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そのゲームは、切り離すことのできない序曲に過ぎない  作者: 珂珂


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第一卷 第二章 出発前の準備-2

王家おうけ神殿しんでん會議廳かいぎちょううちにて)

「ふぅ~……つかてた、わたしは!」

わたし全身ぜんしんをそのまま会議かいぎつくえうえし、先程さきほどまで威厳いげんある態度たいどよそおっていた自分じぶんが、一瞬いっしゅんけのかわがされた。

「さすが会長かいちょうさま王者おうじゃ風格ふうかくただよっておられましたね!」

緹雅ティアじつにからかうような口調くちょうわたしこえけた。わらいをこらえてはいたが、それはあきらかにわたしにもつたわった。

馬鹿ばかうなよ。あれはただの演技えんぎだ。かれらに気付きづかれないことねがうばかりさ。」

「そうおっしゃいますが、わたしかられば十分じゅうぶん立派りっぱでしたよ。」

いまはとにかく目先めさきこと処理しょりしただけだ。……緹雅ティアなにかんがえはあるか?」

全然ぜんぜんありませーん!」

緹雅ティア返答へんとうじつはやく、その一言ひとこと空気くうき一瞬いっしゅんにしてまずくした。

「おお……そうか……えっ?」


思索しさくしているあいだに、芙莉夏フリシャもどってきた。

芙莉夏フリシャ、そちらの状況じょうきょうはどうだった?」

芙莉夏フリシャもどるのをて、わたしいそいで彼女かのじょ様子ようすたずねた。

予想よそうどおりだ。第九だいきゅう神殿しんでん子供こどもたちはいまにも暴動ぼうどうしかけた。なかにはほかものさがしにくとさわものもいた。老身ろうしん随分ずいぶんほねって、やっと『なだめ』てやったのだ。」

芙莉夏フリシャ口調くちょう陰鬱いんうつひびきをびていた。表情ひょうじょう笑顔えがおであったが、わたしにはそれが善意ぜんいみではないとかんれた。

緹雅ティアでさえ、そのときおもわずんだ。

「うぇ~……あねさまがそんなことうなんて、大事おおごと予兆よちょうにしかおもえないんですけど。」

わたし溜息ためいきき、くびりながらった。

「だからっただろう、こういうこと芙莉夏フリシャにしかつとまらないんだ。我々(われわれ)はよこ見物けんぶつしていればいい。」


「しかし、今後こんご動向どうこうについては、一体いったいどうするのがいのか……汝等なんじらなにかんがえがあるか?」

芙莉夏フリシャ突然とつぜんわれ、緹雅ティアわたしかお見合みあわせ、おもわずわらみをかべた。

「ははは……なるほど、芙莉夏フリシャにもあんいのか?」

「そうだな……はぁ……あたまいたはなしだ。」

芙莉夏フリシャでさえひたいて、困惑こんわくしめした。

ようは、我々(われわれ)にはいま情報じょうほうまったいのだ。そと状況じょうきょうからん。現状げんじょうわたし迪路嘉ディルジャ周囲しゅうい偵察ていさつまかせ、必要ひつようときにはわたし報告ほうこくさせるつもりだ。そして、わたし緹雅ティアそと情報じょうほう収集しゅうしゅうけようとおもう。」

わたし状況じょうきょう簡潔かんけつ整理せいりし、みずからの方針ほうしん緹雅ティア芙莉夏フリシャつたえた。


芙莉夏フリシャ、そなたには第九だいきゅう神殿しんでん管理かんりもあるが、我々(われわれ)とともくつもりか? それとも弗瑟勒斯フセレス防衛ぼうえいまかされるか?」

これはもっと厄介やっかい問題もんだいであった。もしわたし緹雅ティア弗瑟勒斯フセレスはなれれば、その防衛ぼうえい重責じゅうせき芙莉夏フリシャかたちることになる。早急さっきゅうほかものつけぬかぎりは。

