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テネブリスアニマ ~終焉の世界と精霊の魔城~  作者: 朝寝東風
第一章 テネブリスアニマ再誕
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ゴブリンスケルトン

 進化の間と戦利品の確認をしている内に空が白んだ。


 マカンデーヤが次のゴブリンの集落に突撃したい素振りを見せる。


 長くは我慢出来ないだろう。


『最後に一つだけやって、マカンデーヤを解き放つか』


 仁は既に諦めの境地だった。


 それと同時に眠たかった。


 太陽が昇るのと同時に寝るのが日課。


 この世界に来てもそれを変える気は無かった。


「ゴブリンの魔石で試したい事がある」


「何なりとお申し付けください」


 仁の希望は出来る限り叶えると言うアサン。


「ゴブリンスケルトンの召喚と使役だ」


「ほっほっほっ、私の専門分野ですのう」


 禍々しいオーラを放ちながらケーレスが言う。


 学術的な事柄なら彼の独断場だ。


 彼の骨に肉が付いていれば、寝る子も泣き出す様な邪悪な笑みを浮かべていただろう。


「俺たちの内でゴブリンスケルトンを召喚出来る者は?」


「時間を頂ければ」


「無理ね」


 アサンとコレンティーナは無理と言う。


 アサンは生者に儀式を施せばアンデッド化出来るが、魔石からでは難しいのだろう。


「俺様には必要が無いぜ!」


「で、俺は出来ないと」


 マカンデーヤは最初からそれに興味が無い。


 仁は魔石を手に取って、ケーレスの指導の下で魔力を流そうと試みるも、結果は出ない。


「私は魔石さえあれば千でも万でも行けますのう」


 ケーレスが一人だけ桁が違う話をしている。


「数だけ居ても意味が無かろう」


 アサンが負け惜しみを言う。


 ただ、負け惜しみと断じるのは少々早計。


 ゴブリンスケルトンが一万体相手でも、アサンなら無傷で勝てる。


「数は力ですからのう」


 ケーレスも負けじと言い返す。


 数は使いこなせれば強い。


 それこそ一万体を有機的に動かせれば、ヒューマンの大軍と互角に戦える。


「そこで使役出来る限界を調べたい」


 仁が本題に入る。


 数ならケーレスが用意出来る。


 用意した数を誰が使えるか。


 それが問題だ。


「魔石は残り76個です」


 アサンが在庫数を諳んじる。


 現在ある六体と合わせて最大82体。


「増やし過ぎるのも考え物ね」


 コレンティーナが全賭けに否定的な見解を述べる。


 魔石は以外と貴重だ。


「近場の集落だけだと350個は手に入るかのう」


 テネブリスアニマをランクアップさせるための千個には届かない。


 城壁のために100個は残さないといけない。


 次の襲撃で100個は手に入るだろう。


「手元にある魔石は20から30個使っても問題は無いだろう」


 仁が状況を鑑みて結論をだす。


「ほっほっほっ、では早速クリエイトアンデッドじゃのう!」


 ケーレスが短縮詠唱で高度なアンデッド化魔法を発動させる。


 仁はその魔法にアイアン・サーガ・オンラインでは無かった幾何学模様が含まれているのを発見した。


『不思議だ。アサンとコレンティーナが何も言わないし、気のせいか?』


 仁は気にしない事にした。


 他に優先すべき事柄が山積みだ。


 魔法エフェクトの違いを検証している余裕は無い。


「壮観だ」


 計20体のスケルトンゴブリンが玉座の間に立つ。


 アサン的には脇を臣下で固めるのが王道だ。


「気味が悪いの間違いじゃねえか?」


 どちらかと言うとアンデッド嫌いのマカンデーヤが突っ込む。


 マカンデーヤは生ある者が切磋琢磨して最強を目指すのが好きだ。


 物言わぬ人形は嫌いだ。


「異臭がしないのが一番よ」


 臭いゴブリンに悩まされたコレンティーナが的外れな事を言う。


 彼女が重視するのは見た目。


 小奇麗で臭く無いゴブリンスケルトンは彼女のお眼鏡に適った。


「今回は俺から試そう」


