↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/36

サイト、大ピンチ!

大路地先生が「12時」の席に座ると部員達全員の顔を見渡していった。


「いまからテーブルの上の静物画をみなさんと一緒にクロッキー(素描)していきます。時間は、そうね、いま8時半だから9時まで。


それじゃあ、始めるわよ。」


「ちょっ、ちょっと、待ってください。」


神崎が慌てて席を立ち上がって言った。


「いまから始めるクロッキーていうのはこの墨と割り箸の片側だけを使って描かないとダメなんですか?クロッキーをネットで調べたら

鉛筆で人物を書くものだって言われてたんですが、」


「とにかく9時まで絵を描いてちょうだい。話はそれからよ。」


大路地先生が威嚇するように神崎に言ったため、神崎は納得がいかないような顔をしながら席に座った。サイトは足元に置き直した


墨の入った紙コップと割り箸の片方一本を見つめた。この割り箸に墨をつけて画用紙に絵を描くのか。大路地先生がはじめ、と声を


かけてテーブルの上の果物の素描会が始まった。サイトは画用紙の左端から真ん中にいたるまで付着している黒い点を睨みながら墨を


付けた割り箸を画用紙と上に置いた。ん、なんだこれ。筆と違って全然紙に色が付かないぞ。慌てて他の部員達を見渡すと他の1年生部員


達もサイトと同じく苦戦しているようだった。条一郎にいたっては開始5分だというのに「お手上げ」というような態度を見せている。


サイトは隣で絵を描いている大路地先生の動きを確認した。割り箸を絵の対象の果物に向けて画用紙との距離間をはかり、割り箸の角を


使ってすいすいと画用紙の上を黒い線が走っていく。そうか、こうやって絵を描くのか。サイトは見よう見まねで割り箸の角を使い


カゴに乗ったりんごの輪郭を取ろうとした、が、線が太くなったり、細くなったりして安定した色が出せない。やばいやばい、


時計を見るとあと10分しかない。サイトの頬に汗がつたった。部員達は思い思いに中央のテーブルの上の果物を描いていった。




大路地先生のポケットにあったストップウォッチが鳴り、「はい、やめ!」と先生の号令がかかると部員達はみんなふぅーと息を吐き出した。


「いまからみんなが描いた絵を見せ合って、どこを良くしたらいい絵になるか話し合ってちょうだい。10分後にまた新しい画用紙で

再開するわよ。」


先生がそういったため、ノマ部長の号令で部員達はテーブルの周りに集まって30分で描いた絵を提出し始めた。


やはり3年生の絵は過去2年間の経験があるからか、割り箸の角や中央を使ってうまく果物の輪郭やカゴの全体像をとらえていた。


詠進先輩の絵にいたってはちゃんと果物に陰影までついていた。1年生でも松野や大和の絵はうまく特徴を掴んだ絵を描いていた。


大和がサイトが描いた絵をみようとすると、サイトは画用紙を後ろで手を組むように隠した。神崎は今回は割り箸と墨の使い方に戸惑い


あまり上手く線が引けていなかった。条一郎も同じような問題を抱えているような絵だった。


サイトの絵はというと、最悪だった。


全体的に絵の対象をとらえきれていない上に時間がなくて焦ってしまった為、子供が描いたようなぐちゃぐちゃな絵になってしまった。


最初に墨をこぼしてやる気をそがれてしまったと言い訳してもこれはとても人に見せられるレベルではない、と思った。


空気を読まずに三上先輩が「サイト君の絵、見せてよ」と言って来たのでサイトは慌ててこの場を逃げ切る理由を考え始めた。


「ちょっと、俺、トイレにいってきます」とサイトが言おうとすると後ろの方に座っていた大路地先生が言った。


「サイト君。あなたには今回のクロッキーは少し難しすぎたみたいね。次はみんなが描いているのを観察してなさい。それじゃみなさん、画用紙を配るわよ。」


サイトは先生に自分の絵が見られていた事を知ると頭が真っ白になった。俺だけ次は見学かよ。サイトはすこし惨めな気持ちになった。


画用紙を他の部員に配り終わると大路地先生はストップウォッチを持ち


「次は10時までね。はじめ!」と号令をかけた。


今から1時間近く見学するのかよ。サイトは湧き出てくるマイナスの感情を抑えながらイスに深く座り込んだ。

実際のクロッキーとは少し異なります。作者が学生時代に経験した「制限のある状況」でのクロッキー教室を書きたかったのでこういう形になりました。おかげで「集中力」はついた...と思います(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。