勇者はやられる21
レオの話によればアルベルト殿下はレオと同じ年の第一王子なのだそうだ。
神託が降りた日の翌朝には自室から消えていたと言う話だが、王妃の暗躍により表沙汰にはなっていないらしい。
品行方正、文武両道、眉目秀麗。
絵に書いたような王子様だったそうなのだが、そんな王子様は幼い時より手袋を離さなかったらしい。
多分、右手の甲の紋様を隠していたのだろう。
それを偶然幼い日に見てしまったレオは、自分とお揃いだと親近感が沸いたらしい。
そして、そんなアルベルト様は何故か神託が降りた翌日忽然と姿を消していたらしい。
更に言えば前日の夜、自室にアルベルト王子が入ってから誰も外に出る所を見ていないらしいのだ。
廊下で警備していた兵士ですらだ。
そして、極めつけは翌日第三王子の右手の甲に紋様があると王妃が王へ進言。
今までの素行の悪さなど打破出来るだけの口実が「勇者」の名で得られたのだ。
王は魔王討伐後、第三王子を正式に王太子にする事を公言されたと言う。
移動中の馬車の中、チラリと王子を見ればセイを掴まえて「やれ、神殿に聖女が居るのではないか?」とか「勇者はモテるだろう」とかぬかしている。
初見でも思ったが、こいつ本当にどうしようもねぇな。
洗礼を受ける神殿がある所は有名な避暑地らしく、貴族は勿論王族も別邸を持っているらしく、結構な頻度で宴が催されるらしい。
「今夜は私の家が持っている別邸に泊まる予定になっております」
夕方避暑地に着くなりレオが王子にそう切り出す。
「本来なら殿下を歓迎した宴を催したい所でございますが、何分明日の洗礼を控えておりますので、今夜は粗食になります。代わりに明日の夜に盛大な宴を催しますので殿下には寛大な措置を」
レオが慇懃にそう述べればアスベル殿下は大仰に頷く。
「長旅故、今日は明日に備えて各々休もう」
如何にも偉そうに言う殿下。
王子様なのだから確かに偉いのだろうが、今朝の話を思い返すと何やらモヤモヤするものがある。
確かに隣国の王家の血筋ではあるけど……。
「流石は殿下。では、今夜は秘蔵の酒を謹呈致しますのでゆっくりと味わって下さい」
レオは恭しくお辞儀をしながらセイをチラリと見た。
セイもなにやら頷く。
気付かないのはあのぼんくら王子くらい
だ。
その後、公爵家の別邸に着いた俺達は質素な食事を済ませるとそのまま寝室へと流れた。
「明日は3時に起こすから早く寝るように」
扉の前でレオはそう言うと俺の頭を撫でる。
今朝からやけに頭を撫でられているように思うが、何故だろう。
「判った。レオ、色々ありがとう。明日も宜しくな」
そう言って俺に出来る特上の笑みを見せた。
*******
レオはシーリウスの部屋を出るとそのまま自室へと向かった。
扉を開けばセイが人の家の酒を勝手に持ち出している。
「どうだった?シーの方は」
「今朝から頭を撫でているが、拒否反応とかはないな」
「それは上等だな」
大抵の獣族は頭を撫でられるのを嫌うらしい。
但し、相手に心を許していたりすると頭を撫でられるのを嫌う事はないと言う。
つまり、レオはシーリウスが自分にどれだけなついているかを見ていたのだ。
「多分シーは獣人と人間の混血児辺りだろう。魔族やエルフは矜持が高いからな」
セイはそう言うとグラスに酒を注ぐ。
「獣人は基本的に耳や尻尾があるが、人間の血が強いとその特徴が表れない事もあるそうだ」
セイは今酒を注いだグラスをレオに手渡すと、自身のグラスへも酒を注ぐ。
「確かに外見は人間そのもののようだしな、体の方は明日の洗礼で良く確認しておくよ」
洗礼は基本的に裸でやる。
基本的と言うのは、女性は薄い羽織を着るからだ。
「頼んだよレオ。何の獣人かで弱みが違うからね」
そう、どんなに人間の血が濃くても体の何処かに何の獣人かを現す所が存在するらしい。
今回の洗礼はシーリウスの弱点を知る、その為の洗礼なのだ。
「アルベルト殿下の為にもシーの弱点は必要だ」
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