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異世界に転生した私は猫である。  作者: 草川斜辺


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何でも屋シイラ その2

ダンジョンの中のキャンプは、今では3層と5層だけではなく8層にも作られている。

新たに見つかった洞窟を訪れる人間が増えたことから、そこにつながる洞窟にキャンプが作られたのだ。以前ここに来た際には、荷物置き場と地面にそのまま寝る場所のような感じだったが、5層のキャンプよりも規模が大きくなり建物も作られている。建物といっても洞窟の中なので天井はなく壁で囲んだだけだが、食堂や店もできていてにぎわっている。


今回はこの8層のキャンプを宿泊場所にして、3日間カーラを手伝うことになっている。

人が多く一人分のベッドしか借りられなかったとのことなので、私は猫の姿でカーラと同じベッドを使うことになった。猫なら宿泊費は必要ないのだ。3段ベッドが並ぶ狭い部屋で、ここは人間の女だけが利用しているようだ。当然だが、猫の姿の私はここでも人気だ。


「8層まで来るのは初めてなんですけど、人が多くて助かりましたね」

荷物を下ろしたカーラがいう。以前なら8層に来るまでも大サソリとかトカゲの相手をする必要があったのだが、いくつものパーティーと一緒にここまでやってきたので何もする必要はなかった。


「後は、シイラさんが横穴に入っている間が心配ですが...」

私は護衛の役目もあるが、今回は横穴に入って薬草やキノコを採取するので、その間に何か襲ってきてもすぐには対処できない。


「夕食の時間まで、近くを見に行きましょうか」

白兎亭を出たのは朝食の後すぐだが8層までは遠い。

「みゃあ」

そうだな。


「ここから縦穴のある洞窟に入るんですね」

この前に来た時よりも入口が大きくなっている。以前は人間は這ってはいる必要があったが、今ではかがんで歩いて行ける大きさだ。それに前は下ってから登る必要があったが、平らになっている。下るところを埋めてまっすぐ穴を掘ったのだろう。


