不明者との出会い。
これが誰だったか、もしくはヒロインの誰でもなかったのか。それを最後に明かすという方向のほうが面白そうだ。
と煌めく太陽の光が眩しくて、ついつい目を細めてしまう。少し前まではこうして外に出ることも無かったから余計に。波の飛沫が裾にかかる。太陽が露出している青空の下で立ち尽くす僕はこの時、とある島へ向かう船に一人で乗っていた。
それが2日前のこと。
思えばあの頃の僕は未知への高鳴る不安と緊張に押しつぶされた羽虫のようだった。初めての島、何もいない青空に僕は怯えていた。
大勢の人が砂浜に寝そべったり浮き輪に乗って夏を謳歌している中、僕は背中を縮こませていた。自分の意思で家を出て、辺境の離島に行くことを決めたのに、それでは小心者すぎるではないか。乾いた笑い声がする。
今、僕は海岸線を取り囲むように聳える堤防の上に一人で寝そべっていた。ビーチで遊ぶ大勢の島民の笑い声が聞こえる中、僕は玄人の面影を残して一人堤防に佇んでいる。麦わら帽子を額の上に乗せて、潮風を体に受けながら、ただぼーっと時が過ぎるのを感じている。それは存外気持ちが良い。僕の満面の笑みが麦わら帽子の中で飽和していた。
そんな時だった。突然、僕の麦わら帽子が無くなった。その刹那、ギラっと鋭い太陽光線が僕の瞳を焼いた。
その10秒後、汗を垂れ流して目を鋭くさせた僕の前にいたのは、潮風に飛ばされた麦わら帽子ではなく、海鳥の犯行の跡でも無かった。音もない。夏の人の影がそこにはいた。純白のワンピースで美しい肢体を包んでいる女性。夏」そのものが顕現したような佇まいで僕を見下ろすように立っていた。太陽は突然の綿雲によって隠れ、日差しが見違えるほどに弱くなる。夕暮れの空が今だけ現れていた。
その女性が僕の麦わら帽子を掴む腕を大きく旋回させた。反時計回りに綺麗に一周。空間に円を切り取るような彼女の腕の軌道の通りに麦わら帽子もまた動いた。
そして、得体の知れない「夏」そのものによって、僕の麦わら帽子は鮮やかな放物線を描いて、大海原へと消失した。
焦る僕に対して動じない彼女。
それがSUMMERの始まりだった。




