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生ける生邪と屍と  作者: 碧兎


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♤ 大阪特区防衛戦 終息

餓者髑髏を倒した。

屍災害から特区が設立されて以降で、ここまでの被害をもたらした非常事態に一応の幕引きとなる。


しかし、屍自体はまだ存在している。

今も、俺達の存在を感知した奴らは近寄ってきている。

屍の圧力が弱まってきたとは言え、消耗しきった俺達には十分な脅威といえる。


「メイ、エイ。急いで戻るぞ!」

「「はい!」」

返事はしっかりしているが、明らかに2人の疲労度が見て取れる。


「殿(しんがり)を務める。身体強化はできるか?」

「なんとか。でもシンさんも武器が…。」

「無いなら無いなりに戦える。先に行くんだ!」

「わかりました!」

エイをメイが引っ張っていく。


それを見送り、足止めに呪術を放つ。


「土相。反壁(そりかべ)。」

屍の進行方向を遮るように、残っているビルとビルを塞ぐ形で壁を巻き上げる。

少しの足止めにはなる。


しかし、屍の気配は多くはないとはいえ、様々な方向からしている。

いちいち相手にしていては、囲まれかねない。


自身も身体強化をして駆け出す。


双子たちは防壁までは後わずかか。


背後では屍が壁を乗り越えて着地する音が聞こえる。

急がないとな。


すると、破壊された防壁の亀裂から人影が現れる。

サラだ。


『真!はやくー。』

サラは銃をバレットから20式小銃へ持ち替え、前線まで上がってくれていた。


タン!タン!タタン!


的確に、防壁に近づいてくる屍に銃撃を加えていくサラ。

これなら迎撃に時間を割かなくて済む。


『サラ。助かる。』

『防壁内は北と南からの救援が来たよ。結界も復旧しから急いで。』

結界の復旧は朗報だ。


その朗報を聞いて、一瞬気を抜いてしまった。

その瞬間を狙ったタイミングで『影鰐』が背後から大口を開く。

気づいて被害を抑えるために、防御術式を展開しようとして、


目映い閃光が横から『影鰐』を飲み込む。


閃光を放った本人は、特区に来る時に擱座していたFFタンクだった。

意外な救いの手に真は困惑した。


      ♠


小夜子は断続的に聞こえる轟音と振動に身体を震わせる。

サラから預かったペンダントを握りしめる。


シェルターには多くの人が避難しており、中には小さな子どもも多い。

堅牢性を重視したシェルターの照明は薄暗い。


誰しもが不安そうな表情を浮かべ、事態の行く末を待つしか無い。


真もサラも気負った様子は見られなかった。

彼らなら大丈夫。

今の自分に出来ることがないのがもどかしい。


ふと、壁際にある端末が目に入る。

埃を被り、使われなくなって久しいようだ。


かつての自分の記憶が起動スイッチを押させる。

立ち上がったOSは見慣れたものだった。


少しでも外の状況を知るために、端末を調べていく。


PCはそもそもWANには繋がっていなかった。セキュリティーもない。

調べるとこれは、大阪特区という巨大なクローズドネットワークには接続された端末だった。


端末ごとに閲覧や操作には別途権限が必要なようだが、外部カメラ程度ならアクセスできそうだ。

騒動は西側だったはず。


西側のカメラはこれか。

農耕地エリアの監視カメラ。

そこに映るのは土煙と時折、閃光が見えるだけ。真やサラの姿は到底見つけようがない。


他には何かないのか?

端末情報をスクロールしていくと、…このローカルIPには見覚えがある。

私が開発していた思考戦車のものだ。

ローカルで繋がっているのなら接続出来るかもしれない。


この時代はネットワークセキュリティという概念が薄いみたいだ。

無理もない。人類の生存戦争の前には、身内同士の戦争なんぞ起こしている場合ではない。


思い出した記憶の中にある、思考戦車のバックドアを試してみる。すんなりと接続ができた。

開発期間が無かったとは言え、不用心な…。助かるけど。


監視カメラから防壁外の戦闘に移行しつつあるらしいことはわかったので、特区に来る途中にあった個体の機体カメラを借りる。


併せて機体の状態のチェックもだ。

戦車自体の損傷は軽微だが、動力が起動しない。


これは…エーテルリアクター?

なんかファンタジーな名称が出てきた。


すると、機体のカメラに反応がある。視界を拡大。

駆けていく2人の姿と、あれは…サラだ!

良かった!無事なようだ。


すぐに真もやってきた。

屍を迎撃しながら、撤退の殿をしている。


不意に真の背後の影が不自然に盛り上がる。

それは、一瞬で巨大な口となって真に噛みつこうと覆いかぶさっていく。

まずい、助けなくては。


それは反射だった。私の思考がそのまま反映したかのように思考戦車は残存エネルギーをもって、真に襲いかかろうとしていた影に光線を放った。


      ♠


「ふぇ~…、今のみた?」

「ああ…。」

「FFタンクまだ動くんだねー。」


サラと合流し、結界内に入り振り返る。


「ともあれ、事件は終了かな?鴉にはもう大物みたいなのは映ってないしねー。」

「ああ、あれ以上は来ないだろう。霊子濃度も下がってきてるしな。」


「「シンさん!サラさん!ありがとうございました!」」

メイとエイが近づいてきた。疲労困憊といった感じだが、しっかりとお礼を言ってくる。


「気にしないでくれ。」

「そうそう。あたしは家を守っただけだし!」

サラがいつもの調子で笑う。


「…だそうだ。俺達にも守る理由がある。君たちに立場があるのと同じだ。結界は復旧したし。大型怪異は討伐済み。事態は終息と見ていいか?」

「はい。陰陽寮を代表して謝辞を!」

「さっきも言っただろう、お互い様だ。」


サラを伴い、帰ろうとすると、

「あの、シンさん。」

エイに呼び止められる。


「ん?なんだ?」

「…いえ…。また会えますか?」

「そうだな。まだしばらくは特区にいることになりそうだからな。」

「では、次の機会に…お願いします。」




サラと2人になり、帰路につく。

「真。さっきのフラグってやつだよ?あたしの直感がそう言ってる。」

「…はぁ。サラの勘は当たるからなぁ。そう言えば、刀壊れちまったなぁ…。」



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