第二十七話「第三次グランドイベント」
これまでのあらすじ(*■∀■*)
怪人幹部C「あーはいはい負け負けw」
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「完全にやられた……」
冬休みに入る前からロクに高校にも行かず、最近ほとんど定位置となっていた戦略シミュレーションルームの一席で、妹ミナミが険しい顔を見せていた。
姉に比べてだが、普段あまり感情を出さない子だけに、これはかなり珍しい光景と言える。
原因は分かっている。今まさに、リアルタイム発信されている怪人幹部Cの演説。その数秒前の一文だ。
『アポカリプス・カウンターがゼロになった瞬間、第三次グランドイベント開始と共に、我々怪人勢力はアトランティス大陸全域から完全撤退する』
続けて何か言ってはいるものの、この一文に比べればどうでもいい、たいした中身のない人類やヒーローへの挑発でしかなかった。
戦略的に見るなら、こんなものは当然論外。怪人の本拠地、控えめに見ても本命の橋頭堡として安定している場所を完全放棄し、それを大々的に告知までしたのだ。
ウチの陣営としても、さすがにこれは想定外。小野教授でも、社会シミュレーションでも、こんな予測は掠りもしていない。
そして、奴の思考をトレースしているはずの俺と妹ミナミも完全に盲点だった。……そう、つまり、誰もこんな事は予測できなかったのである。
おそらく世界の誰もがこんな事は考えていない……とまではいかずとも、あり得る展開として想定、ましてや対策なんてしていなかったはずだ。
「ミナミ、早めに各種情報分析に入ってくれ。ロイドのリソースは最初から全投入でいい」
『はい。プラタを中心に分析入りますので、アルジェントはそのままそこで。……しかし、そうきたかー』
「了解です。プラタとインは使い潰して構いませんので」
自分の姉妹機に対する扱いはともかく、部屋の担当にしてシステムオペレーター役のアルジェントが引き続きここを担当するのは無難だろう。
ほとんど時間をおかずにシミュレーションルームには無数の宙空ウインドウが浮かび、各国の軍事情報が詳細まで並ぶ。それらは本来決して外部に漏らしてはいけない機密情報であり、間違ってもこうやって並ぶようなものではない。もしここにどこかの国の軍事関係者がいたら卒倒するに違いない。
……しかし、ミナミも言っているが、本当にそう来たか、である。
「整理するぞ。……アポカリプス・カウンターのカウントダウン終了、つまりイベント開始まであと一日ちょっと。このタイミングでの世界告知はこれまでの二回でも行われてきた規定路線。しかし、前哨戦の名の元に怪人による大規模な世界侵攻自体はすでに開始している状況だ」
『イベント開始自体はもはや世界中誰もが知っている。疑ってない情報ですね。だから、普通ならただの開始告知になるはずだった。そう読んでいた』
「開始とは別に動きがあるのは当然にしても、わざわざそれを告知する意味はない……とは言わないが、薄いからな」
宣戦布告はもう済んでいるのだ。かぐやの内部リークにあったアレコレが正式に動き始めるのは当然にしても、わざわざそれらを伝えるメリットなんてない。
いや、どう見てもやり過ぎなアレをはじめ、人間側の恐怖を煽る演出にはなるし、俺なら恐怖演出に全フリするだろうが、怪人幹部Cがそれをするとは思えない。
思考をトレースして分かったが、ここは俺との差異を感じる。あいつはもっと直接的に見せてくるタイプだ。
となると、より強くシンクロしているように見える妹ミナミは俺よりもあいつに近い思考なのか。
「ただ、このサプライズ……アトランティスの放棄云々に関してだけは毛色が少々異なる。コレは今回のイベント云々じゃなく……」
「イベント後の世界秩序を睨んだ手……ですね。はっきりとは言い切れませんけど」
合の手を入れるように呟く妹ミナミに頷く。おそらくはその通りだ。
トレースから外れた思考とはいえ、こうして回答ありきなら、さすがに意図は読み取れる。
「もちろん、イベント中の戦略…戦術的に考えて各国の軍に対する牽制にはなるだろうが、それらはおまけ、ブラフ、あるいは挑発だ。つまり……」
「怪人幹部Cは、このイベントを始める前から畳みにかかっている」
『え? そんな事になってるんですか? ……えーと、マスカレイドさん的にも?』
「ああ、多分な」
奴の思考をトレースすると、どうしてもそういう事になってしまう。あいつはすでにイベントでの戦果は半ば諦めている。
告知で前面に出てくるから勘違いしがちだが、これは幹部が主体のイベントではない。第一次、第二次、そしてこの第三次まで、人類やヒーローの敵、ボス役は幹部ではない。今回もおそらく出てくるだろうが、専用に用意されたS級怪人がその役目を担っている。怪人幹部Bは裏でミナミとやり合っていたから、完全に無干渉って事はないが、奴らにとってコレはあくまでイベント開始の告知兼、自己紹介のようなものなのだ。
