潜水艦麦畑
「そんなことより、潜水艦に引っ越したってことは、今まで巡回していたポイントにも行けなくなるってことよね? 食糧はどうするの? ずっと海鮮ってわけにもいかないでしょう」
エレノアが心配そうに言ってくる。
確かにそうだ。度々浮上して物資を確保する必要がある。だが海図もないし、どこで浮上すればいいのかも分からない。かといって島を探して洋上航海なんてすれば、皇国の艦隊に見つかって面倒なことになる。
「そうだ! 家庭菜園を作るのはどうだ? ポイントCの高原で、穀物の種は確保してあるし」
「土はどうするの?」
「そこはお任せください!」
セレスティアが得意げに名乗り出た。
「土壌作りも、巌の聖女たる私の権能の範囲内です!」
そうなのか。なんとなく岩や石と土は別物のようなイメージだったが。かなり万能なスキルだな。
「なにか金属塊はありませんか?」
「そうだな……非時回廊に収納されてるか確認してみるよ」
傭兵時代に接収した鉄製兵器があったかもしれない。
「クロードもだが、セレスティアもなかなかにチートだな」
フレアは呆れつつも感心している。
そりゃあルーライ教会のトップだし、それくらいはできても不思議ではないけどな。
「ほら、こんなのがあった」
潜水艦の二階部分は広めのスペースになっていたので、俺は昔に鹵獲した砲台を取り出した。
「これくらいの鉄塊があればなんとかなるか?」
「十分です! これなら分解して土に変えることができます!」
もはや奇蹟の領域だな。聖女だから当たり前なのかもしれないが、何でもありだな。
「【母なる大地の骨よ。あなたは神の肉である。この地に豊饒を】」
セレスティアは合掌し、そんな厳かな詠唱を口にする。
途端に砲台は光に包まれ、耕作済みの土が顕現した。事前に囲っておいた木枠の中に、土はすっぽりと収まった。便利すぎる能力だな。
「どうです? これこそが巌の聖女の本領です! 皆平伏なさい!」
またしてもセレスティアが暴走モードに入りかけているので、俺はスルーした。また艦上鬼ごっこのときのようになられても困るからな。
「よーし、小麦の種を蒔くかー」
「あぁっ、無視しないでください!」
エレノアやフレアの手も借りて種を蒔き終えると、瞬時に小麦は育ち、立派に実った。
「さすがは豊穣の加護……」
「すごいな」
家庭菜園ならぬ潜水艦麦畑が瞬時に完成してしまった。これで俺たちは、当面の食糧には困らなそうだ。




