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エピローグ 桂木天音のひとりごと その3

 七月一四日 未明 


 学校に雪崩れ込んできた警官隊は、あっという間に吉沢くんを取り押さえた。


 ウチは必死に、犯人は吉沢くんやのうて汐下やて説明したけど、なかなか分かってもらえへん。ラッキーなことに、ウチの事件を担当していた刑事さんをみつけて、やっと吉沢くんは犯人扱いを免れることができた。


 それやのに吉沢くんが体育館裏の死体を発見してみせたもんやから、また大騒ぎになって、結局ウチと吉沢くんは事情聴取のためパトカーで警察署まで連れて行かれることになった。


 汐下のヤツは、警察病院に搬送された。


 山田たちは、警察が来る前にこっそり逃げ出したらしい。汐下を職員室に拉致しに行った山田の手下は、汐下に半殺しにされて廊下に転がされているところを保護されたそうや。


 パトカーの中で、知り合いの刑事さんが吉沢くんにどうやって死体をみつけたのかと聞いてきた。


 そしたら吉沢くんは「自殺した友だちの幽霊が教えてくれた」て、ド直球な返事をしよった。


 たしかにそりゃそうやけど、誰がそないなこと信じるかい。


 ところが刑事さんは、またいつもの調子で「下条くんは自殺じゃなく、事故だ」とぬかしよった。


「実はキミが屋上から突き落とされた事件のあと、しばらくのあいだ隣の校舎に刑事が張り込んでいたんだ。下条くんが転落したときにも捜査員がいて、一部始終を目撃していた。彼は一度自殺をしかけたけれど寸前で思いとどまって、でもそのあと足を滑らせてしまったそうだ」


 納得いかへんウチが「セージは自殺したんや」って主張すると、刑事さんは「君らの知っている下条くんは、自殺をするような人間だったのか」と逆に聞いてきよった。


 そない言われると、ウチも言葉に詰まる。


 たしかに、ウチの知っているセージは自殺を選ぶような人間やない。


 最後まで、あきらめずに頑張るヤツちゃ。


 なんだか、ウチまでセージは自殺じゃないような気になってきた。(これって誘導尋問ってヤツやろうか?)


 ウチは、セージとすごした49日を思い出した。


 エロくて、情けなくて、優しくて、いっつもウチを驚かせる。セージと一緒の49日は、いままでの人生で一番輝く宝物やった。


 セージはさしづめ、死に掛けたウチのために降りてきてくれた天使や。


「アマネちゃん、これ」


 吉沢くんが、ハンカチを差し出した。


 さっきから、ウチはずっと泣き通しやったらしい。


 いかんいかん。こんなんじゃ、セージに顔向けできひん。


 泣くのは今日でしまいや。明日になったら、大好きなセージのためにウチも頑張ろう。セージの彼女として、いつの日か胸を張って彼に会えるように。セージの助けてくれた命を大事にしよう。


 友達も一杯作ろう。最初は難しいかも知れんけど、小山内さんなんかどうやろ、ゲテモノ趣味同士話が合うんやないやろか。


 そして、残り少しの中学生活やその先の高校生活、さらにもっと先の人生も、思う存分楽しむんや。


 それでええんよね、セージ。(了)

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