だから、怪人幹部Cが今の時点で本イベントを敗北と認め、早々に次のターンへ移行するのは分からなくもないし、納得できる。イベントの準備は完了しているだろうし、幹部C自身の本番はまだ先に用意されているだろうからだ。
そして、それらを前提にして発言の意味を考えた場合、今の段階からイベント後を考えないといけないという少々厄介な事になる。
「アメリカ合衆国の観測所からの情報では、確かに撤退作業らしき動きが始まっているとの事ですが……これがブラフという可能性は? とても、一日二日で完了するような作業量とは……」
アルジェントが語る懸念は当然誰もが抱くものだ。
『裏でアンドロイドたちに試算してもらってましたが、怪人の不思議技術を使っても、完全撤退には一ヶ月以上かかるだろうという見込みが……』
「撤退し切れないモノ……特に箱モノは残していく事になるんだろうな。だから、開始時点で撤退が終わってないって可能性は普通にあると思う」
爆破くらいはしていくかもしれんが、痕跡すら残さずってのは無理だろう。夜逃げの如く、必要なものだけを持って脱出って形になりそうだ。
おそらくだが、そういった撤退し切れなかったモノの数々もエサとして機能させる前提。怪人たちに自然に残させる事を狙ったサブライズじゃないかとも思う。
人類にとって未知そのものな怪人技術は喉から手が出るほど欲しいものに違いない。ぶっちゃけ、研究資料としてはウチも欲しいくらいだ。
『そう見せかけて、人類の動きに合わせて反転とか?』
普通ならそう考える。しかし、俺の……俺たちの思考を前提とするなら、これがブラフであるわけがない。……ない、のだが、その前提がちょっと揺らいでいる。俺なら、こんな手は打たない。その懸念が少しでもある以上、イベント上の戦略から切り離せない。
「このちゃぶ台返し前までなら自信持てたんだがな。……まあ、ブラフならそのほうがいい。労力も時間も、そちらのほうがはるかに安く済む」
対処にリソースを取られても、本当にアトランティスが放棄される前提で動くべきだ。
「十中八九ブラフじゃない。だからこそ、最大の嫌がらせになる。……これを読めなかったのは私の怠慢です」
妹ミナミが見せる表情の原因はそこにあるのか。ほとんど緊急で配置した役割に抱くには、少々どころじゃなく過剰な責任感だと思うが。
高校生のバイトに、さすがにそこまでの責任感は求めてないぞ。
「これはあいつが意図的に思考をズラした結果だ。読めるはずがないだろ」
「こちらのやっている事を読み取って、肝心な部分でズラしてくる事までは読めてました。……というか、マスカレイドさんだって可能性としては挙げてたじゃないですか」
「そりゃ可能性の一つとしては考えてたがな。突拍子もないものを含めて、とりあえず言ってみただけの意見は出るさ」
しかし、幹部Cがあえてズラしてるのは当然トレースできない部分だ。それを狙っているんだからトレースしている側に読めるはずがない。
それに、コレに関しては事情が異なる。
「詳細まで読めてたとして、どの道コレは対策の取れない一手だ。俺たちに、アメリカを始めとする大西洋沿岸国を直接どうこうする方法はない。事実上の中継役であるキャップ自身ですら、そんな発言力はないだろ。もちろん日本政府もだ」
「ぐぬぬ……」
同じトレースをしていた俺が感じているよりも、そして俺が考えているよりも、妹ミナミの表情には悔しさが伺える。
そもそも、相手がこの行動に出ざるを得なくしただけで、俺たち……というか妹ミナミの勝ちと言っていいのだ。ここまでの成果だって、期待以上としか言いようがないい。だって、相手が開始前からイベントの敗北を認めるしかないくらいに行き詰まらせた事になるのだから。
それほどに、前哨戦期間でマスカレイドがフリーハンドを得た事実は大きい。実際、あいつら前哨戦でほとんど何もできてないぞ。なんでわざわざ前哨戦なんてしたのって言い始める評論家だっているくらいだ。
「それとも、妹ミナミなら、ここから何か有効な手があるとか? もちろん対怪人じゃなく、アメリカ含む対大西洋国家に対してだぞ」
この一手で怪人の動向予測はそう変わらず、イベント中の懸念はむしろ減る。問題となるのは国際社会の動向だ。
間違いなくアメリカは実効支配に乗り出す。アメリカに限らず周辺の沿岸地域は無視できないし、先んじて実効支配に乗り出す国家もいるだろう。
沿岸諸国でなくとも静観はしないはずだ。特に、ほとんど内乱……どころか戦国時代に突入した感のある中国や、シベリアに戦線を抱えるロシアは、無理にでも戦力を投入してくる可能性がある。とりあえず言ってみたレベルで領有宣言する国だって確実に出てくるだろう。この状況なら言ったもの勝ちだ。
