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最後の冬休み編(4)

 直恵と桜が入ったカフェは、いかにも女性ウケする可愛らしい雰囲気のカフェだった。オーガニック地元野菜を使った健康志向のカフェのようだった。


 店のメニューを見て、ベジタリアン向けのカフェだと気づいたが、今更出て行く雰囲気でもない。


 店の客もよく見ると独特なオーラな者が多い。化粧が薄く、服も麻や絹といった素材のものを着ている。女性客ばかりだが、客がくっつけている悪霊に直恵は顔をしかめた。全員スピリチュアルの悪霊をくっつけている。よく見るとパワーストーンを全員つけていた。そこに悪霊がたかっていて、気持ちが悪い。


「どうしたん、直恵。なんかいた?」

「この店、スピリチュアルの悪霊くっつけてる人多いわ。なんなの……」


 別荘でに生活が幸せすぎた。久々に悪霊を見て、直恵は気分は良くは無い。


「帰る?」

「まあ、せっかく来たし、食べるだけ食べましょう」


 桜は帰る事を提案してきたが、ここまで来て帰るのも中途半端だ。とりあえず玄米ビーガン定食を頼んだ。桜はビーガン丼を頼む。ビーガン丼は一見唐揚げ丼だが、全部大豆ミートで作られているらしい。


 保存料、着色料は使用されておらず、白米や砂糖も使ってないらしい。ぜんぶ無添加野菜を使っている。ここまでは別に問題ないのだが、店主はヨガに傾倒しているようで、宇宙意識や波動が上がる云々スピリチュアル風思想も書いてあった。道理でスピリチュアルの悪霊をつけた客が多いわけだ。


 オシャレなカフェの外観では全く気づかなかった。直恵は悪霊は見えるわけだが、壁越しの悪霊までは感知できない。すっかり騙された気分だが、玄米や野菜サラダ、大豆ミートのハムカツはそこそこ美味しかった。料理の彩りも綺麗で桜は写真をとってSNSに上げていた。


「意外と美味しい。大豆ミートとは思えないね」


 桜は唐揚げ丼を食べ、ちゃっと感動したような表情を浮かべていた。


「そうね。思想はスピリチュアルだけど、料理は美味しいわ」


 料理と一緒についてきた玄米茶も香ばしくて美味しかった。おそらく無農薬のこだわりの一品だろう。美味しい料理を出しているからこそ、スピリチュアル思想にいってるのが、ちょっと残念に思い始めた。


 まあ、今日は食前の祈りを五分ぐらい長めにやったから、美味しく感じたのかもしれないが。この食前の祈りでもスピリチュアルの悪霊のいくつかはザワザワとしはじめ、びびって逃げていくものもいた。


「あれ? あそこの客……」


 桜は、店の入り口を指差し、小声で直恵に話しかけてきた。

 新たに店に入ってきた客は、見覚えがあった。


「誰だっけ?」


 直恵は見覚えがあるが、思い出せなかった。


「幸田ちゃんのお母さんよ。覚えてない?」

「あ! そういえば!」


 桜の話を聞いてようやく思い出した。幸田の悪霊騒ぎの時に出会った碧子だった。


 相変わらず悪魔崇拝の悪霊をくっつけている。なぜ、このに?と思ったが、グループ客のテーブルに座った。


「なんか聞こえる?」

「あー、スピリチュアルがどうとか言ってる。これからセミナー出るとか」


 桜は耳をそば立てていたので、何を話しているもか聞いてみた。碧子は会話や食事の夢中で、直恵達には全く気づいていなかったが。


 この様子では幸田は碧子と会わない方が良いだろう。相変わらずスピリチュアルにハマっているようだし、前あった時と違う貧困や鬱の悪霊もくっつけていた。これは、そろそろ発狂するんじゃないだろうか?と思うぐらい数々の悪霊をくっつけていた。


 ただ、碧子達は会話が弾み楽しそうだった。やっぱり同じ悪霊をくっつけているもの同士、気が合うようだ。引き寄せの法則では、同じ周波数のものが引き寄せると言われているが、本当が同じ悪霊をつけたものが引き合っているだけだと思う。


「この辺りにスピリチュアルのセミナーやってる施設なんてある?」

「わかんない。直恵、スマホで調べられない?」


 という事でネットで検索してみた。せっかくプチ天国のような別荘生活が壊された気分になる。


 さっきカルトの施設だと思っていたあの黒い建物が、スピリチュアルリーダーの事務所兼家だった。


「しかもこのスピリチュアルけっこうガチだわ。儀式やってる……」


 さらに詳しく検索し、このスピリチュアルリーダー・東大寺塔子は、ガッツリ悪魔崇拝者だった。見た目は可愛い雰囲気のアラフォー女だが、ブログではアレイスタークロウリーの魔術を実践しているとある。クロウリーは有名なサタニストだった。人気ライトノベルのモデルにもなっている男で、彼の言っている事を実践するとしたら、かなり本格的な悪魔崇拝を行う事になるだろう。


「せっかくのプチ天国生活が……」


 直恵はため息をつきそうになる。


「どうするの? 直恵」

「こんな近場にスピリチュアル施設があると知らなかったわー。たぶん地域の悪霊を呼ぶ儀式をやってるわ。少し地域の悪霊祓いしましょう」

「やったー! お嬢様はエクソシストの活動できるね!」


 桜はエクソシスト出来ると喜んでいたが、直恵は憂鬱だ。まさか休暇中にこんな事をするとは思わなかった。


 このカフェのレジで会計した時、商店街の福引の補助券を貰ったが、それよりも悪霊祓いだ。


「よーし、頑張って悪霊祓うぞ!」


 桜は呑気な声を上げながら、はしゃいでいたが、直恵の本音としては「面倒臭い」だった。それでもやっぱり悪霊は放っておけない。早く解決したかった。

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