現状げんじょうかんがみれば、老身ろうしん弗瑟勒斯フセレス防衛ぼうえいになうのがいとかんがえる。いえにはつね大人たいじんなければならぬだろう? そのほう汝等なんじらうごきやすくなるし、ほか守護者しゅごしゃ差遣さけんしてべつ任務にんむ遂行すいこうさせることもできる。第九だいきゅう神殿しんでんは、老身ろうしんつね完全かんぜん戦力せんりょくととのえておく。」

たしかにそのとおりだ。そなたたちがかぎり、それ自体じたい弗瑟勒斯フセレス保障ほしょうだ。ゆえに、たとえ今後こんごほか守護者しゅごしゃ不在ふざいとなっても、我々(われわれ)はまった憂慮ゆうりょする必要ひつよういだろう。」


そのときわたし三年前さんねんまえ公会こうかい大戦たいせんおもした。あのころは、弗瑟勒斯フセレス仲間なかまたちの戦力せんりょくはじめて頂点ちょうてんたっした時代じだいであった。

当初とうしょ、我々(われわれ)はさほど有名ゆうめいではなかった。だが、数多かずおおくの討伐戦とうばつせんつねにBOSSを最初さいしょ撃破げきはし、専属せんぞく公会こうかい神器しんき獲得かくとくしてきた。それが原因げんいんで、おおくのほか公会こうかいから嫉妬しっとったのだ。

その結果けっか幾度いくどとなく強大きょうだい公会こうかいいどんできた。ついには当時とうじ第一位だいいちい公会こうかいでさえ我々(われわれ)に討伐戦とうばつせん仕掛しかけてきたのである。

公会こうかい大戦たいせんには人数にんずう武器ぶき制限せいげんがなく、ほか公会こうかいもこの機会きかいねらって攻撃こうげきしてきた。

連続れんぞくするかずおおくの討伐戦とうばつせんてに、神殿しんでん最終的さいしゅうてきやっつの楼閣ろうかく攻破こうはされた。だが、唯一ゆいいつ第九だいきゅう神殿しんでんだけは例外れいがいなくてき全滅ぜんめつさせ、そのは「最難攻破さいなんこうは領域りょういき」としてかんせられるにいたったのである。

汝等なんじらかならけよ。もし本当ほんとう老身ろうしん必要ひつようとするときがあれば、かなら即時そくじ老身ろうしん連絡れんらくせよ。」

芙莉夏フリシャは、まるで母親ははおやのように、我々(われわれ)にかさねてかせた。

そうのこすと、彼女かのじょ第九だいきゅう神殿しんでんもどっていった。


緹雅ティア、そなたはいま、我々(われわれ)が何処どこからはじめるべきだとおもう?」

わたしは、まず迪路嘉ディルジャさがしにこうとおもうわ! この周辺しゅうへん状況じょうきょういてみましょう。」

奧斯蒙オスモン迪路嘉ディルジャ創造そうぞうしたさい付与ふよされた職業特性しょくぎょうとくせいは「帝王之眼エンペラーズアイ」とばれる。これは奧斯蒙オスモン創造そうぞうとき特別とくべつ道具どうぐ全視之眼ぜんしのめ」をさずけたこと由来ゆらいする。

この道具どうぐは、初代しょだいファラオ隼頭神じゅんとうしん荷魯斯ホルス討伐とうばつしたさいひゃくのドロップアイテムと数多かずおおくの煩雑はんざつ素材そざいあつめてはじめてつくことができる強化きょうかアイテムである。

当初とうしょ奧斯蒙オスモンみずか使用しようするつもりであった。しかし守護者しゅごしゃたちの戦力せんりょく均衡きんこうたもつため、この貴重きちょう道具どうぐ迪路嘉ディルジャあたえることにしたのである。

帝王之眼エンペラーズアイ特性とくせいにより、迪路嘉ディルジャてき弱点じゃくてん見破みやぶり、それをいて反撃はんげきする能力のうりょくつ。さらに特化とっかされた遠隔えんかく能力のうりょくによって要害ようがい精確せいかく攻撃こうげきでき、素早すばやうごてきをも容易ようい対処たいしょする。守備しゅびでも攻撃こうげきでも、偵察ていさつ単位たんいとしてきわめて優秀ゆうしゅうなのだ。