水面下の交渉材料や武器供与など、間接的に関わってくる国なら更に多いはずだ。国だけでなく、多数の共同体単位、宗教団体や犯罪グループ単位でも関われる余地がある。事態の複雑化は避けられない。
どう上手く転ぼうがアトランティス大陸は世界の火薬庫となり、周囲を巻き込んで炎上する未来しか見えない。それくらい巨大な一手である。
こんな世界が鳴動するような一手に、俺たちが対抗できる手なんて……。
「実効支配までならともかく、アトランティスの領有宣言をするつもりなら、日本に月の領有宣言を出させるぞ……とか?」
「…………え、俺が言うの? それ」
「はい」
想像以上にとんでもない手が飛んできて思考がフリーズした。マジかよ、こいつ。
……しかし、実際どうだ? 意外にそこまで悪い手でもない気が……。
「いや、ダメだろ。一瞬、名案なんじゃって思いかけたが、問題だらけだ」
「そりゃ思い付きですし」
「思い付きでそんな案が出てくるのかよ。おいミナミ、お前の妹怖過ぎるぞ」
『え? 割と名案じゃありません?』
「ねーよ。どうなってんだ、お前ら」
実際のところ、ちょっと考えただけでも、一考の余地くらいはある。それくらいの案ではあるのだ。
マスカレイドの発言力があればやってやれない事はないし、それなりの効果もあるんだろうが、デメリットがでか過ぎる。特に日本政府の国際的な立場が激変する。たとえば、これがアメリカや中国、ロシアのような覇権主義的スタンスが多少なりともあるのなら検討の価値はあるが、日本が世界秩序の中心に立つような動きをするはずもない。
俺のスタンスからもズレている。日本政府も取りたくない手だろう。しかし、どちらも絶対に曲げられないほどではないという絶妙な塩梅だ。
のちのちの被害を考慮すれば、多大な方針変更を受け入れる気なら取れなくもない手というわけである。
「よし、諦めよう」
というわけで、そう結論付けた。こういうのは思い切りが大事。
-2-
「え……正気ですか? 別の対策を検討するんじゃなく? このままだと完全に世界大戦コースですよ」
「この一手を打たれた時点で、世界秩序の崩壊は避けられない。ここまで頑張って先延ばしにしてきたが、これ以上はデメリットが勝る。さっき妹ミナミが言った手もそうだが、俺自身や日本だけがババを引く手を取るつもりはない」
後先考えない方法ならいくつか手はあるが、どの道ジェンガみたいな不安定さになるし、そんな手は取りたくない。さすがに知った事かとなる領域だ。強制的に実行させられるなら逃げ出す自信さえある。
妹ミナミはそこまで理解していないだろうが、これを聞いている姉ミナミは分かっているだろう。
「それに、イベントが始まれば、そんな先延ばしは無意味って分かる」
「……どういう意味ですか?」
『すいません、私も分からないんですけど』
「このあと話す。今は目の前の事への対処だ」
少々早くなったが、ここは規定路線だ。かぐや自身やパーソナル情報はともかく、その存在自体は明かしておくタイミングだ。
「まずは、あの発言を受けて行動するだろう連中への対処をどうするか。イベントへの影響に限定するなら極小だが、ないわけじゃない」
『イベントのルールが出ていない以上は断言できませんが、アトランティスでやんちゃしたい連中は放っておけばいいのでは?』
「世界秩序を諦めた以上、個人的には好きなだけ争ってろって話だが、あまり人手を取られるのもまずいんだよ」
『まー、世界規模の陣地取りとなると、ヒーローだけじゃ手は回りせんよね』
「分かってんじゃねーか」
そう、イベントに絞ってもそういう問題がある。占領地における歩兵問題だ。
詳細こそ出ていないが、今回のイベントは世界規模の陣地取りで揺らがない。対怪人戦力としてヒーローの力は必須にしても、それだけじゃ対処し切れない。
バージョン2のシステムから想定するだけでも、エリア支配を維持するのにヒーローだけでは対処不可能に近いのだ。極論、雑に波状攻撃を受けただけで詰むだろう。
怪人被害が出て、取り戻すだけでは足りないのだ。それを維持しないといけない。自分のエリアだけでも、広域に渡って飛び回る必要のあるヒーローではそれができない。エリアの支配率の維持、それに影響する住人の避難、救助活動。軍隊や警察、引いては国民の手は必須になってくる。
湯水のようにポイントを使えるならヒーローオブジェクトで代用する事もできるが、そんな奴は天下のマスカレイドさんくらいしかいないし、月で使ったあとだから今は結構カツカツだ。頼れないし、頼られても困る。
とはいえ、それは完全に国家の領分だ。すでにいくつか存在しているヒーロー主体の共同体にしても同じで、勝手に動かせるものじゃないし、動かしてはいけない。
……そう考えると、銀河たち出向組の役目も今後重要になってくるのかもしれない。
