47話
あっという間に日は流れ大会当日。
「さあっ!きたわよっ!」
「あぁ…、きちまいましたか…」
「今日はさすがに人が多いな」
三者三様の面持ちでクーガー達は大会の会場用に整備された訓練場へとやって来た。
「今回私達が出るのは中級ね」
「順調にレベルが上がったのはいいが、おかげでその中じゃ俺たちが一番レベルが低いってのはちょいとキツいよなぁ」
今回の大会ではあまりレベル差がつかないようにある程度のレベル毎に分けられている。
レベル1から5が初級。6から10が中級、それより上が上級となっている。
クーガー達は日頃から戦闘系のクエストをこなした成果で全員レベルは6を迎えていた。
「だからこそ燃えるのよ、自分より強い人に挑むのは」
「さいですか。お前はどうなんよ?」
「別に魔物を相手にするわけじゃないからな。その分気は楽だ」
「それもそうか」
話しながらも三人は受付へと向かい手続きをすませる。
そして他の出場者達も受付を済ませ、組み合わせが発表された。
大会の試合形式はトーナメント方式。そしてクーガー達が参加する中級は16名が出場している。つまり優勝するには四度勝たなければならない。
「見事にバラけたわね」
ルセアの言葉にクーガーは頷いた。トーナメント表を見ると全員が順当に勝ち進めば二回戦でクーガーとソーマが。そしてどちらかが勝ち進むと決勝でルセアと当たる組み合わせになっていた。
「うへぇ、俺の相手はゴルさんかぁ。ゴリッゴリのパワータイプか、レベルの差は確かあまりなかったからなんとかなればいいけど…」
「私は…、アスターさんね。普段は剣を使ってたと思うから、今回は何を使ってくるのかしら」
各々が自身の対戦相手を確認する。普段の交流からある程度の情報はあるが、今回は得意武器以外のみの戦い故に相手がどのようにくるのか、自分はどう立ち回るのか考えていく。
「俺の相手は、ウード、か」
クーガーの対戦相手はウードと呼ばれる人物。記憶が正しければレベルは9もあり、冒険者歴もそこそこに長いベテランだ。
「クーガーの相手はウードさん?初戦から強敵ね」
「中級の中じゃ確実に上から数えたほうが早いくらいの実力者だもんな。はぁ…、もし俺が勝ったら次はこいつかウードさんと当たるのかよぉ、つらいわぁ」
「相手が誰であれ勝ち進めばいつか当たる。それが早いか遅いかだけの差だろ」
「さすがだよ、負けるとは微塵も思っちゃいねぇんだな」
「やるからには勝つだけだ」
「そりゃそうだ。それじゃあそろそろ会場に入るとしますか」
そういって会場に入る三人。そこでは普段の訓練場は簡易ながらも整備され闘技場のようになっていた。
「すごい気合いの入りようね」
「こういうのは形がしっかりしてれば気持ちも上がるからな。ヨダ爺とかが先頭に立って指揮執ってたらしいぜ」
真ん中には石がキレイに積まれ周りより一段高くなっていた。間違いなくあそこが試合の舞台だろう。その周りには軽く柵によって仕切りがされていた。
「感心してるのはいいがそろそろ始まるみたいだぞ」
クーガーがそう言って周囲を見渡すとシグマが入って来たのが見えた。
「おう!全員集まったな!それじゃこれから開催を宣言する!」
主催者であるギルドマスターの登場により賑やかだった雰囲気が落ち着き、全員シグマに耳を傾ける。
「長ったらしい挨拶なんざ、俺もお前らも嫌だろうからチャチャっと済ますぞ!腕試しの大会とは言え、勝ちゃあ賞金も商品も出るし、少なからず箔もつく。やるからには全力を出しきってくれ!楽しみにしてるぜ!それじゃあおっ始めるぞ!」
瞬間、ワアッー!と歓声が挙がる。
さすがギルドマスターといったところか、場の雰囲気を上げるのはお手のものらしい。
「すごい熱気ね。ああっ!早く戦いたいっ!!」
「お前の気持ちはわかるがちょいとステイ。最初は初級の大会からでしょーが」
ウズウズしているルセアをなだめながら観客席の方へと移動する三人。階級は三つあるがどれも同時進行とはいかない。初級から順々に階級が上がっていく。試合までの気持ちは切らさないように、しかし折角の催しを楽しむ気持ちを持ちながら三人は試合を見守った。
「そこまで!!」
審判の声により試合は終わりを告げる。
一人は膝を着き、かたやもう一人は両手を空に掲げ喜びを表している。この瞬間優勝者が決まった。
「あー惜しかったなライアンさん。もう少しってとこだったんだけど」
「そうね。でもあの隙を逃さなかったルドも良かったんじゃないかしら」
「確かにあの攻防で流れが変わったからな」
語るクーガー達の視線の先では両者が互いの健闘を讃えて握手を交わしていた。
ギルドの中では歴の長く。初級の参加者の中では経験豊富なライアンと若く正面から押し通す戦いをするルド。
二人の戦いは決勝まで勝ち上がった勢いそのまま仕掛けたルドにライアンが押しきられた形で決着がついた。
「しかしルドの奴も強くなったよな。まさかライアンさんに勝つとは思わなかったからな」
「同期としては嬉しいものね」
二人の同期らしいルドは観客に手を振っていき、ソーマを見つけると拳を突きだすと、それを受けたソーマも拳を突きだす。
「珍しいな、お前がそんなことをやるなんて」
「アイツとは付き合いが長いんだ。それこそギルドに入る前からな。だから、まぁ、その…仲が良いヤツが活躍するのは嬉しいものなんだよ」
それでも少しらしくなかったかと気恥ずかしいのか頬を掻くソーマ。
「さあ次は私達ね!早く行きましょう!」
この熱気に当てられたのか最早押さえられないようにルセアは駆ける。
「まったくアイツは、早く行ったってその分早く試合が始まる訳じゃないだろうに」
やれやれと言った感じでルセアに続くソーマ、だがその足取りは早く、その顔は大会が始まる前と比べやる気に満ちていた。
「ルセアの事を言えないぞ」
「そこは雰囲気的に黙って欲しかったんですけどねぇ!」