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幸福な結婚とは? 22 ジェニファー&ジョージ&アベル


「――素晴らしい。よくここまで倒れずにこの部屋までたどり着いたな。

流石レイモンドが息子として迎い入れたいと望んだだけある」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ジェニ―、無事だったんだね。良かった…」


アベルはゆっくりと部屋の中に入ってきた。


(アベル…!)

別れて半日しか経っていないのにあまりに色んな事が有り過ぎて、

すごく長い間逢えていないような気がする。


(あら?)

でも、心なしか顔色が悪いような気がする。


(どうかしたのかしら?)


大公閣下は、部屋に入って来るアベルを見るなりわざとらしく拍手をすると

上記のような事をアベルへ言ったのだ。


そういえばアベルの顔色が悪いだけでなく、口元に手を当てて

立っているのがやっとというような感じにも見える。


――といきなり片膝をついてガクンとしゃがみこんだ。


「アベ…」

駆け寄ろうとすると、下をむいたまま

「ダメだ、来ちゃいけない!」

アベルが叫んだ。


その途端、アベルを囲んでぱあっと光が周囲を走った。



光は複雑な文様を描き、部屋の中を走っていく。


それは徐々に部屋の外へも広がって、その反対に

アベルの周囲を小さな円形の魔法陣が浮かびあがった。


アベルの周囲の魔法陣は細かく複雑な文字だ。


ゆっくりだったらわたしなら読めそうなのに、

高速で回転している為、読み取れない。


それがアベルを中心軸にするかのように

幾つもの魔法陣(しかも、全て模様が違う)に

分裂した。


そしてそれは次第に、アベルを中心にした天体の惑星や彗星の軌道のように、

高速で回転する魔法陣帯がアベルを包みこむ球体のような形になったのだった。


-----------------------------


「アベル!」

「来ないで ジェニー!結界だ!君も巻き込まれ…」


完全に球体になった魔法陣の檻は、アベルの姿を覆い隠しその声も聞こえなくなってしまった。


「ひ…酷いわ!アベルの結界を解いてください!」


わたしが大公閣下へと詰め寄ると、閣下は満足そうにふふと笑った。


「私自身は何もしていない。

この結界は義兄上から教わったものだがね。


この結界自体は侵入者の魔力を吸って造り上げられる。


だからチンケな魔力の持ち主では結界を造り上げられるまで力は持たない。

大抵が魔力を吸われ過ぎて、廊下の途中で意識を失う。

こんな風に結界を自分で完成させられる者は、ほとんどいないのだよ」


そう言ってアベルを包み込んだ球体の結界へ近づくと、

「見たまえ…なんて美しいんだ」


完璧な結界だ、とうっとりしていた。


わたしは唖然として大公閣下を見つめた。


(間違いない。デルヴォー帝国の血筋を引く奴は皆…)


みんなサイコパスだわ。



「まあまあ結界は完成したのだが…どうかね? 考えは変わったか?」

おもむろに大公閣下はわたしの方を向いて質問した。


「ど…どうかね?とは…一体どういう意味ですか?」

「聡明な君とした事が察しが悪いな。彼を助けたいかね?」


わたしはイヤな予感しかしなかったが一応訊いてみた。


「…交換条件ですか?」

「そうだ。この結界を解除したやってもいい。君がうちのヒューゴに嫁いで来るならな」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー




わたしは思わず絶句してしまった。


こんな強引な仲人が他にいるだろうか?


しかも当人らの意思は完全に無視だ。


お前の恋人をどうにでもできるのだから、大人しく自分の息子と結婚しろだなんて脅し方がまるっきり映画のマフィアかや●ざだ。


「そんな…」

と言いかけて、もう一度アベルが閉じ込められている方を見た。


完全に閉じてしまっている球体の結界からはもうアベルの声も姿も確認する事が出来ない。


(どうしよう…このままアベルが出て来れなくなったら…)


万が一の時の恐怖がわたしの脳裏を過る。


半年前以上でもあの場面に簡単にフラッシュバックするのだ。


ロンデリルギゼが運んできてくれたが、すでに倒れて冷たくなっているアベルの身体。

(…もうアベルに二度と会えない)


心臓がぎゅっと掴まれたように苦しくて、涙が滲んで視界が見えなくなってしまった。


気分が悪くて、貧血が起こったように立っていられなくなりそうだ。



その時わたしは胸に入れておいたキーパーの小鳥が、可愛らしい声で鳴いたのを聞いた気がした。



お待たせしました。


読んでいただきありがとうございます。

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