「イベント後に世界大戦レベルまで飲み込むつもりなら、姉ミナミの言うように放っておくって手はアリじゃないですか? 実際、日本国内と月だけならどうとでもなりますよね?」
「お前ら姉妹は本当に過激やな」
まあ、実際問題ナシではない。日本……と、ついでに月だけに注力するなら、無傷でイベント終了を迎える事だって不可能じゃないだろう。
どうせ世界的な混迷が見えているなら、ここで怪人の侵攻を多少食い止めたところで、だ。逆に、このタイミングで盛大に膿を吐き出してもらって、綺麗事で誤魔化さない国家ごとのスタンスを表に出してもらうっていうのも一つの手ではある。
これまでの国際情勢が臭いものに蓋をするスタンスなら、これを期にそれをぶちまけてしまおうという話だ。
「だが、それこそ怪人幹部Cの思う通りの展開だぞ。それはいいのか」
「……良くないですけど」
『そこに張り合うんだ』
妹ミナミ的には、やっぱり良くないらしい。
俺としても、完全に対策放棄とは行きたくない。できる手があるなら打っておきたいのは確かなのだ。
結局あーでもないこーでもないと議論を重ねた結果、多少でも飲み込めそうなのは……。
「公式、非公式問わず、アトランティス侵略の行動を確認した国家・共同体に対して、マスカレイドさんの出撃優先度を下げる……ですか?」
しばらくして、呼び出したクリスに原稿を渡す。
「ああ、これはイベント中だけのものである事も明言する。……なんか不満そうだな」
「いえその……もっと厳しい事を言うんじゃないかって思ってました。月の時みたいなインパクトがあるやつを」
「んなもんできるか」
何故、こいつらは揃いも揃って俺が強硬的な手段を好むと思うのか。基本的に俺は事なかれ主義で、必要なければ強引な手段は取らない。必要あるなら掟も横髪も破るが。
「個人的には、もう手を貸さないって言い切るのも手なような」
「悪手だ。それなら、いっそ何も言わないほうがいい」
「そうなんですか……」
「一応説明しておくが、この声明はどちらかというと大国以外への牽制がメインなんだ。どうせアメリカは動くし、それは止められないからな」
「は、はあ」
むしろ、俺としては可能ならアメリカにアトランティス全土を確保してもらいたいくらいだ。各国が入り乱れて斑模様になるほうが困る。そこまで明白になれば、イベンド後の世界秩序が保たれる芽が出てくる……はずだ。つまり、イベント後の世界秩序はアメリカの動向にかかっていると言っても過言ではない。
……だから、裏でアメリカを支援する。具体的には、ヒーロー・ボトルの提供量を倍増させる。制限なしの青天井だ。ついでにキャップに事情を伝えておけば、きっと意図や思惑を測って動いてくると思う。犠牲になるのはキャップの胃壁くらいのものだ。安い安い。
「とはいえ、あんまり説明している時間はない。この告知は最低でもイベント開始までに、できればイベントルールが発表されるまでにしておきたい」
「は、はい。急がせます」
不意に飛び出した急がせるという言葉に、なんとなくクリスの成長のようなものを感じた。すでに、ただのスピーカー役からは脱却しているのだろう。
「明日香もフォロー頼むぞ。どうせマスコミは騒ぐし」
「大丈夫だと思うけど……りょーかい」
クリスにくっついて来た明日香にも声をかけておく。別に会見場に出る事はないが、いざという時はどうにかしてもらう立場で、それをできる装備も提供している。
妹ミナミほどじゃないが、こいつもかなり学校を休んでクリスと一緒にいるらしい。聞いた話では、最悪卒業はできるように立ち回ってはいるとの事だが……まあ、別に今の世の中で学歴なんか気にしても仕方ないか。
ちなみに、全然関係ない話なのだが、このご時世の影響を喰らったのか、俺の母校はいつの間にか高校も大学も廃校になっていた。地味にショックである。
-3-
『それで、先ほどの……えーと、イベントが始まれば無意味になるって分かるって言葉の真意については?』
休憩として自室に戻ってきたタイミング。記者会見まで待つつもりだったタイミングで、ミナミが例の件を切り出してきた。そりゃ、ミナミとしては一切覚えのない事だから気になるのだろう。
妹ミナミやバイオロイドたちにも共有の必要があるが、とりあえずはこいつに個別で伝えるべきだろうからちょうどいい。というか、ネックはミナミがメインなんだし。
「実は、怪人勢力の内部にスパイがいるんだよ」
『え? いつの間に……って、ああ、ノーブックですか。カメラマンだと中立怪人ですし。どうやって脅したんです?』
「ああ、一応そのラインがあったか……って、脅してねーよ! というか、あいつじゃねーよ」
なんだかんだで、ノーブックは本当の意味じゃ裏切らないんじゃねーかな。まだ、特殊性癖四天王のほうが見込みありそう。