「わあ、広いですね」

縦穴のある広い洞窟に出る。ここにも資材置き場やキャンプが作られている。このあたりは3層のキャンプよりも大きくなっているようだ。

「あれが縦穴ですかー」

カーラが走り出すのでついていく。

縦穴にかけられていた橋も作り直されている。

「へー、深いですねー」

穴をのぞき込むカーラ。


それからも興味深そうにあたりを歩き回るカーラ。ついて回るのも無駄な気がしたので、縦穴を囲む柵の上からカーラを眺めることにする。呼ばれたら近くに行けばいいだろう。

しばらくすると、私の近くに戻ってきた。

「明日はあの洞窟に行きましょう」

カーラが指さす。


それからしばらくしてキャンプに戻る。

夕食の後、明日の採取について打ち合わせをすることになったので、人間の姿に変身し服を着る。


「採取したいのはこれらです」

カーラが紙を広げる。薬草、キノコ、(こけ)、結晶、トカゲ、の絵が描かれている。

「トカゲも捕まえるのか?」

「いえ。トカゲは罠を持ってきましたから、これで捕まえます」

そういうと鞄から金属の棒でできた板状のものを取り出すと、四角い形に組み立てる。

「ここに餌を入れておくと、ここから入ってくるんです。一度はいると出れないんです」

箱の一部が動くようになっていて、そこからトカゲが入るということか。

「小さいトカゲのようだな」

「はい。このくらいです」

人差し指と親指で大きさを示すカーラ。

「ダンジョンの深いところにいるんですけど、8層あたりにもいるそうですから」

「見たことがある。襲ってくることがないので相手にしたことはないが」

虫とか小さなトカゲはよく見かける。


「トカゲで何をするのだ?」

「乾燥させたり黒焼きにして使うんです」

まるで野菜のような扱いだな。トカゲも気の毒だ。

「トカゲはいろんな魔法薬を作るのに使えるんですよ」

楽しそうに話すカーラ。


「採取するキノコとか薬草だが、どれも似た形なので見分けがつかないのだが」

紙に描かれた絵も、どれもよく似ている。

「あ、とりあえずは見つけたのを捕ってきてもらって私が確認します」

そういうことなら問題なさそうだ。


「明日は、水脈のある洞窟に向かいます」

「水脈?」

聞いたことのない言葉だ。


「はい。あ、私、水属性の魔法使いなんです」

魔法使いには属性があるということだったな。ベルナは火属性だ。

「水の属性は何ができるのだ?」

杖から水を拭きだしたりするのだろうか。そうなら近寄るのはやめておこう。

「まず、水脈というのは地下を流れる水のことです」

「水が地下を流れる?」

「はい。井戸はその水をくみ上げるための穴ですね」

なるほど。

「わたしは、地下水がどう流れているかわかるんです」

そんなことがわかるのか。

「薬草とか苔とかキノコが育つには水が必要ですから」

片っ端から横穴に入って調べるよりは効率的だな。


「後は水を操って動かすことができるんですけど、私の魔法力は弱いので薬の調合で器の中の液体をかき回すとかくらいとかしかできないんです」

ベルナのような見習いということか。

「短時間ならもうちょっと多い量の水を操ったりはできるんですけどね」

表情が少し明るくなる。

「それと、私の作る薬は評判はいいんですよ」

ちょっと自慢げな感じだ。


「ダンジョンで採取できる薬草とかはいつも買ってたんですけど、自分で取ってみようと思ったんです」

採取するのは私だが。

「魔法力が弱くて魔物とかの相手はできないので、こんな深いところまで来たことなかったんですけど」

これまで3層のキャンプまでしか来たことがなく、それも薬草とかを買い取るためだということだったな。


「魔法力が弱いと、パーティーにも入れてもらえなくて...」

そういうと下を向く。

魔法使いで魔法力が弱いというのは、剣士で剣が下手というようなものか。そんな人間をパーティーにいれたくないというのはわかる気がする。


「護衛の人を雇うお金もなくて...」

更に下を向くカーラ。ほとんど真下を見ている。

「私は安く雇えたのか?」

アリナさんに限ってそれはなさそうに思えるが。

「いえ、意外と高かったんです」

アリナさんは上機嫌だったのはそのためか。


「お金は大丈夫なのか?」

気になったので聞いてみる。

「あまり大丈夫ではないんですけど、横穴って誰も手を付けてませんから、シイラさんならいい薬草とか色々採取できると思ったんです」

ちょっと表情が明るくなるカーラ。

「お薬がたくさん作れたり、珍しい魔法薬がつくれれば高く売れますからね!」

そういうことなら期待に応えないとな。



翌日、キャンプで朝食をとった後、出発する。

横穴に入るには猫の姿の方が動きやすいのだが、薬草とかを採取するには手でつかむ必要があるので人間の姿に変身している。

警備の役割もあるので剣と鎧を持ってきているが、横穴は狭くて長い剣は使えないので短い剣だけを持って入る。鎧も膝とか肘、肩を守るものだけを付けることにした。

長い剣は横穴の入口のところに置いておくことにする。私が横穴に入っている間に魔物とかがカーラに向かってきた場合、助けに向かう際に手にできるようにしておくのだ。


しばらく洞窟を進む。こっちの方に来るのは初めてだが、分岐が多いのだな。

「こっちですね」

カーラが示す方に進んでいく。

水脈のある方に進んでいるということだが、他の人間があまり選択しない方を選んでいるように見える。

人通りの多い洞窟は松明がところどころ置かれているが、明かりはカーラが持つ松明だけになっている。


時々出てくる大ムカデを退治しつつ進んでいると、カーラが立ち止まる。

「まずは、この横穴がよさそうです」

そういうとカーラは背負っていた荷物を地面に降ろし、中から大きな袋を取り出している。採取したものを入れる袋だろう。

カーラが松明で横穴を照らす。


「この奥に水脈があるんです」

見ると、横穴から水が流れてきている。


「水は苦手なのだが」

「え?」

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