 ケーレスに使役方法のレクチャーを聞きながら、ゴブリンスケルトンを支配下に置こうとする仁。


「駄目ですのう」


 結果は脈無し。


 考証事なら我慢強いケーレスすら匙を投げる程だ。


「仕方がない。使役出来ないと分かった事が大事だ」


 仁は前向きに捉えた。


 余裕がある内に試せた。


 使役出来ないなら、それを前提に策を考えるだけ。


「こいつら使ってもつまらないだけだぜ」


 マカンデーヤがゴブリンスケルトンの頭を叩く。


「スケルトンは頭を潰すと壊れるのよ!」


 コレンティーナの指摘は間に合わなかった。


 頭蓋骨陥没でスケルトンゴブリンが消滅した。


「魔石を無駄にするな!」


 アサンが怒る。


「弱すぎるのがいけねえんだ!」


「私の術に不備があると言うのかのう?」


 怒り返すマカンデーヤにブチ切れるケーレス。


 まさしく一触即発。


「落ち着け! 検証中に事故はつきものだ」


 仁がなんとか場を治める。


『困った。ちょっと本気を出すだけで城を粉砕出来るのに沸点が低い』


 アサン達が室内で喧嘩するだけでテネブリスアニマ崩壊の危機だ。


 最弱の仁など余波で消滅する。


『やはり遠征こそ正義!』


 ゴブリン達に犠牲になって貰う。


 それしか無い。


「陛下、私なら六体まで同時に使役出来ますわ」


 喧噪を回避し、仁に褒められる努力をしていたコレンティーナ。


「六体か。中々だ」


「本来はもう少し知能のある者を使役しますのに」


 コレンティーナは魅了で心まで壊した者か高位のアンデッドを使役していた。


 彼らは基本的な命令さえ出せば、的確に行動した。


 戦闘能力も高かった。


 ゴブリンスケルトンの様に付きっ切りで命令しないといけない事は無かった。


「いずれコレンティーナに見合う者を使役出来る様にする。当面はそれで頼む」


「もちろんですわ、陛下」


 仁とコレンティーナがイチャイチャしている間にアサンとケーレスも検証を終えていた。


「陛下、19体は余裕で使役出来ます。恐らく100体ほどが限界でしょう」


「千でも万でも使役出来ますのう」


 アサンは100体までは大丈夫と自己申告する。


 ケーレスには上限が無いみたいだ。


 アサンが使役するゴブリンスケルトンは動きが良く、集団戦闘を熟せた。


『アサンの種族とロードの特性で軍団指揮にボーナスがあるのか?』


 仁はアサンのゴブリンスケルトンを見ながら考えた。


『ケーレスは数頼みで高度な機動は無理か』


 アサンのスケルトンの動きを見た後だとケーレスのスケルトンの動きが鈍く見えた。


 使役数が少ないコレンティーナより劣るのは少々意外だった。


 種族と特性の差が如実に出た。


 アイアン・サーガ・オンラインではアサン、ケーレス、コレンティーナの使役結果にそれほど差は無かった。


 使役対象が高位アンデッドだったのもあるのかもしれない。


 それでもアンデッドゴブリンでここまで差が如実に表れるとは仁は思っていなかった。


『ランク2のモンスターから取れる魔石で検証したいな』


 仁は更なる検証を心の中で決定した。


「アサンとケーレスは20体ずつ、コレンティーナは六体のゴブリンスケルトンを率いよ」


「「はっ!」」


 仁の宣言にマカンデーヤ以外が頷く。


「マカンデーヤ、ゴブリンの集落を一つ潰してこい」


「応よ!」


 待ってました、と言わんばかりにマカンデーヤが大声を上げる。


「アサンとケーレスも一緒に行け。とにかく戦利品を持ち帰れ」


「お任せください」


「ほっほっほっ、今回は手数が多い分、探し物も捗るのう」


 仁は三人が出撃するのを見送った。


「少し休むから、後は任せる」


「ええ、もちろんですわ陛下」


 コレンティーナと二人きりはリスクがあったが、戦略上は最善だ。


 コレンティーナは仕事には真面目に取り組む。


 護衛任務中に朝駆けは仕掛けないだろう。


 そして仁はやっとしばしの休息を取ることが出来た。

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