エピローグ あの世にて
青い空に白い雲。漣の音が浜辺を満たす風光明媚な浜辺の姿が目の前にある。
ここは全ての魂が帰る世界。いわゆるあの世。そして、この浜辺は私が居を構えるあの世の一画だ。ここで私は彼を待っている。最愛のあの人を、待っている。
人間の魂は死後、思い出深い光景の中で暮らすのが、あの世の習わしらしい。あの世の全体像なんて気にもしなかったけれど、こちらの世界も現世も、あまり変わり映えがしないのが正直な感想だ。
人もいて、建物もあって、そこにあの世ならではの暮らしがある。例えば、肉体を持たない魂の状態なので、食事を摂る必要はないし、あの世は物質ではなく精神の世界だから、望んだものはすぐに具現化される。超便利。
おまけに、現世のように生きる為に働く必要もないので、こちらでは何をしているかというと、特段やることがなければ自由気ままな生活を送ることができる。
今の私もその口だ。縁結びの大神様のお手伝いをしつつ、こうして海を眺めては、祈りを捧げる暮らしをしている。何を祈るかといえば、それは私の最愛の彼がこちらの世界に一日でも慣れることを祈っている。
現世とあの世では世界の在り方がだいぶ違うので、大半の魂が戸惑い、あの世での生活に慣れるだけでも長い時を要することが多く、最近は特にそうらしい。
というのも、大抵の人間は人間は、死ねばそれで終わりと思い込んでいる人がほとんどだ。だから死んでこちらに来ると、大いに戸惑い混乱する魂が多くて、それが今ではあの世の社会問題になっているというのだから驚きだ。
幸い、私の彼は余命生活の中であの世の存在を知り、こちらの世界には割とスムーズに帰って来れたらしい。それでも、私と彼があの世に一緒にいられるというのに、会う許可が降りない。縁結びの大神様に固く禁じられていたからだ。
理由はいたってシンプルで、こちらの世界に慣れて生活が落ち着く前に私達を会わせると、彼の魂が私に依存し、歪む可能性があったからだ。
私に縁結びの大神様がいてくれるように、彼にも神様がついて、あの世での生活の仕方を学ぶ間、私はひたすら祈念した。その甲斐あってか、ようやく私と彼は会う許可が降り、この浜辺で彼を待っている。
「ようやくあなたの願いも成就するわね」
「えぇ。ずっとこの日を待ち望んでいました」
「あなたをずっと見守っていた身として、私も嬉しく思います」
「大神様、私と彼はこれで本当に結ばれるのでしょうか。私はもう二度と彼と離れたくはありません」
「もう、あなたたちを分つものは、何も存在しないのです。姫子よ、彼と永遠に愛し合いなさい。ほら、あの男が参りましたよ。行ってあげてやりなさい」
遠くで手を振る男性の姿が見える。見間違うことなどない。私の最愛の人、今そちらに行きます。
私は砂浜を駆け、彼の元へと走って行く。
押しては返す白波は太陽を反射し、私達を明るく照らし包んでいく。




