36話
「さて、とりあえず全員紹介が済んだことだしこの後は?」
「ウォレスから南西にある村の近くに"魔族"が出るという情報が伝えられた」
「ふーん。じゃあ今から出発ってことでいいのね?」
それじゃあ荷物を纏めないと、と椅子から立ち上がったシータをライアットは制す。
「いや。今回は俺達にとって初めての討伐だ。そのためローランドの民に康一の存在を改めて知らせるために、町の者達に出陣を見送らせるらしい」
康一が召喚されてから、存在は話しとして伝わっているがその姿を見たものは城の者に限られていた。そのためローランドの国民達の中には、康一という存在を疑う者もいた。だからこそその疑惑や国民の不安を取り払うために討伐へと向かう姿を人々に見送らせることにしたのだ。
「姿をお見せになることで人々の気持ちを安心し、少しでも前を向いてくれる活力になるかもしれませんね」
素晴らしい提案だと、リフルは微笑む。
「それまでまだ少し時間はある。互いのステータスの確認でもしておくぞ」
そう言ってライアットは左手首に付けている白色の投影石が嵌め込まれた腕輪に魔力を込める。
名前 ライアット Lv25
種族 ハーフエルフ
〈能力〉
筋力値 33
器用値 26
機敏値 18
生命力 31
魔力値 30
〈スキル〉
武器 剣
魔法 火属性 光属性
補助 指揮 連携 詠唱短縮 精神耐性
映し出されたライアットのステータス。ローランド王国随一の騎士に相応しく高い能力値が記されている。
しかしそれよりも康一が目を引かれたのは種族の欄。
「ハーフ、エルフ?」
「ん?そうか、康一にはまだ話していなかったか。丁度いい」
そう言うとライアットは兜を外す。すると人間よりも長い耳が表れた。
「この通り俺はエルフの血を半分引いているんだ」
「ふぁぁ……」
初めて見るエルフの耳に驚きから何とも言えないリアクションを取る康一。リフルも少し驚き軽く目を見開いていた。
「えっ?まさか今まで教えてなかったの?」
「丁度いい機会がなかったからな」
シータはふーん、と返すとじゃあ次は私ねと右耳に着けたイヤーカフに魔力を込める。
名前 シータ Lv17
種族 人間
〈能力〉
筋力値 12
器用値 19
機敏値 21
生命力 16
魔力値 32
〈スキル〉
武器 短剣 杖
魔法 火属性 風属性 土属性
補助 詠唱短縮 混乱耐性 精神耐性
魔法が得意と宣言するだけあって高い魔力値を持つシータのステータス。反面筋力値と生命力は低い辺り純粋に後方からの戦闘スタイルなのだろう。
「ま、私はこんなもんね。それじゃあお次は――」
「それでは私が」
リフルはそう言うと首から掛けてある青色の投影石が嵌め込まれた十字架を握る。
名前 リフル Lv15
種族 人間
〈能力〉
筋力値 14
器用値 17
機敏値 17
生命力 19
魔力値 25
〈スキル〉
武器 杖
魔法 光属性
補助 詠唱短縮 精神耐性
こちらもシータと似たように魔力値が高く、それに比べて他の値が低いものとなっている。
「私はシータさんのように攻撃系の魔法は得意ではありませんが、治癒の魔法ならばお任せください」
「教会から遣わされる程だからな、期待する」
ライアットの言葉にええ、是非にと返すリフル。
そして皆の視線が康一へと移る。
「あっ、はい。それじゃあ、いきますっ」
そして右手首に着けたブレスレットに魔力を込める。
名前 桜井康一 Lv1
種族 人間
〈能力〉
筋力値 4(+20)
器用値 6(+20)
機敏値 4(+17)
生命力 3(+20)
魔力値 3(+15)
〈スキル〉
武器 剣 槍
魔法 火属性 風属性
補助 成長補正 主神の加護
「え、ええと……」
康一のステータスをまじまじと見つめる三人。一度見たことのあるライアットでさえじっくりと見ている。
康一のステータスは一言で言えば全体的に低い値だ。しかし本来ならその後に存在しない数値がある。それが補助スキルの方に記されている主神の加護というスキルのものなのだとライアット達は納得する。
残りの成長補正というのも今まで見聞きしたこともないが言葉の通りに受けとるならレベルが上がった時に作用するものではとライアットは考える。
「なるほどねぇ。別に疑ってた訳じゃないけど、こんなの見せられちゃ信じない訳にはいかないわよね。本当スゴいわコレ」
「主神の加護…、本当に康一さんはミトス様のご加護をお受けになられているのですね」
「しかしこの加護だけで全てがまかり通るわけでもない。お前自身も強くならねばな」
康一のステータスを初めて見た二人は驚き。二度目となったライアットはこれに頼りきることなく自身も高めるようにと忠告をした。
「――はい。今は全然頼りにならないかもしれません。だけど必ず皆を助けられる人になります!!」
真っ直ぐに、ただただ真っ直ぐに答える康一。
頭では分かっている。これから先に待ち受けるのはゲームの画面や本の中に描かれた物語と同じではないと。
傷付けば痛いし、下手をすればそのまま死んでしまう非常な現実。転生したとはいえまだ14年しか生きていない康一が恐怖を覚えない訳がない。
だからこそ恐怖に気持ちが折れないように、人々の期待に潰れないように、真っ直ぐに自分の気持ちを、自分の意志を、決意を待たせて言葉にする事で立たせるのだ。
「――よし。ならばそろそろ時間だ。行くぞ」
扉を開け部屋を出ていく。
行こう。人々の願いを叶えるという、自分の願いを叶えに。




