幸せな結婚とは? 20 アベル=バランタイン
短くてごめんなさい…。
ルートヴィッヒは単騎で公道をパネライ邸に向かっていた。
(ーー昔を思い出すな)
20代は常にこのように単騎でどこへでも、もしくは自走してでも何処へでも行く事が出来た。
デルヴォー帝国にからめ捕られてからは単独行動が制限された。
ーー自分自身がえらんだ道ではあったが。
(孫のルートヴィッヒに皇位を譲った時点で儂はもう一度自由になろうーー)
解き放たれた矢の様に馬を駆るルートヴィッヒ皇帝はすでにデルヴォー帝国より旅立つ決意を固めていた。
事情の知らない者は、白っぽいブロンドの長身の壮年の男性が白銀の矢のように馬駆けて行くように見えたに違いない。
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鳳凰と共にアベルは大公閣下の邸宅前正門に降り立った。
正門はいかにも厳しく頑丈なつくりのものだった。
そこから高い壁の塀が大公宅をぐるりと取り囲んでいる。
(貴族宅というよりも…要塞のようだな)
アベルは周りを見渡して思った。
簡単に侵入できない様になっている。
大公宅の正門に立つ衛兵は、いきなり
空から出現した燃え上がる炎より
プラチナブロンドの髪を揺らしながら、
オレンジ色の瞳の美貌の青年が現れた事に
躊躇したが、直ぐに
「ーーここには入る事は出来ないぞ」
と脅す様に青年に呼びかけた。
彼は直ぐにアベル=バランタイン小公爵と気が付かないようだった。
(ーーまあ仕方がない)
「僕はアベル=バランタイン。
…まさかバランタイン公爵の名前は
聞き覚えはあるだろうな?」
アベルが名前を名乗ると、衛兵は顔色を変えて
「少々お待ちくださいませ…」
と奥へ消えた。
しばらくすると戻ってきたが、衛兵は言いにくそうに
「申し訳ありません…。大公閣下は本日非常にお忙しい為、お約束していない方はどなたも会う事は出来ない。
門をくぐらせないでくれと…」
と下を向いてしまった。
「そうか。分かった。」
アベルは穏やかに微笑むと、
そのまま再度オレンジ色の炎に包まれた。
更に炎は尾の長い大きな鳥の形に変わっていった。
衛兵は目を見張った。
大きな炎の鳥は口を開いて言った。
「ーーでは、門はくぐらず行くとしよう」
シュルシュルとオレンジ色の炎が長い舌を伸ばす様に大公宅の正門に巻きつくと、あっという間に門は劫火に包まれた。
真っ黒に燃え上がっていく正門を、衛兵は口を半開きにして見ているしかなかった。
門を燃やし尽くすと、人間に戻ったアベルは真っ黒になったそれを思い切り蹴り飛ばした。
鈍い音がした後、門の燃え滓は大公宅に向かってゆっくりと倒れていった。
「大公閣下には…客は門はくぐらず、踏み越えたと伝えたまえ」
アベルは、倒れた門を見つめる衛兵へにっこりと笑って言った。
そしてそのまま大公宅の庭へ足を踏み入れた。
大公宅のキーパーが一斉に鳴り響いた。
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お待たせしました。
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