ。


「はい、お会いしたいです!」

「ん。

じゃあ、もうちょっと残ってもらう様に伝えておくから、早めに食事を切り上げて来てくれ。

オレは先に行って、相手をしておくから。」

「はい、分かりました。

ありがとうございます。」


こうして、「魔王教」のトップと話をつけるという、帝国に来た本来の目的は、此処であっさりと叶ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