そんなことよりラーメンが食べたい
大会当日。
地区予選の一回戦で何故か解説実況がいる疑問はさておき、実況のアナウンスがこだます。
「おーっと愛古学院またしてもどんどん抜かれてます、芝目を読むのは任せろと言っていた園芸部でディフェンダーの緑山選手は足が追い付いていません」
「し、芝目は見えてるのに!」
緑山は悔しそうに芝生をむしった。
「あー放送部でディフェンダーの赤城選手転びました!」
「じ、実況させてくれるっていうから来たのに」
赤城はぶつぶつと文句を垂れながら倒れこむ。
「あ、帰宅部でディフェンダーの黄島選手いません、ばっくれました! そして亜小夢高校チャンス、手先の器用さなら右に出るものはいないという手芸部でキーパーの黒川選手との一対一だ! おーっとシュートだー」
「ギャーーーー突き指した突き指した! 俺の黄金の指が! これじゃもう針もてないよー」
黒川の検討虚しく、ボールはゴールネットに突き刺さる。
「ゴーール! ボールは黒川選手に接触した後ゴールに突き刺さりました。37対0です。一体どうしたんでしょうかね強豪の愛古学院は、チームはほとんど助っ人で11人ぴったりしかいません、キャプテンも不在です。そして前半で、ミッドフィルダーである、書道部の山吹選手と茶道部の青田選手が捻挫のため退場、抜群の演技でファールをもぎ取ると豪語していた、演劇部でミッドフィルダーの白木選手はリアルに骨を折り退場し、黄島選手もばっくれたので現在は7人しかいません。ん? プログラミング部でフォワードの茶谷選手と情報処理部でフォワードの桃井選手が何やら揉めているぞ」
「いや若林君のが上だろ」
「いーや三角飛びがある分、若島津君でござる」
ござるじゃねえよ!何の話してんだカス共!
「おっと愛古学院の攻撃だ、おっ唯一のサッカー部である蒼木選手ドリブルでどんどんあがっていく、そしてセンタリングだー! 今試合初めて良いアシストが入りました! さあ誰が合わせるんだ!おーーっとゲーム愛好会でフォワードの金田選手が飛んだ! 飛んだぞ! 豚が飛んだぞ! 飛べない豚はただの豚ということかーー! いや、距離がまったく合ってなかったーーー!」
「お、おおおかしいな。う、ウイニングイレブンではう、ううまくいったのに」
「おーーっとここで試合終了!!」
負けた37対0で俺達は負けたんだ。
ボロ負けだったけれど、そこに悔しさは無かった。なぜなら死力は尽くしたからだ。
フィールドに降り注ぐ陽光が、芝生を濡らす汗に反射して、まるで宝石のように煌めいていた。
そして俺は目の前に在る輝きの余韻に身を委ねながら、清々しい心である一つの事を決意する。
「島袋……殺す」
完