表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/36

大路地先生のクロッキー講座

部員達は朝食をとり終わると、今日は大路地先生がクロッキーを教えてくれるというので宿泊施設「ひまわり」の会議室へぞろぞろと


移動した。やはりノマ部長は大清水先輩と少し距離を置いているようだった。会話はおろか、ノマ部長は大清水先輩の方すら向こうと


しなかった。サイトは昨日とはまったく違って意気消沈しきった大清水先輩の顔を見て少しかわいそうになったが、合宿という空気に


飲まれて勢いで相手の気持ちも確認せず告白したコイツが悪いのだ、と思うようにした。


部員達が会議室に入るとテーブルの周りにイスが12個並べてあり、テーブルの前でカゴに入った果物をセットしている大路地先生が


こっちを見てにこりとしたが、表情を切り替え部員達全員に聞こえるように言った。


「みなさんおはよう。合宿だからって気が抜けてる生徒が何人かいるようね。そんなことじゃ今年も全道大会までいけないわよ。ノマちゃん!」


大路地先生がいきなり大きな声でノマ部長を名指しで叱りつけたので部員達に緊張が走った。そうだ。俺達は函館までピクニックに来た


わけじゃない。夏の大会で勝ち進んで全国大会に行くためにこの合宿に来たんだ。部員達がこの合宿の意味を再確認するとノマ部長が


みんなを代表して言った。


「大路地先生、たしかに気が抜けていた部分がありました。今日は私達にクロッキーを教えてもらえないでしょうか。よろしくお願いします。」


他の部員達もお願いします!と言い、頭を下げた。その様子を見て大路地先生が口を開いた。


「そうよ。今回のクロッキーで一番必要なものは集中力よ。みなさんが気持ちを入れ替えて真摯な気持ちで絵に向き合えばきっと


素晴らしい絵が出来上がるはず。その気持ちで頑張ってちょうだい。」


先生の言葉を聞いてみんな、はい!わかりました!と大きな声で答えた。すると大路地先生は部員ひとりひとりに座る席を指定した。席は


11人の部員と先生を合わせた12席があり、サイトは時計で言うところの「2時」の位置の席に座るように言われた。部屋に入るとき


先生がいじっていた丸テーブルの上をチラッと見て、今日はこのカゴと果物を描くのか、とサイトは思った。


「足元に気をつけて!今日使う画材が置いてあるから。」


サイトが声に反応してえ、と振り返るとつま先に紙コップのようなものがあたり、中から墨のような液体がこぼれ出して近くにあった


画用紙の上に点々と色がついた。やべぇ。サイトは急いで紙コップをひろい上げ、墨が零れた床をテッシュでふき取った。


「3時」の位置に座った舞先輩が言った。


「サイト君。墨は補充してもらえないから、そのつもりで。今回は少し気合をいれないとマズいみたいね。」


いつもはおちゃらけている舞先輩が口を真一文字に結んでいる。サイトは紙コップの中を確認した。


コップの中には全体の三分の一くらいしか墨が残っていない!やばい、どうする?この量であの絵が描き切れるだろうか?それに画用紙


にはさっきこぼした墨が付いている。サイトはまだ始まってもいないのにこのクロッキー講座において窮地に立たされていた。

いきなりスリリングな展開になってきました。短時間で絵を描くには集中力が大事、集中力のない作者にとっては耳の痛い言葉です^^;

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