「違うんですか? そうなると候補が……いつかのプロテクション・ボムの所長さんたちも中立ですし」
「悪いが今の段階で正体は言えない。相手がどうこうって話じゃなく、俺とかみさまの判断だ。お前を蚊帳の外にするつもりはないんだが、コレに関してはちょっと厄介でな」
『かみさままで認識してる話なんですか。それなら口を出す気はありませんけど』
おや、思ったより軽く引くな。
「正体について、もうちょっと突っ込んでくると思ってたんだが」
『そりゃ気にはなりますけど、言う気ないんですよね?』
……俺が気にし過ぎだったのか? いやでも、ミナミとの関係性を考慮するなら匂わせるのもまずいしな。
『それよりも、今はリーク内容のほうが気になります』
「ああ、それはまとめてある。手書きで悪いが、報告用にまとめてくれ」
『あ、はい。なんで手書き……』
デジタルならあらゆる場所に干渉してきかねないお前対策なんだ、すまんな。かぐやですら、お前がどこまで干渉してくるか自信ないみたいだったし。
『えーと、どれどれ、概念かい…………あいつら、正気ですか?』
「正気らしいぞ」
ミナミが引っ掛かった箇所は当然アレだろう。他にもいろいろあるが、ヤバさが群を抜いている。
この場合のあいつらとは怪人だが、それを許した運営にもかかっている。
『はっきり言って特撮の解釈違いな気がしますけど。……いや、今更と言えば今更な気も』
「コレに関しては、できれば事前に各所にリークしたかったんだが、出所元を説明できないから黙ってるしかなかったんだ。情報自体が流出したって事実だけでも危険だからな」
『あー、スパイさんの存在が絞り込まれかねないと。確かに。……つまり、おそらくヒーローや人類側は誰も把握していないって事か』
「多分、俺とかみさまとスパイだけだ。あとはお前。遅くともあと数十分経てば、名前くらいは出てくるかもしれんが」
怪人側でどう伝わっているのか、どの範囲で伝わっているのかの情報がない以上は、こちらで勝手に流すのは危険だったのだ。
ひょっとしたらこのあと発表されるだろうイベントルールでも、詳細については触れられるか怪しい。
「ルール発表で多少でも触れててくれれば、心構えくらいはできるかもしれないな」
「でもコレ、マスカレイドさん以外に対応できるんですか?」
大型食いが得意なミサイルライダーあたりなら、むしろ好物かもしれない。あと、元ネタ的にハヌマーンとか。
「実態が分からんからはっきり言えんが、爆弾怪人に対処できてるんだから多分? というか、いくら時間制限があるとはいえ、バランス的にできないとまずいだろ。攻略をバグ前提にするとか最悪極まるぞ」
それで喜ぶのはRTA走者くらいだ。
「まあ、運営的にはそうでしょうね。とはいえ、最近はマスカレイドさん前提のアレコレも見かけますし」
「そこまで無茶苦茶じゃないと信じたいな」
もしそうなら、そろそろ逃げ出す事すら考慮する必要が出てくるかもしれない。
反則みたいなものだが、バグとか掟破りとか、そんなのはマスカレイドさんだけでいいのだ。別に苦戦したいとも強敵と戦いたいとも思ってないのだから。
「あ、記者会見始まりましたね」
ミナミがそう言うのとほぼ同時に、画面上の会見席にクリスが現れた。一応、政府関係者も複数参加してはいるが、あくまで政府としての回答役でしかない。
未だ緊張は見られるものの、複数回経験を重ねたクリスには余裕のようなものも見られる。基本的に会見は一方通行であり、必要のない質問への回答は不要と開き直ってからは太々しささえ感じるほどだ。
これが普通の記者会見ではない事はすでに出席している記者も周知の上だから、無茶な質問も少ないし、正確な回答が欲しいなら専用ホームページのフォームを使ったほうがいいというのも認知されてきている。これは結局、メディア相手にもちゃんと説明してますよという体裁を整える場でしかないのだ。
塩対応なクリスに対して記者はあきらかに不満気だが、今回に関してはいつもよりもトーンは低い。何故なら、アトランティスの実効支配に関して、日本はあまり関係ないからだ。実際、無駄な質問や関係のない質問でペナルティを受ける事を考慮しても手を上げる記者は少ない。
『その……アトランティス制圧後にマスカレイドが出撃するかどうかについては……』
『イベント外の質問なのでノーコメントです』
これからの状況を想像したのか青くなったアメリカ人記者への回答。最近、ネットではその蔑むような目が癖になって来た人も多いクリスの塩対応である。
記者としては下手に突っ込む事もできない。強引な事をしてどうなるかは、会場にいる記者の所属分布からも明らかだからだ。
まあ、クリス相手に言質を取りたいのでない限りは大人しくしているのが無難なのだ。
『それで、会見中に来ましたね、イベントルール。ちょっと複雑かつ猥雑なので、内容まとめます』
