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 巨大な「魔弓アポカリプス」を背負う美貌の弓使いレナの活躍譚(かつやくたん)のひとつ。




 進軍を開始したドクロ山のオーク軍勢は、妖精騎士ルミナリアを(よう)する妖精王国軍とスティールマインのドワーフたち、そして人間の聖騎士団の連携によって、一旦(いったん)は退却した。


 だが、そこに魔法都市ガイダンの魔導兵団、魔法ゲートを通り来た南部ハイオークのブラック・ウルフライダー、さらに「死の都」より参戦した不気味なネクロマンサーの操るアンデッド軍が敵に加わり、戦況はにらみ合いの膠着(こうちゃく)状態へと移っていったのだった。


 さらに敵軍は妖精王国軍にはアンデッド軍を、聖騎士団にはオーク軍を主軸に展開し、組み合わせの不利を無くす巧みな布陣を見せている。


 月明かりが照らす、夜の丘陵(きゅうりょう)地帯。


 聖騎士団の陣地に、弓使いレナが栗毛の馬に乗って現れたのは、そんな時だった。


 巨大な魔弓アポカリプスを背負った彼女は当然、見張りの騎士たちに呼び止められた。


 彼女は名乗ったが、若き騎士たちの中に、レナを知る者は居ない。


 10代後半の騎士見習いのセオドアが、美女弓手の見張りにつけられ、他の者が上官の元へと報告に走った。


 こちらを見て、かわいらしい頬を赤く染める少年に、レナはかつての自分を思い出す。


 彼女にも背中の魔弓に認められず、使いこなせない時期があった。


 今夜は、その時の忘れ物を取り戻しに、ここにやって来たのだ。


 しばらくすると眼鏡をかけた、こちらも整った容姿の、20代後半の男の魔法使いが姿を現した。


「やあ、レナじゃないか! 久しぶり! 最後に会ったのは10年前かな?」


 魔法使いの表情が(ほころ)んだ。


「ルシアス」


 レナが、彼の名を呼ぶ。


 確かに10年ぶりの再会だった。


「あなた、聖騎士団に入ったの?」


「否、入団したわけじゃない。私が俗物なのは知ってるだろ?」


 ルシアスが笑った。


「ガイダンの魔導士対策に、書庫から駆り出されたのさ。(きみ)はあれから今まで、どうしてたんだ?」


 レナは、背の魔弓をチラッと見た。


「修行よ。わたしを(あるじ)と認めさせるのは大変だったの」


「なるほど」


 魔法使いが頷く。


「それで、何故ここに? 力を貸してくれるのか?」


「少し違う」


 レナは肩をすくめた。


「ガシュラグよ」


「ガシュラグ! 忌まわしきものよ!」


 ルシアスが眉をしかめる。


「ここに来るのか?」


「ええ。アポカリプスが教えてくれた」


 彼女の背の魔弓が、ビリビリと震えた。


「なら、デモリアも?」


「いいえ」


 レナが首を横に振った。


「奴は別の場所に居る」


 ガシュラグは、魔法都市ガイダンの狂える魔法使いデモリアが黒魔法で造った怪物だ。


 ただでさえ厄介(やっかい)な再生能力を持つが、ドワーフの名工の鎧を我が身に吸収し、破格の防御力も手に入れた。


 10年前、レナはまだ未熟な技量でガシュラグと対決し、倒すこと叶わなかった。


 その後の乱戦の末、レナはあの日からガシュラグはおろか、父の仇であるデモリアにも遭遇できていない。


「ふーむ。修行して魔弓を使いこなす道こそが、最も早い復讐に繋がっていたわけか」


 ルシアスが納得した。


「しかし、デモリアではなく、ガシュラグを先に?」


「10年前の精算よ」


「なるほど。いかにも(きみ)らしい」


 ルシアスが微笑む。


「わたしが陣地に入れるよう、騎士団長に取り成してもらえるかしら?」


「分かった。私がそうしなければ、(きみ)は強引に入り込むだろ?」


「ええ、もちろんよ」


 2人は笑い合った。




















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