第1話 西暦2124年12月6日
『君たちに目を通してほしい事
一、我々の世界について
我々の世界は西暦2024年12月29日まで星に愛された人間、人間に愛されたアンドロイド、夜空に愛された吸血鬼、天に愛された天使が暮らす世界であったが、当該の日付の深夜2時35分58秒に不幸な死を遂げた者たちから生まれる魂からなる“死霊”という化け物により一変。死霊は人間を襲い、一年間で人類の総人口は八十億人から七億人まで減少(現在はその七億人から一億人も増加し、八億人になっている)。人類は死霊と戦いながら立て直して行き、むしろ死霊登場前よりも発展した“天国都市”を七個も作り上げた。
二、再確認してほしいこと
一つ目で世界中の者が知っていることを書いたが、その意味は改めて死霊がどれだけ忌まわしい存在であることと、人類なら諦めばいくらでも立ち上がれるということを再確認してほしかったからである。
三、今回の依頼について
さて、本題の依頼についてだが、死霊の強さを分かりやすくするための階級があるが、階級が高く強い順番から死階、上階、中級、下級となっている中で今回の依頼で倒してほしい大規模な集団を形成している死霊三百体は十二体が中階、それ以外が低階となっており、死級と上級は居ない。中階はヨルル、サキ、ブラッド、リッジの四名に三体ずつ倒してもらう。低階はそれぞれが臨機応変に倒すように。
では諸君の健闘を祈る』
通知が左手の薬指の指輪に来たので、指輪をコツンと叩き、文章を宙に表示し、目を通したものの今更な事しか書いていないので、悪い意味で驚いた。
「……」
あの、依頼主はできるタイプの人間だと思ったが違うのだろうか?
まあ、そんなことは置いておいて。
「……寒い」
目に痛くないように作られた優しい光が看板等に使われた人口四千万人の天国都市、時汐の夜風を浴びつつ、敵の観察ができそうだと思って、なんとなく登ったビル群の中で最も高いビルのヘリポートにて少女が佇む。
少女はヨルルという名で身長は161センチメートル、青色の髪を左横に束ねたサイドテール、青色の眠そうな丸い瞳、スレンダーな体で服はトップスは黒いパーカー、ボトムスは黒いミニスカート、創作物に出てくるお姫様を連想させる美しさと可憐さを持つ17才。
そして、まるで生き血を吸うための犬歯も特徴的。
「……」
登らなければよかった。
なんて思う中、ふと空腹感がやって来た。
「……ご飯」
ヨルルは右手の薬指に着けているルビー付きの指輪に『ひらけ』と思いを込める。
すると指輪はヨルルの指から勝手に離れて、宙に浮き砕ける。
その指輪が砕けた場所から鉄とかでできているわけではない機械の内部を思わせる見た目が特徴的なヨルルの身長より少し長い大鎌と大鎌と同じような見た目の二丁拳銃……と血液が入った細長いガラス瓶の三種類の物が現れて宙に浮遊。
ヨルルは血液瓶を手に取り、血液瓶の蓋をしているコルクを右手で抜き、中の血液を飲み干す。
「……おいしい」
基本血というのはステーキのような旨味と肉々しい味わいながらさっぱりしていて、中毒性が強い。
──なにより吸血鬼が生き続けるには必要である
……まあ、もしも誰かがこのヨルルの犬歯や行動を近くで見ていたらもう分かるだろうが、彼女は吸血鬼である。
この世の中では吸血鬼の存在は別に珍しい訳ではない。
人間が五億人、天使が二億人、吸血鬼が一億人とアンドロイドが十億体。
子供が思い浮かべそうな大きすぎる数字だが、一億人も地球に居れば本当に珍しくない。
と、深夜一時半に遅めの夕食を終えていたら通知音と音声が腕輪から鳴り響く。
『敵の死霊が時汐に侵入しました! 総員、戦闘態勢に入ってください!!』
──どうやら仕事の時間のようだ。
ヨルルは宙に浮く二丁拳銃をボトムスの両側に着けたホルダーにしまい、大鎌を右手で握る。