「頼む」
リークでだいたい知ってはいるが、どう発表するのか、あるいはどう違うのかの答え合わせだ。
第三次グランドイベント『大戦闘! 大戦術!! 大戦略!!!』イベント概要
■主なルール
・本イベント中、エリア支配変動の条件が大幅緩和(通常の三十倍)
・現時点で支配率が一定以上に達していないエリアは0%にリセット
・本イベント中、エリア支配率の裁定・決算処理を一日ごとに実施(世界協定時刻基準)
・本イベント中、支配エリア下の強化・弱体効果が増幅
・本イベント中、ヒーローオブジェクト/怪人オブジェクトの支配率変更効果が倍加
・本イベント中、ヒーロー/怪人の転移制限を緩和
・アトランティス・ネットワーク上のエリア情報を詳細化
・カタログ商品の値段変動制を先行導入
・一部カタログ商品のセール実施
・公海、南極、北極などの準未確定エリアを支配エリアとして再定義
・EEZなど、現在セカンドエリアとして定義されているエリアを支配エリアとして再定義
・地中、空中をメインエリアの支配率を一部継承した上で一定距離ごとにセカンドエリアとして定義
・ヒーロー、及び怪人の強化システムを一部解放。本イベント中は発動条件が一部緩和
■イベント期間
・本告知の二十四時間後から三十日(途中終了あり)
■イベント終了条件(以下のいずれかを満たした場合)
・イベント期間終了
・侵略怪人バルバロッサシリーズをすべて撃破(生存個体はアトランティス・ネットワーク上で確認可能)
・人類/ヒーロー勢力が、新定義エリアを含む支配エリアを地球上の90%以上獲得
・ヒーロー勢力が、新定義エリアを含む支配エリアを地球上の50%以上獲得
・怪人勢力が、新定義エリアを含む支配エリアを地球上の30%以上獲得
■捕捉事項
・このイベントは地球上を対象とする。
・このイベントに月は含まれない。
「お前のまとめなのに、念押しすんな」
『いやだって、原文でもかなり強調されてましたし。よっぽどインパクトが強かったんじゃないですか?』
ご丁寧に、今回のイベントに月は関係ねーぞと捕捉している。ぶっちゃけそれ自体は俺にとって優位に働くのだが、ようするに盤外で暴れんなよって忠告を含んでいるのだろう。
ただ、例の軌道衛星について言及はないので、あそこは対象という事なのだろう。これはおそらく現在地球上を周回している人工衛星も含まれるはずだ。
月に関してはまあ……言及せざるを得ないのだろう。かぐや曰く、アレは次のイベント地として予定されていた場所なのだから。
『内容自体は概ねリーク通りですね』
「ああ、だが……」
一部、かぐやのリーク情報にないルールが記載されている。あいつが掴めていなかったのか、あえて渡さなかったか、あるいは新規に追加されたものか。
読み解くとちょっと厄介なものも含まれていた。一見して分かり難いルールはだいたい悪意を感じる。つまり、いつも通りだ。
まずイベント名だが、人間も見るようになったからか、これまでよりはふざけたものじゃない気がする。いや、ふざけてはいるのだが、悪趣味度は下がっているだろう。
そして、エリア変動関連の情報は概ねかぐやのリーク通り。ただ、イベント期間の三十日は初出だ。リーク時点では長期イベントとだけ聞いていた。
『アトランティス・ネットワークの専用サイトに[ 30 + 1 ]と表示されてます。これが多分イベント期間ですね』
「一ヶ月……三十日って期間は聞いてなかったんだよな」
『何かしらの条件で変動するものだったとか?』
あり得るが、俺としては怪人幹部Cが直接決定しているような気がしてならない。そして多分、これは最小値だ。さっさと終わらせたい奴の意思を感じる。
他にも、終了条件のパーセンテージなど、細かい部分で異なる部分はあるな。
個人的に悪辣なのはカタログ商品に関して。いや、俺がほぼ全財産を投入したオブジェクトの価格云々ではない。
……懸念はセールと変動制だ。
これまでにエリアカタログを手にいれた連中は、一部を除いてほとんど商品を買えていないはずだ。これはカタログ商品の高額さが主な原因だが、それはつまり商品の詳細を知ってはいても手が出なかった層が多数存在する事を意味する。目の前にエサがぶら下がっている分、その欲求はカタログを持たない者よりは遥かに強いだろう。
もし、このカタログ利用予備軍が一度でも商品を手にしたら、既存の価値観すら書き換えてしまいかねない。その呼び水としてセールは悪魔の囁きになるはずだ。
次に変動制だ。詳細は出ていないが、これが全体の購入数に応じて価格が釣り上がるようなものなら、世界は血で血を争うポイント合戦になりかねない。
地味にこれらと連動しているのが、今回のイベントでのエリア支配変動条件大幅緩和である。