迪路嘉ディルジャ守護しゅごする神殿しんでんにおいて、彼女かのじょ匹敵ひってきするものがければ、侵入しんにゅうしゃ人海戦術じんかいせんじゅつもちいるしかない。しかし、その代償だいしょう甚大じんだいであった。

実際じっさい迪路嘉ディルジャはかつて一人ひとり二百にひゃくめい以上いじょう侵入しんにゅうプレイヤーを撃退げきたいしたこともある。


海特姆塔(ヘトムタワー)入口いりぐち到着とうちゃくすると、周囲しゅういはまるで洞窟どうくつだらけのようであった。

見上みあげれば、そこはふか峡谷きょうこく奥底おくそこのようにかんじられる。たにのぼけると、周囲しゅういてしなくつらなる雪山せつざんであり、なくける寒風かんぷう容赦ようしゃなくおそってきた。その山脈さんみゃく一角いっかく山巓さんてん迪路嘉ディルジャっていた。

わたし緹雅ティア魔法まほう瞬間移動しゅんかんいどうし、迪路嘉ディルジャそばへとあらわれた。

迪路嘉ディルジャ大丈夫だいじょうぶか? こんなところ居続いつづけたら風邪かぜいてしまうぞ。」

迪路嘉ディルジャがこの厳寒げんかんにありながら、普段ふだんわらぬ衣装いしょうのままでっているのをて、緹雅ティアむねいため、あわててこえけた。そのやさしさは、まさにひとこころかすあたたかさであった。


大丈夫だいじょうぶです。大人たいじんがた任務にんむたすためなら、これぐらいのことなん問題もんだいにもなりません。」

「それはいけない。もしからだこわしたら、わたし奧斯蒙オスモンにどう説明せつめいすればいいんだ……。まない、迪路嘉ディルジャわたし配慮はいりょりなかった。」

わたしいそいで水晶球すいしょうきゅう使つかい、一巻いっかん巻軸けんじくした。

巻軸けんじくひかりはなち、やがて堅固けんごちいさな家屋かおくした。

「この内部ないぶ設計せっけい周囲しゅうい監視かんし容易よういにするだけでなく、物資ぶっし直接ちょくせつ転送てんそうできる装置そうちそなえている。弗瑟勒斯フセレスから必要ひつよう物資ぶっしおくむことも可能かのうだ。」

「ありがとうございます……凝里ギョウリ大人たいじん臣下しんかけっして大人たいじん御託ごたく裏切うらぎりません。」

迪路嘉ディルジャふかあたまげてこたえた。

「ふふっ~、さすが気配きくば上手じょうず会長かいちょう大人たいじん。どうりで女性じょせい人気にんきがあるわけですね~。」

緹雅ティアは、いつものように不意打ふいうちでわたしをからかってきた。

「からかうなよ……。さぁ、なかはいってつづきをはなそう!」

緹雅ティアがふざけているだけとかっていながらも、その言葉ことばほおがわずかにあかまった。


屋内おくないはいると、迪路嘉ディルジャ本来ほんらいひざまずいて我々(われわれ)にれいくそうとしたが、わたし緹雅ティアあわててそれをめた。

迪路嘉ディルジャ、ここでは形式張けいしきばらなくていい。」

「はっ。」

わたし迪路嘉ディルジャとなり椅子いすすわるようしめし、そのまま問いかけをつづけた。

「では、いま観察かんさつなに発見はっけんはあったか?」

「はっ。弗瑟勒斯フセレス中心ちゅうしんに、半径はんけい七十ななじゅうキロは雪山せつざんばかりで、あやしい生物せいぶつられません。ただし、すでいくつかの音魔おんま召喚しょうかんし、さらなる調査ちょうさすすめています。およそ七十五ななじゅうごキロさきにはちいさな村落そんらく点在てんざいしており、東側ひがしがわ比較的ひかくてきちかく、西側にしがわ九十五きゅうじゅうごキロはなれています。

