第79話 伝説の“ヘンタイ”
『『『きゃぁああーーーーーーーーーーっっ!!!』』』
『ガルゥッ!? な、何事だ!?』
集落に響き渡った、女たちの悲鳴。我は急いで皮鎧を着込むと、悲鳴の発生源へと走った。発生源は水浴び場。ええい、やむを得ぬ!
『我だ、クーガーだ! 緊急事態故、入らせてもらうぞ!』
そこには体を隠して顔を見合わせているピューマンが三人。うっ!? ブ、ブチもいるではないか!
『ブチ、一体なにごとどぅべっ!?』
『み、見ないでリーダーッ! やあッ!』
衝撃と共に、視界が回転する。ああ、我、ぶん殴られて空を舞っているのか…。
そ、そんなぁ、理不尽な…。
『がるぅ、うぅ…。』
『ね、ねぇブチ、やりすぎじゃ…。』
『や、やばい。ごめんねリーダー。ついやっちゃった☆』
やっちゃった☆ じゃすまないダメージなんだが…。
腫れる頬を抑えながら、なんとか立ち上がる。
『うぅ…で、何が起きたのだ…?』
『そ、それが、急にニンゲンの男が現れたんだけど…。』
『なに? モンゴローじゃないニンゲンか!?』
こくり、と頷く三人。
ど、どういうことだ。モンゴロー以外のニンゲンであれば、気配、魔力、そして臭いで気づけるはず。しかし誰も気づかなかった。いったい、どんな方法で侵入した…?
『き、急に現れたんです。ニンゲンの、オスだと思います。でもなんだかしわしわで、多分老人?』
『しかも、赤いパンツしか着てなくて。突然現れたかと思ったら、目の前で歌いながら踊り出して…。』
『え、えぇ…? それで、そいつはどうしたのだ?』
『あたしが爪で攻撃したんです。でも、気持ち悪い動きでクネクネと躱されて…。リーダー、私本気で攻撃をしたんですよ? でも、一度も攻撃は当たらなかった。』
ブチの攻撃が当たらないとは。ブチは我の隊でも3本の指に入る速度を誇る。それを、踊りながら躱した…? にわかには信じがたいことだ。それに、冷静に考えて意味が分からない。一体、なんの目的が…?
『気づいたら、いなくなっていて。ひょひょひょ! みたいな笑い声だけが響いてきたんです。』
『…“ヤツ”だ。』
『父上!?』
背後から父上がやってきた。オババもいる。なんだ? 二人とも、苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
『…まさか、再び現れるとはのう。』
『父上、オババ、そのニンゲンをご存じなのですか?』
二人はゆっくりと頷いた。父上が口を開く。
『クーガーよ。ヘンタイ、という言葉を知っているな?』
『え、えぇ。確か、ニンゲンの中でも特におかしなやつのことを表す言葉だと。』
頷く父上。
『ずいぶん昔のことだ。ある日突然、集落にニンゲンが現れた。そのニンゲンは夜な夜な、ピューマンの女の前に裸で現れては笑いながら踊ったのだ。ニンゲンの言葉はわからぬ。わからぬが、ヤツは繰り返していた。“ヘンタイ”という言葉を。』
『…まさか。』
『そうだ。ピューマンに伝わる怪異、“ヘンタイ”。ヤツが再び、現れたのだ。』
○
【配信開始】
「“ヘンタイ”紳士淑女の諸君! オイラ、パンイチじーさんじゃよぉ~~~~~ん!」
:始まった
:始まってしまった
:お前いくつだよ
:こんなに抜けないアダルト配信チャンネルはない
:でも見てしまうんだよなぁ
オイラはパンイチじーさん。配信者じゃ。R18系じゃ。そうじゃないと、毎回動画が消されて収益化を止められてしまうでな!
「さーて、今回もピューマンの集落にやってきておるぞ~! いやぁ、前回のピューマンたちの反応。最高じゃったな! 久しぶりに、脊髄を駆け抜けるようなエクスタシーを感じてしまったぞい!」
:最悪だよ
:痴漢師たち
:誰がお前の感じた快楽の詳細知りたいねん
:最もエロティックな方法でイかせていただきます
:ピューマンがほんまにかわいそう
:早く逮捕されてしまえ
:なんでこいつ捕まってないんや
:モンスター相手に露出狂してるだけやからなぁ
:だけ、とは()
そう、オイラの配信内容。それは、“モンスターのメスにパンイチ姿を見せつける”というものじゃ! 人間相手にしたら即逮捕じゃが、モンスターのメス相手であれば問題無い。
日本の法律はオイラを止められぬ。オイラは文字通り、法律の穴を突いて気持ちよくなっておる! 法を犯さずに、犯しているのじゃ! オイラの勝ちじゃ!(?)
「ひょーひょっひょっひょっひょっひょ!!!!」
:!?
:急に笑い出したぞ
:ついに狂ったか
:狂ってるのはデフォ
:痴呆だろ
:もう怖いよ
:妖怪だろ
:ぬらりひょん
:むらりひょん
:モンスターのメスに生まれなくてよかった
「ふぅ、失礼。さーて、今日は一段と気合いを入れてきたぞい。なんと今日のパンツは金ぴかじゃ! 視聴者もゴールデンビキニとか好きじゃろ?」
:最悪
:お前じゃない
:ゴールデンビキニは好きだけど、ゴールデンパンイチじーさんは好きじゃない
:ほんまにお呼びじゃない
:いらん配慮
:もっこり具合がほんまに最悪
「ふむ、そうか。では次回は星条旗柄のパンツにしようかの! さて、今夜もピューマンのメスたちにオイラのBodyを見せつけて行くぞ~。やはり人型に近いモンスターの方が興奮するぞい。ワイルドホーンの時はオスの群れに突進されまくって死にかけるわ、メスは見向きもしないわで最悪じゃったからな。」
:国交断絶
:可哀想なアメリカ
:自業自得
:ほんまによく死なないよな
:こんなのを黎明期から続けてるんだろ?
:真の化け物
:そろそろ痛い目みてほしい
「はい、進入成功したぞ~い。オイラの盗撮、忍び歩き、抜き足差し足、隠密スキルはカンストしておるでな。まぁ見つかることはあるまいて。」
ぬるぬるっと。ローション相撲のように(?)なめらかな動きで集落内を移動する。よし、目標地点の水浴び場についたぞい!
ガサガサッ!
うっひょー! 来た来た、来たぞよ~~~~~!
さぁてさてさて、お立ち会い! 見さらせピューマンたちよ! これがオイラの金パンツじゃあ~~~~~~!
「ぼろろんびよぉ~~~~~~ん! ヘンタイパンイチじーさんの、オナぁ~~りぐほぉえっ!?」
絡みつく触手のような何か。万力のように締め上げられ、身動きが取れぬっ! な、何事じゃ! オイラ、触手プレイはあまり得意では――
「何を、しているんですか?」
底冷えするような冷たい声。若い男の、人間の声が響いた。
作者のおしり炒飯と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
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また、本作カクヨム様にて、先行公開しております。
続きが気になりましたら、ぜひ下記よりご覧ください。
https://kakuyomu.jp/works/822139844400383614