一日保持すればエリア支配が可能、その分のポイントまで精算されるとなれば、独自に動く者が出てくるのは容易に想像できる。それこそ、国家や共同体ではなく団体、企業などの規模でも動きかねない。数十人から数人の小規模グループ、ひょっとしたら個人ですら変な事をする奴は現れるだろう。
何も怪人やヒーロー相手、巨大な組織相手にドンパチやる必要はない。一日ごと、三十倍の変動率という条件の上でなら、裏でコソコソ動いて商品を手に入れる事ができるかもしれない。
ここで重要なのは、実際には実現可能か、ポイントが足りるか、商品が手に入るかではなく、その手段を思いつき、実行に移せてしまうという事だ。
それこそ動画配信者がやってみたと言い出しかねない条件の緩さ。考えなしがいちかばちかで行動するのを止める事はできない。
暴走を止めるために警察や軍など、体制側の人手がとられれば怪人の思う壺だ。理不尽に国家権力を動かせる国ならともかく、日本のような国ではどういう名目で行動を制限するのかという問題もある。
これらは決して被害妄想ではなく、今現在も世界で発生し、大量の死人を出している問題の延長線上にある事なのだ。楽観視などできない。
俺たちに直接関わってくる話ではないが、政府は頭を抱える事だろう。
小野教授や妹ミナミへの情報共有前にこういった懸念点を含めた内容の精査を行う。
その後、チェックを入れつつ、段階的に長谷川さんや近藤さん、政府、必要なら一般向けまで伝達されていくわけだ。
『アトランティス・ネットワーク上で、新たに空中、地中などの支配エリアも確認可能になってますね』
「というか、どこからどこまでがその対象なんだ?」
空中も地中、あるいは水中も、地上以上に領域に区切りの付け難い場所だ。そもそも、正式な宇宙空間の境界定義って、領空問題が絡むから存在しなかったと思うんだが。
『明確な表記はありませんが、この表記だと多分、いわゆる大気境界層までが既存の領域で、そこから上の対流圏、成層圏、中間圏、熱圏、外気圏、そして宇宙ですかね?』
「そもそも、その分類が良く分からんのだが」
『私も詳しくは……。とにかく、一定距離ごとにエリアが分離しているって事だけ分かれば問題なさそうです』
「んな大雑把な」
どこかのタイミングで調べておいたほうがいいだろうな。公開情報だから、どこかで解説してくれるかもしれないが。
まあ、とにかく多層構造的に既存のエリアに積み重なる形で定義されていると。ルールの記載上は、メインエリア……今エリアとして定義されている場所に影響を受けるセカンドエリア扱いである。
実は、今までもセカンドエリアって言葉自体は存在していたのだ。これは主にヒーローの担当エリアの概念で、主にEEZなどの陸地でない場所が当てはまる。
このセカンドエリアも一応担当エリアではあって、怪人出現のアラートなどは反映されていたのだ。それが、正式に定義されたと。
「地下も似たような感じか? 確か、日本だと四十メートルまでが所有扱いなんだっけ?」
それを思い切りぶっちぎって設置しているのがウチの避難所なんだが、誰も言及しないし、気付いてすらいない。
『こちらは百メートルまでが既存エリア扱い、具体的な距離の記載はありませんが、そこからおよそ千メートル、一万メートル~地殻って扱いみたいです』
「マントル以下は定義されてないと? いやまあ、行けと言われても宇宙以上に困るんだが」
『はい。海での扱いも概ね同じですね』
「海の基準は海底って事か?」
『そうみたいです。北極の氷やマリアナ海溝のような場所は例外っぽいですけど』
つまり、今回支配エリアとして定義されるのは、主に外気圏から地殻までというわけだ。地球から見れば本当に表面部分だが、相当に広大な領域が支配エリアとして定義される。……これまでの何倍になるんだろうな、これ。海の面積考えると大変な事になりそう。
イベント後の事も考えるなら維持……というか防衛も考える必要があるわけだし。
『あと、ちょっとした問題ですが、避難所の位置がバレますね』
「あー、うーん、確かにな」
これまでも表示されていたが、マスカレイドの支配エリア自体は他にもあるし、地中がどうなっているかなんて分からなかった。しかし、今回のイベントアップデートで地下に何かがある事までは見えてしまう。
地上部に入口のない、完全に埋没した施設ではあるが、国内にある事を知られるのはあんまり良くはないな。少しうるさくなりそう。
権利上はちゃんとした土地だが、先ほども言った地下四十メートル以下の問題もあるし、そんな事は関係なく騒ぐ連中はいる。中に入れろという連中だって大量に出てくるはずだ。
「以前から検討してたが、月に移動させるか。ポイント的に、タイミングは要検討だが」
『そうですね。一応、無人島なんかの案もありましたけど、エリア情報見られるとなるとそれが無難かもしれません』