くわえて、西側にしがわには長大ちょうだい河川かせん一本いっぽんながれており、わたし視界しかいおよ範囲はんいえていました。はばすくなくとも二十にじゅうキロにたっし、ながさははかれません。両岸りょうがんにはちいさな村落そんらくが点々(てんてん)とえ、さらに東側ひがしがわには兵士へいしたちが守備しゅびいていました。ただ、それ以遠いえんもりひろがるばかりで、ほか異変いへん確認かくにんできませんでした。」


すくなくとも現状げんじょうでは、周囲しゅういてきないと確認かくにんできるのだな?」

緹雅ティアいかけた。

音魔おんま実力じつりょくかられば、もしそれを消滅しょうめつさせられるてきあらわれたならば、我々(われわれ)が容易よういてる相手あいてではないだろう。」

わたしかぎり、最上階級さいじょうかいきゅう音魔おんま等級とうきゅうきゅうのプレイヤーとも互角ごかくわたえる。したがって、もしこの世界せかい住人じゅうにん容易ようい音魔おんまほろぼせるならば、我々(われわれ)にとってもきわめて危険きけんてきとなる。

凝里ギョウリ、そなたはまず何処どこくべきだとおもう?」

わたしは、まず比較的ひかくてき簡単かんたん村落そんらくえらんで調査ちょうさし、この世界せかい情報じょうほうるべきだとかんがえる。そうなると、我々(われわれ)は東側ひがしがわってさぐるのがいだろう。なに有益ゆうえき情報じょうほうけるかもしれん。」

わたし緹雅ティアみずからのかんがえをげた。


わたし同意どういだ。あねさまに一言ひとことつたえてから出発しゅっぱつしよう!」

「だが、そのまえ処理しょりすべきことほかにもある。」

なにこと?」

わすれたのか? 我々(われわれ)はまず弗瑟勒斯フセレス防衛ぼうえい体制たいせい確認かくにんせねばならん。それにあわせて、おのおの守護者しゅごしゃ能力のうりょく見極みきわめ、さらにわたし自身じしん能力のうりょくたしかめておく必要ひつようがある。」

異世界いせかい転移てんいして以来いらいわたし自分じぶん能力のうりょく完全かんぜんには確認かくにんしていなかった。たしかに我々(われわれ)はゲームないときおなちからゆうしているようにおもえる。だが、かんがえればかんがえるほど、その不思議ふしぎさに戸惑とまどい、いまだに現実げんじつとしてれていない自分じぶんがいた。

一方いっぽう緹雅ティア芙莉夏フリシャ適応てきおうはやかった。異世界いせかいへの転移てんいという出来事できごとは、ひとによって反応はんのうおおきくことなるのだろう。


わたしくちから「テスト」という言葉ことば瞬間しゅんかん迪路嘉ディルジャ途端とたん緊張きんちょうした様子ようすせた。

「そ、屬下しょっか能力のうりょく試験しけんなさるのですか? それならば屬下しょっかいますぐ準備じゅんびいたします!」

「あっ……いや……迪路嘉ディルジャ、そなたは無理むりをしなくていいんだ。そなたはいま任務にんむになっているだけで十分じゅうぶんつかれている。これ以上いじょうほかことこころくだ必要ひつようはない。」

わたしあわてて迪路嘉ディルジャなだめた。

彼女かのじょ性格せいかくは往々(おうおう)にして過敏かびんであり、それはかつて奧斯蒙オスモン設計せっけいしたときのままの特徴とくちょうだった。ゆえに、ほかものたちもおおきく変化へんかすることはないだろうとわたしかんがえていた。


我々(われわれ)が迪路嘉ディルジャとも周囲しゅうい状況じょうきょう確認かくにんしたのち晋見廳しんけんちょうもどると、そこには莫特モットだけがた。

莫特モットわたし緹雅ティア姿すがたるやいなや、あわててすすれいくした。

凝里ギョウリさま緹雅ティアさまなに御用ごよう指示しじがございますか?」

莫特モットほか守護者しゅごしゃたちはいまなにをしている?」


「はっ。現状げんじょう全員ぜんいん各自かくじ神殿しんでん警戒けいかい強化きょうかしております。くわえて、すで聖甲蟲せいこうちゅう通信装置つうしんそうち使つかい、基本きほん連絡網れんらくもう完成かんせいさせました。」

