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お嬢様はエクソシスト  作者: 地野千塩


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最後の冬休み編(3)

 桜の別荘は、見た目はさほど大きくなかったが、中は庶民の家とはやっぱり違った。


 大きなサウナもあったし、個々の部屋のベッドも大きくフワフワだった。


 直恵はサウナに初めて入ったわけだが、身体がポカポカになりすっかりハマってしまった。この別荘周辺には悪霊のいないし、暇があれば直也達と讃美歌を歌って祈っていた。


 直恵にとってはプチ天国のような場所だった。地元の採れたて野菜で作られたサタダやキッシュも美味しい。歩美が作ってくれた料理もほっぺが溶けるほど絶品だった。


 直恵にとってはプチ天国だったが、桜は飽き始めていた。


 という事で30日、別荘周辺にある観光地に遊びに行くことになった。


 ちょっとした商店街もあり、年末の福引もやっているらしい。別荘地から徒歩1キロ程度と少し離れていたが、桜が行きたがっていたので付き合う事になった。


 羊野や直也は讃美歌の新曲を作ったり、歩美は編み物やジャム作りに忙しいらしい。夕方には帰るという約束で送り出してくれた。


 別荘地から田舎道を直恵と桜は二人で歩いていた。


「ちょっと、最近直恵の肌艶良すぎじゃない?」


 桜は、直恵のツヤツヤばスッピンのほっぺを見て、大袈裟に驚いた。


「だってここ数日、讃美歌を歌うのが幸せすぎて……。サウナやご飯も素敵だし。まさにプチ天国よ……」


 うっとりとした表情で語る直恵に桜はプッと吹き出していた。


「直恵ってもっとクールな人と思ってたよ。まさか泣きながら讃美歌歌うとは思わなかった」


 昨日の夜、みんなで讃美歌歌った時はあまりにも幸せすぎた。感極まり「神様、嬉しいです! 直恵はとても幸せです!」と号泣した。今思うと、聖霊をそばに感じ、少し酔った感じになっていたのかもしれないが。


「そう? 私は意外と情熱派だよ。サウナも大好きだしね」

「あはは。なんか直恵のそういう面もいいよね。最初はもっととっつきにくい人かと思ってたわ。もっとそういう面出しても良くない?」

「そうかな〜。意外と私は見かけほどクールでもないのかもしれない」


 讃美歌を歌っていると、胸に情熱みたいなものも宿り、少し身体も熱くなった。


「あれ? あの施設なに?」


 そんな話をして、少し気分が良くなっていた直恵だが、田舎の野菜畑の向こうに黒っぽい壁の施設がみえた。壁だけでなく全体の雰囲気も暗い。久々に悪霊を感じて、直恵は再びクールモードに戻ってしまった。


「さぁ。たぶカルトじゃない? 田舎は多いのよねぇ」

「そっか。悪霊はウヨウヨしてたけぢ、カルトならしょうがないわね」


 一瞬、悪霊を祓っても良いかとも考えたが、今は休み中。それにカルトに悪霊は非常にしつこく、悠一も難儀している事があった。ここは無闇矢鱈とほじくり返さず、放置する事に決めた。


 こうして直恵と桜は、お土産屋の集まる商店街の方へ向かった。


 寒い時期ではあったし、新型インフルエンザの影響かあまり人は賑わっていない。それどころか新型インフルエンザの影響なのか土産物がセール中の店が多かった。


「ちょっと、直恵。お饅頭二個買うと10%オフだって。買う?」

「そうねぇ。教会や真澄先生に配るお土産買おうか」


 今のご時世、お土産屋の経営は苦しいかもしれないが、貧困の悪霊などは土産ものの店主にもついていないようだ。直恵はホッとし、桜と二人でキャッキャと騒ぎながら、土産物を選んだ。


「そういえばお土産物って添加物が多いって聞いた事あるけど、大丈夫?」


 桜は饅頭のパッケージを見ながら心配そうに呟いた。


「まあ、ものすごく気にしている人には添加物入りのお土産は控えた方がいいかもね。ただ、聖書にも書いてあるけど、市場にあるものは安心して食べて大丈夫」

「そういえば、あったけど。うちの教会ではベジタリアンの人も結構いるね」


 食いしん坊の桜は意味がわからないという風の肩をすくめた。


「ベジタリアンしろなんて聖書には書いてないわねぇ。感謝して食べればお肉も魚も問題ないはずだけど。特に牛や鮭なんて人間に食べて貰おうという神様の意図しか感じないんだけど」

「そっか〜。なんか他の宗教だと食べ物のルール厳しいけど、うちらはだいぶ緩くてラッキーだね」


 桜は何か頭の中で食べ物を思い浮かべていたのか、だらけた笑みをみせた。


「でも、こういうのは偶像礼拝になる可能性はあるわね」


 だらけた笑みを浮かべる桜とは対照的に、直恵はちょっと厳しい顔であるお土産を指差した。


 この地域のゆるキャラ・龍神くんのイラストがついたクッキーのお土産はちょっと微妙だ。龍神くんのイラストは可愛いらしいドラゴンだったが、いかにも悪霊を呼びそうな雰囲気を漂わせていた。


 案の定、このお土産の低級悪霊がワラワラ寄ってきたので、小声で祓って置いた。日本はこう言った一見可愛い偶像が多いのが困りものだ。多くのゆるキャラは無害なものが多いが、龍神くんに限っては禍々しい雰囲気が出ていた。


「本当、日本はどこも偶像ねぇ」

「仕方ないよ、直恵。お土産買ったら、お昼食べるのにカフェでも行かない?」


 ため息をつく直恵に励ますように桜が言い、お土産屋を出たら近くのカフェに行く事にした。

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