勇者はやられる22
「朝だ。シー起きるぞ」
レオの声に重い瞼を開ける。
「今何時?」
「丁度3時を回った所だ」
モゾモゾと起き上がりレオを見れば、既に着替えを済ませて立っていた。
「取り敢えず上着だけ着て神殿に行く。着いたら直ぐに御祓の儀式があるから、洗礼が終わってから正式な服を着る」
レオはそう言うと俺の腕を取る。
「日の出前に御祓を終わらせなければならないから行くぞ」
殆どレオにかしずかれる形で部屋を出た。
馬車の中で何とか上着を着て神殿へと向かう。
「神殿の名前は聖カトレア。我がローナル王国随一の神殿だ」
うつらうつらとする意識の中、レオが俺に神殿の話をしている。
「この神殿は魔族以外の種族が洗礼出来る場所でもあり、何人もの人々が一斉に洗礼を受ける事もある。今回は勇者の一人として特別一人だけの洗礼にして貰った。とても名誉な事だからそのつもりで儀式に挑んで貰いたい」
何か気のせいかとても大それた事になっていないか?
神殿にはオズワー家の別邸から馬車で30分程です到着する。
外はまだ薄暗くレオが魔法です炎を出し先導してくれた。
神殿の入口に神兵らしき人が二人立っておりレオを見るや深々と礼をする。
俺はレオの後ろから難なく神殿へと入る事が出来た。
まだ、日の昇らない……と言うよりは、まだ夜の部類だと思う時間故に誰ともすれ違わない。
レオは案内もいないのにスタスタと俺の前を歩く。
神殿の内部はその全てが石で出来ておりひんやりとした空気を醸し出していた。
それが更に神秘的な雰囲気を作り、時間的な要因も影響して粛々とした気持ちにさせられる。
そんな事を思いながらレオの後に続く事5分。
一つの扉の前で止まった。
「ここから儀式が始まる。私はシーの身内として同行する。そして、シーの洗礼の全ての工程の見届け人となる」
レオはそう言いながら扉を開いた。
中に入れば小さな泉があり、泉の奥に更に扉があった。
「先ずはここで御祓をする。着ている服は入口にある篭に全て入れる事になっている」
って……つまり、俺はここでスッポンポンになるって事か?
まさかな……そう思いレオを見れば
「男同士だ、何も恥ずかしい事はないよ」
さらりとにこやかにそう言われてしまう。
「いや……十分恥ずかしいから……」
いや……決して裸になるのが嫌とかではないのだが、少々コンプレックスがあるのだ。
更に何も言わずニコニコするレオに俺は盛大なため息を吐いた。
「男は度胸だ」
小さくそう言うと、意を決して脱ぎ始めた。
もともと寝間着とパンツの上に上着を着ただけだから、直ぐにスッポンポンになる。
「シー……結構大人だな」
レオの言葉に思いっきり苦虫を噛み潰してしまう。
そう、16の俺には妙に多目の下生えがある。
黒々しく生えたそれは結構太い毛根。
ある意味根性ある毛である。
レオの視線が痛くって俺はそそくさと泉に入った。
丁度へその上まで水が来て俺のコンプレックスを隠す。
ナイスな泉だが、めっちゃ冷たい。
プルプルと震えながら泉の中央を横断して行く。
「シー。そのまま奥の扉を潜れば祭壇の泉だ。そこで一人で朝日を待つと神の啓示と加護が授かれる。私はここで待つから、それが終わったらここに戻って来るように」
「判った」
俺は振り返りレオに一礼する。
泉を進めば更に水温が下がる。
「氷狼のブリザードよりは暖かいか」
そう自身を励ましながら奥へと進んだ。
*******
シーの裸を隅々まで確認したが、獣人の証たる兆候は見つけられなかった。
気になる点で言えば陰毛が濃かった事だろうか?
いや……あまり深く考えるのはやめよう。
私が凹む。
こうしてレオはシーリウスの属性を探るのを断念したのだった。
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