本当ほんとうにまだ使つかえるのか! これは素晴すばらしいな!」

緹雅ティアわたしかってうれしそうにった。

この聖甲蟲せいこうちゅう通信装置つうしんそうちは、機械化きかいかされた通信つうしん昆虫こんちゅうであり、納迦貝爾ナガベルが「艾忨(アイシャン)」のからあつめてきたものである。


この聖甲蟲せいこうちゅうは、内部ないぶ特定とくてい魔法術式まほうじゅつしき注入ちゅうにゅうするだけで、一定いってい距離きょりない通話つうわ可能かのうとなる。ことなる通信つうしん魔法術式まほうじゅつしき同士どうし干渉かんしょうせず、たか秘匿性ひとくせいたもつことができる。この設定せっていはじめてにしたとき、私は格別かくべつ面白おもしろいとかんじた。

そして、その仕様しようがこの世界せかいにおいて完全かんぜん再現さいげんされている事実じじつは、わたしさらなる不可思議ふかしぎさをいだかせた。


莫特モットすこたのみにくいのだが、もう一度いちど守護者しゅごしゃたちを晋見廳しんけんちょう召喚しょうかんしてくれないか? 今度こんど全員ぜんいんかなら全武装ぜんぶそうのぞむように。きみ自身じしん準備じゅんびととのえよ。時刻じこく三十さんじゅっ分後ぷんごさだめる。それから、迪路嘉ディルジャ必要ひつようはない。我々(われわれ)は先程さきほどすでに彼女かのじょってきたからな。」

「はっ! 屬下しょっか、ただちに準備じゅんびいたします!」

わたしがこのように指示しじしたのには、じつすこしばかり意図いとがあった。ひとつには、守護者しゅごしゃたちがどのような思考しこうっているのかを確認かくにんするため。そしてもうひとつには、管理者かんりしゃとして、みずからの部下ぶかたしてわたし命令めいれい正確せいかく理解りかいしているかをたしかめるためであった。

莫特モット命令めいれいるやいなや、聖甲蟲せいこうちゅうつうじて我々(われわれ)があたえた任務にんむ伝達でんたつした。


かれらが到着とうちゃくするのをあいだ緹雅ティアいかけてきた。

凝里ギョウリ、そなたはこの世界せかい転移てんいしてから、どんな気持きもちだった?」

「どうしてきゅうにそんなことくんだ?」

「そ、それは……ただいま、そなたがどうかんがえているのかをりたかっただけ。あまりにも突然とつぜん出来事できごとだったから、わたし当初とうしょ本当ほんとうあわてたの。でもさいわいにもあねさまがそばにいて、そなたもてくれたから、勇気ゆうきしてまえすすことができたの。」

緹雅ティア言葉ことばにはかなしみがにじんでいて、私はおもわずすのではないかと感じた。

私はあわててあやまった。

緹雅ティア……大丈夫だいじょうぶか? まない、不用意ふよういことってしまった。」

大丈夫だいじょうぶだってば! むしろいまほうが、まるでいえかえってきたみたいな感覚かんかくなの。過去かこ生活せいかつ本当ほんとうつかれることばかりで、あることげればわるとおもっていたのに、つぎからつぎへとあたらしい問題もんだいてきたんだもの。」


わたし緹雅ティア言葉ことばなに意味いみするのか理解りかいできなかった。結局けっきょくわたしたちはたがいにっていることがまだすくないのだ。わたしにできるのは、ただ彼女かのじょなだめようとすることだけだった。

まない……いまの私は本当ほんとう無力むりょくだ。自分じぶん無能むのうさをあやまるしかない。もしわたしにできることがあれば、かならってほしい。」

「だから、大丈夫だいじょうぶだってば! おおくのことは、一人ひとり解決かいけつできるものじゃないの。あねさまはとてもつよくて、わたし安堵あんどあたえてくれるし、そなたも無事ぶじでいてくれる。それだけでも十分じゅうぶんなんだよ。」

