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大会ミーティング

連載再開してから少しづつですけど面白くなってきました。よろしくです^^

サイトと条一郎が自分達のキャンバスを作り終えると山田蛍子先輩を除く夏の全道大会出場予定の部員達が部室に集まっていた。


サイトはキャンバスを自分の机の横のイーゼルに乗せると額の汗を拭った。20号という大きさのキャンバスは近くで見ると壁のように大きい。


夏休みの間、部室に来るたび、こいつと顔を合わせる事になるのか。サイトは生地の凸凹を爪先でなぞりながらそう思った。後ろから松野が話しかけてきた。


「そうだ。サイト、キャンバスにジェッソはもう塗った?」


ジェッソ?サイトが聞き直すと松野は説明した。


「ジェッソを塗ると油絵のノリが良くなるんだよ。キャンバスと絵の具をつなぐ接着剤、ってところかな。先輩達が残していったのがあるからそれ、使いなよ」


それだけ言うと松野は自分の席に戻った。なるほど。サイトはいつか大路地先生が教えてくれた棚からOBが残してくれたジェッソと描かれた


容器を取り出した。松野に使い方を聞くとサイトはジェッソを水で薄め、イエローオーカーという名前の油絵の具で色をつけて筆でキャンバスに


塗りつけ始めた。ジェッソと油絵の具を混ぜる必要は無いが、これから描く絵のイメージを膨らませるために有効だそうだ。大きめの筆で


2回、3回キャンバス全体を黄土色で覆うように筆で塗り終えるとこれからこの上に描かれるであろう大作の下地が出来上がった。


サイトが筆を置くと隣の席で大和と神崎が木のボードに画用紙を貼り付けている。「水彩画を描くにも準備が必要なんだよ」


そういうと神崎は画用紙の隅全体をマスキングテープで止め始めた。大和が水を用意するために水のみ場に向かった。そうか、水彩画も


画用紙に水を馴染ませるために一度画用紙全体を水で塗らす必要があるんだったっけ。サイトはこの間の発表会で自分の絵に施した技法を思い出した。



大和が水彩画用紙に水でハケを塗り終わると12時を告げるチャイムが鳴った。「そろそろ休憩にしようよ」ノマ部長の掛け声で美術部員達は


学校の近所にあるバーガーショップへやって来た。注文を受け取り部員達がテーブルを囲むとサイトが話を切り出した。


「やっと絵を描く下準備が出来たわけだけど、問題は何を描くかだよな。ともちゃんは何を描くか決めた?」


サイトの向かいの席に座った神崎が言う。


「おれは今回も魚の絵を描こうと思う。やっぱり描きなれたモノで勝負するのが一番だからね。」


「へぇ。でも今回は魚一匹だけ描いて終わり、ってわけにはいかないでしょう?」


「うるせぇな!まっつんは何を描くんだよ?」


話に茶々を入れるように絡んできた松野に神崎が言い返す。松野はテーブルの上で手を組んで話し始めた。


「僕、来月で16歳になるんだ。」


「へぇ、おめでと。」


神崎が興味なさそうに口にポテトを運ぶ。


「ありがとう。いや、そうじゃなくて!僕は今回の大会で自画像を描こうと思ってるんだ。15歳の自分を作品として残せるのは今回の大会が最後だからね。そういう意味ではこのタイミングで夏の大会があって本当に良かったと思うよ。うん。」


自分に世界に入り込もうとする松野を挟んでサイトはバニラシェイクを吸っている大和に話を振った。


「大和、お前は何描こうと思ってるんだよ」


サイトの問いかけに大和は「まだ...秘密」といつものようにフフっと笑いながら答えた。あのなぁ、と言わんばかりにサイトは忠告した。


「おまえさぁ、今回の大会は地底人の虐殺とかエイリアンの宇宙戦争とか、そういうグロい絵を描くのは止めてくれよな。おんなじ学校の俺達にまで採点が影響するかもしれないじゃん。」


サイトの話を聞いて大和は「宇宙戦争...いいね、それ...」と言いながらシェイクをかき混ぜながら大和は微笑んだ。ダメだ、こいつ。


テーブルのスミで所在なさそうにジュースをすすっている条一郎の背中を舞先輩が叩いた。


「大丈夫だって、条一郎。大会を通して絵を描いてるうちに絶対上手くなるって。ノマちゃんだって入部したときは酷かったんだから。

『なんなのこれは!まるで小学生の落書きじゃない!』って大路地先生も驚いてたんだから!」


「あー、それは後輩の前で言わない約束だっていったじゃん!」


口を膨らませて怒るノマ部長を見て部員達はケラケラと笑った。へぇ、先輩達にもそんな時代があったんだ。感慨深げに部長を見つめる


サイトに三上先輩が「そういうサイト君は何描くか、決めたの?」と聞いてきた。サイトはうーん、と腕組みをしながら考え込んだ。


サイトは夏休みが始まる当初、ビルや家などの建築物を大会で描こうと思っていた。しかし実際に雨宮家を描いたりしているうちに


予想以上にそれが難しいことだという事を悟った。柱の採寸をひとつ間違えるだけで建物の大きさがずいぶん変わってきてしまうし、


なにより完成から逆算して色を塗り重ねていかないといけないという事が参考書に書かれていたため、最初の油絵に建築物を描くというのは


非常にリスクが高い気がした。サイトはしばしの考案の末、先輩に答えを出した。


「俺、今回の大会は風景画を描こうと思っています。」


「おおー、いいねぇ。自画像に風景画。今年の新入部員は見所がある連中ばっかりだね。これで心置きなく俺達も卒業できるよ。」


そうなんだ。先輩達はみんな3年生なんだ。その事を思うとサイトの胸にこれからの美術部を背負っていかなければならないという


責任感が芽生えた。昼食をとり終え、学校に戻る道でサイトはどんな風景画を描くか、思考をめぐらせた。

今回は会話に重点を置いて書いてみました。サイトがどんな絵を描くか作者も楽しみです^^

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