避難所住みの連中はある日突然月の住人となってしまうが、仕方ない。別に告知する気もないから、自覚はないままって事になるが。
……移動するとしたら裏側のほうがいいかな。
「そういや、月の地表から宇宙までの支配権もこれに準拠する形になるのかな?」
『問い合わせましょうか?』
「そうだな、はっきりさせておくか」
回答はすぐに返ってきた。
距離の違いこそあれど、月の支配エリアの扱いも地球準拠。ただし、全領域支配しているため、地下は距離を問わずすべて支配エリア扱いになるらしい。
この再定義エリアに関しては本イベント後に正式に導入されるとの事。……本来は第四次グランドイベントの時だったんだろうな。
『つまり、マスカレイドさんは月の中心にも転移できる?』
「転移したくねー」
『死ぬとは言わないのがマスカレイドクオリティ』
だって、多分死なんもの。地球の中心や太陽の表面なら分からんが。もちろん、死なないだけで活動できるとは言っていない。文字通り土の中にいる状態だし。
『実際のところ、他の惑星で活動できる自信あります? 火星とか金星とか水星とか』
「火星はともかく、それ以外は厳しそうだな。死ぬかどうかに関しては分からんとしか言いようはないが、宇宙服もオブジェクトも壊れるだろ」
『となると、現実的なのはせいぜい火星までって事か』
「いや、そもそもやらんからな」
運営がどこまで想定しているのかなんて分からんが、火星はさすがに無理があり過ぎる。月だって、一番安くて支配領域の大きいオブジェクトを改造してようやくって感じなのに。……ただまあ、ポイントさえ許すのなら不可能ではないな。環境的な問題で金星は無理だろうけど。
「木星とかのガス惑星も事実上不可能だろ。オブジェクトを設置する地上が事実上存在しないわけで」
『今回、空中用のオブジェクトも出てるんですよね。リーク情報によると、空中要塞まで出てくるみたいですし』
「…………」
そういえばそうだな。今のところ、どう足掻いても仕様上不可能だが、今後超々広エリアをカバーするようなオブジェクトが追加されるなら、外側から木星を支配する事も可能になったりするのか?
月を全域支配しておいてなんだが、人間として常識が邪魔をして想像が及ばない。
『月みたいに衛星まで含めるなら、他にも候補はありますし。やがて、太陽系のすべてを支配する宇宙大王マスカレイドが爆誕する事に……』
「ねーよ」
『対人関係まったく関係ない領域の話なんで、引き籠ってても問題ありませんよ』
「そういう問題じゃない」
月を支配したのだって、やりたいからやったわけじゃないのだ。怪人対策云々を考慮するなら別にいらないし、ちゃんと維持できる奴がいるなら譲渡してもいいくらいだ。
というか、運営は果たしてどこまでを想定しているんだ? 地殻までという条件付きでこそあれ、地球全土は支配エリアと化す。月だってそうだ。
……なら次は? まさか太陽系全土や外宇宙まで舞台にするつもりじゃあるまいな。
いやまて……。
「…………」
何故、俺は地球や太陽系っていう宇宙方面にだけ目を向けている? それとは違う場所は確かにあって、俺はそこに行きさえしているのに。
もっと言うなら、かみさまの領域やミナミのいるヒーロー・ビルはどこにある? アトランティスをはじめとする大陸は一体どこから来た? 怪人たちの本拠地は一体どこにあるんだ? この盛大な茶番劇を始めた神々はどこにいる?
月はいい。システム的に対象化されているし、かぐや自身が次の舞台として予定されていると明言している。
なら、その先はとなると、漠然と宇宙方向へ遠く遠く離れる認識でいたが……。
たとえば、かぐや……この場合、怪人幹部Dが言及していた存在として怪人幹部Eがある。ここまでの慣習に乗っ取るなら、そいつが表に現れる際には相応の舞台が容易されるはずで……つまり、予定ですら月では終わらないのは確か。
そもそも、運営……いや、その更に上の神々は何をさせようとしているって根本的問題もある。ラスボスであるジョン・ドゥがヒーローに討たれる事を目的としているとしても、果たしてそこで終わるのか。
最初期に俺が懸念していたのは、ヒーロー対ヒーロー、人類対ヒーローという構図への遷移だ。
敵を倒して役目を終えたヒーローがそれを受け入れられるのか。力を失うのかは分からないが、もしそうだとして手放せるのか。そういう状況になると。
ここまで規模が拡大している今、そんな単純な話になるのだろうか。マスカレイドなんて月を支配してるんやぞ。
「……今考える事じゃねーや」
『それもそうですね。目の前の第三次グランドイベントが最優先です』
「そういう意味じゃない」
『???』
俺たちは、そろそろこの盛大なる余興の目的や行く末に目を向けるべきなのかもしれない。
ちなみに、この世界ではここ数年起きた紛争は起きてません。(*■∀■*)