「だが……ほかものたちはいま、どうしているのか……やはり心配しんぱいだ。」

大丈夫だいじょうぶ! わたしたちはかならずこの難関なんかんえられる!」

緹雅ティアふたたあかるい笑顔えがおかべ、その姿すがたに私はおおきな安堵あんどおぼえた。


「ところで、そなたはどんな試験しけんおこなうつもりなの?」

緹雅ティア興味深きょうみぶかそうにたずねた。

簡単かんたんえば、ほかものたちの能力のうりょく試験しけんしてみるということだな。ついでに、わたしちからがどこまで発揮はっきできるかもたしかめたい。過去かこつねにゲームない設定せっていしたがって技能ぎのう使つかっていた。だがいまは、たしかに自分じぶん体内たいないちからかんじている。とはいえ、実際じっさい使つかってみなければからない。……そなたものちほど、さらなる試験しけんおこなうつもりか?」

「いいわよ~。準備運動じゅんびうんどうだとおもえばわるくないわね。」

守護者しゅごしゃ実力じつりょく試験しけん準備運動じゅんびうんどうとらえるとは――緹雅ティアがいかに余裕よゆうっているかがかる一幕いちまくであった。


我々(われわれ)が会話かいわわしているあいだ守護者しゅごしゃたちは次々(つぎつぎ)と到着とうちゃくした。

凝里ギョウリさま緹雅ティアさますべての守護者しゅごしゃがすでに全武装ぜんぶそう参上さんじょうし、待機たいきしております。」

莫特モットはそう報告ほうこくしながら、つねつよ力強ちからづよ気迫きはくはなっていた。


「よろしい。諸君しょくん守護者しゅごしゃたちよ、その迅速じんそく行動こうどうほこりにおもう。さて、いまからひとおこなわねばならぬことがある。」

大人たいじん、それは一体いったいどのようなことでしょうか? わざわざ全武装ぜんぶそうのぞ必要ひつようがあるとは。」

疑問ぎもんていしたのは佛瑞克フレックだった。

むずかしいことではない。ただ、わたしはそなたたちに試験しけん手伝てつだってほしいのだ。」

試験しけん……ともうされますか?」

「そのとおりだ。わたし魔法まほうもちいて高階こうかい元素使げんそし召喚しょうかんする。諸君しょくんいまどのほど戦闘水準せんとうすいじゅんにあるか、たしかめたいのだ。」

「はっ!」


この晋見廳しんけんちょう中央ちゅうおうもうけられた舞台ぶたいは、元来がんらいてきとの戦闘せんとう想定そうていして設計せっけいされた場所ばしょである。ゆえに我々(われわれ)は、その直接ちょくせつ試験しけん開始かいしした。

わたし事前じぜん自分じぶん特性とくせい確認かくにんしていた。武器ぶきたぬ状態じょうたいでは、たしかに如何いかなるわざ発動はつどうできない。だが、水晶球すいしょうきゅう魔法書まほうしょ使用しよう可能かのうであることかっている。いまこそ、それらが戦闘せんとうにおいて如何いかなる効力こうりょく発揮はっきできるのか、さらたしかめるときであった。

私は体内たいないめぐ魔力まりょくながれをかんじ、十階じっかい召喚魔法しょうかんまほう発動はつどうした。結果けっか八種はっしゅ属性ぞくせい元素使げんそし召喚しょうかんすること成功せいこうした。しかし、その能力のうりょく以前いぜんのゲームないおなじであるかどうかは、いまからなかった。

「さあ、い! 守護者しゅごしゃたちよ! そなたたちのちからわたししめしてみせよ!」


現状げんじょう六対ろくたいはちかずうえでは守護者しゅごしゃたちに不利ふりであったが、なにしろ全員ぜんいん等級とうきゅうじゅう到達とうたつしている。

わたし技能スキル――鑑定之眼かんていのめもちい、全員ぜんいん能力のうりょく観察かんさつした。この技能ぎのう各人かくじん能力値のうりょくち見抜みぬことができる。てきちから見通みとおせるこの技能スキルは、たしかに強力きょうりょくであり、等級とうきゅうじゅう突破とっぱせねば習得しゅうとくできない理由りゆう納得なっとくできた。

