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「これから作戦会議なんだ。君の案内は、こちらのかわいい騎士見習いくんがしてくれるよ」
ルシアスが、先ほどから2人の会話を聞いているセオドアを見る。
「一応言っておくけど、彼を振り切って行動するのはよしてくれ。君を完全にフリーにしたとなったら、私が怒られる」
「できるだけ、そうするわ」
「済まない、聞き間違いかな? できるだけ!?」
「冗談よ」
ルシアスは陣地の先に去った。
彼に取っては大役を命じられたセオドアは緊張ぎみに、美しい弓使いに話しかけた。
「どうしますか?」
「両軍を見渡せる場所に案内してくれる?」
頷いた少年の先導でレナは、ひときわ高い丘の上に登った。
そこで、馬を下りる。
眼下では、聖騎士団と人間の通常軍、そしてスティールマインのドワーフたちが、オーク軍とガイダンの魔導兵団と向かい合って布陣していた。
レナは背の魔弓を左手に取った。
アポカリプスが、ビリビリと震える。
(来る!)
両軍の中間地点に、狂える魔法使いの産物のひとつ、恐ろしい魔獣が空間を軋ませ現れた。
名工の鎧を取り込んだ身体は硬質化され、無数の黒い鱗に覆われている。
怪物は醜い大口を開き、ズラリと並んだ鋭い歯を剥いて、気味の悪い咆哮を発した。
おそらくルシアスと自分以外は驚いている、この乱入者に向け、美貌のシューターは、ゆっくりと魔弓を構える。
矢筒から取った1本をつがえ、細身を大きく反らし、ギリギリと引き絞った。
異様な姿を震わす怪物に、しっかりと狙いを定める。
彼女は10年前の自分より強くなったという証明のため、ここに来た。
ガシュラグを倒せねば、デモリアは討てない。
否、撃てない。
すさまじい集中。
時が一瞬止まったかのような感覚。
魔弓アポカリプスが唸り、紫のオーラを立ち昇らせた。
刹那。
猛スピードで、魔矢は放たれる。
光弾と化した弓撃は、飛来に気付かせもせず、おぞましい魔獣の胸を貫いた。
レナに完璧に操られた魔弓のエネルギーは怪物の再生を封じ、粉々に四散させる。
レナの双眸に、感慨はない。
これは、復讐の第一歩に過ぎないのだ。
戦場では、突然の魔獣の出現と消失に、両軍がざわついている。
「す、すごいです!」
セオドアがレナに駆け寄る。
高揚するアポカリプスを宥め、背に負って振り向いた彼女の表情は険しさを静め、いつもの魅力的な雰囲気に戻っていた。
しかし今度は、少年の輝いていた表情が曇ってしまう。
「あら? どうしたの?」
レナは優しく、微笑みかけた。
「いえ…すごすぎて…こんな人たちの戦いに、ボクなんかが役に立つのかなって…」
「フフフ。わたしも10年前は、そう思ったわ」
「レナさんも!?」
「ええ。でも、必死に頑張った。こいつを手懐けるためにね」
アポカリプスが、ビリビリと震えた。
「それに」
レナはセオドアの肩に、そっと手を置いた。
「皆が、それぞれの出来ることを全力でするの。それが大事なのよ」
「は、はい!」
少年の瞳に輝きが戻る。
「それじゃ、わたしは行くわね」
レナは馬に乗った。
「レナさんに、ご武運を!」
「あなたにも幸運を。必ず生き残って、また会いましょう」
「はい!」
セオドアが、力強く頷いた。
レナは最後に手を振り、馬を走らせる。
向かうは、ガイダンの狂える魔法使いデモリアの居る場所。
彼女の戦いは、まだ終わらない。
美貌の弓使いレナと魔弓アポカリプスの冒険譚は、まだ数多ある。
しかし、それを話すのは、またの機会としよう。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(^o^)
大感謝でございます\(^o^)/




