自己紹介 & 魔法のことばの作り方
このエッセイの筆者紹介をしていなかったので、本題に入る前にまずはそちらから書いていきます。
私は高専と呼ばれる少し特殊な教育機関を卒業しています。高専とは理系の高校+短大のようなところで、5年生であり早いうちから専門的な教育をするといった特色があります。
卒業後は大学へ編入し、学部では環境化学を学びました。
大学院では少し方向性が変わり、生命科学系の研究室に所属したのち、今は化学メーカーで働いています。
興味のある話としては、専攻していた化学系の話題はもちろんですが、元々地理歴史公民といった社会科学系の科目も大好物だったため、そちらの話も投稿できそうなものがあれば紹介していきたいと思います。
タグに「言語」というものを入れていますが、これは私が最近etymologyに凝っているためです。
etymologyというのは語源学のことで、特に英語の語源についてその由来、関わりのある単語をネットの波に乗りながら調べるということをしています。
ということで、ネタ帳に投稿する一つ目のネタは言語に関することにしたいと思います。
いわゆる"なろう"小説(面倒なので次回からダブルコーテーションは省略します)によくある設定として、主人公があるひ突然異世界に転生させられて~といったシチュエーションがあります。
その際、大きく2つのパターンとして
1. 神に与えられた不思議な力によって相手の話す言語が自然と理解できる
2. 自助努力によりその地域の言語を習得する
といったものがあります。
実のところ、2パターン挙げてみたもののそれ自体はこれからの話に全く関係がありません。
いずれにせよ、物語を進行していくうえで異言語であることは作者、読者双方にとって非常に面倒なので、登場人物の会話は一般に日本語で描かれます。
そして、異世界ファンタジーによくある剣と魔法の世界において、魔法の構成語として良く採用されるのが「英語」なのです。
例えば火を出すのにファイアと唱えてみたり、火球にファイアボールなどとルビを振ってみたりといった具合です。
知ってのとおり、「魔法のことば」が英語であることに対しては賛否両論あり、批判される場合の主な意見としては「異世界という世界観に合わない」や「発想が安直で、英語はチープに聞こえる」といったものがあります。
私の立場としては英語を魔法のことばに使うことには賛成です。
魔法のことばとはおそらく日常的に使用される言語とは異なるものであり、そういった点で詠唱が日本語で行われるのは好ましくないと私は考えます。
となると日本語以外の言語を当てるか、新言語の創造になりますが、完全な新言語を創造するというのは難しい話で、本職の言語学者がテーマにするほどの大事業です。
また、日常的に使用されるものではないとはいえ、それほど馴染みがないという訳でもないはずなので、そういった点で英語というのが程よいのではないかと思っています。
それでも英語はなんとなく嫌だという方、ちょっと凝った魔法の名前を付けたいという方には使いたい意味を持つ英語の語源を調べてみるということをお勧めします。
英語の元になった言語というとラテン語を思い浮かべる方が多いかと思いますが、実は英語というのは土着の民族の話していた言語やローマ統治期のラテン語、ヴァイキング侵攻時のノルド語、ノルマン制服期のフランス語など実に様々な言語の影響を受けて成り立っている言語なのです。
例えば火を表す語句にしてもfire、flame、blazeなどの対訳がありますが、fireはゲルマン祖語、flameはアングロフランス語、blazeは古英語にそれぞれ由来します。
更にこれらはすべて印欧祖語において火を意味する接頭辞のbhel-からきています。
ちなみに印欧祖語というのはユーラシア大陸で話されている言語のほぼすべての元になったと言われる言語で、英語、フランス語などなどはもちろんのこと、アラビア語やヒンディー語あたりもこの仲間です。
私がおすすめしたいのは、使いたい言葉の印欧祖語を調べ、それを基に独自のことばを作るというものです。
もちろん、魔法のことばに地域性を出したいというのであれば、西洋的な国家にはラテン語を、オリエンタリズムを感じさせる国家ではペルシア語やサンスクリット語を採用するというのも面白い試みだと思います。
ただ単に英語から単語を借りてくるというだけでなく、ひと手間加えることで作品のもつファンタジーな雰囲気を壊さず、かつそれとなく意味の推測できるような言い回しを生み出すことができるのではないでしょうか。