数値すうちかられば、全員ぜんいん能力値のうりょくち従来じゅうらいにしてきたものと大差たいさいようにおもえた。

……ゆえに、とく問題もんだいいはずだと私はかんがえた。


ただ、わたし想像そうぞうもしていなかった――戦況せんきょうがこれほどまでに一方的いっぽうてきなものとなるとは。


元素使げんそしたちはさき強力きょうりょく元素げんそ魔法まほう発動はつどうした。戦場せんじょう瞬時しゅんじ狂風暴雨きょうふうぼうううずし、五彩斑斕ごさいはんらん光芒こうぼう空気くうきき、守護者しゅごしゃたちへとせまった。

八階はっかい火元素ひげんそ魔法まほう滅化之火めっかのひ

八階はっかい水元素すいげんそ魔法まほう急流生海きゅうりゅうせいかい葬蝕(そうしょく

八階はっかい雷元素らいげんそ魔法まほう天宵滅雷てんしょうめつらい

八階はっかい木元素もくげんそ魔法まほう荊棘血毒けいきょくけつどく

八階はっかい土元素どげんそ魔法まほう原化之土げんかのつち地裂(ちれつ

八階はっかい風元素ふうげんそ魔法まほう凜風寒刺りんぷうかんし

八階はっかい光元素こうげんそ魔法まほう幻日韜光げんじつとうこう

八階はっかい暗元素あんげんそ魔法まほう暗月あんげつ夜華宵(やかしょう


灼熱しゃくねつほのおせる奔流ほんりゅう疾駆しっくする稲妻いなずま、さらには戦場全体せんじょうぜんたいあらし大地だいち震動しんどう――元素使げんそしたちの魔法攻撃まほうこうげきは、まるできることのない奔流ほんりゅうのごとくせ、破滅的はめつてき脅威きょういちていた。

しかし、守護者しゅごしゃたちにとって、それらは一見いっけん強力きょうりょくえる攻撃こうげきであっても、なに効果こうかおよぼすものではなかった。


芙洛可フロッコ伊斯希爾イスシール二人ふたりは、それぞれにした武器ぶき駆使くしし、四方八方しほうはっぽうからせま元素攻撃げんそこうげき容易ようい吸収きゅうしゅうしてしまった。わずかな波動はどうすらかんじさせないほどである。

芙洛可フロッコにある武器ぶき――「魔力無限まりょくむげん」は、魔法まほう吸収きゅうしゅうし、それを転化てんかして利用りようする能力のうりょくつ。

てき攻撃こうげきから魔力まりょくうばい、みずからのちからへと変換へんかんすることができるのだ。これにより、彼女かのじょなくそそ元素攻撃げんそこうげき吸収きゅうしゅうつづけることができた。ただし、魔法まほうちからがあまりに強大きょうだいすぎる場合ばあい、この武器ぶきでも十分じゅうぶん作用さようすることはできなかった。

一方いっぽう伊斯希爾イスシール武器ぶき――「混沌珠こんとんじゅ」もまた、元素力げんそりょく吸収きゅうしゅうする機能きのうそなえていた。このたま伊斯希爾イスシール体内たいないめられており、かれ魔法まほう行使こうしするたび混沌珠こんとんじゅちから身体しんたい共鳴きょうめいし、元素使げんそし魔法攻撃まほうこうげき無効化むこうかするのだった。結果けっか二人ふたり守護者しゅごしゃきずわせること不可能ふかのうであった。

この圧倒的あっとうてき防御能力ぼうぎょのうりょくによって、元素使げんそしたちの攻撃こうげき完全かんぜん無力化むりょくかされ、その防衛線ぼうえいせん突破とっぱすること到底とうていかなわなかった。


しかし、これがすべての守護者しゅごしゃにとって容易ようい対応たいおう意味いみするわけではなかった。

なにしろ、元素使げんそしたちの攻撃こうげき威力いりょく依然いぜんとして尋常じんじょうではなく、わずかな油断ゆだんすべてをながこと不可能ふかのうであった。くわえて、すべての守護者しゅごしゃが、あのように「反則級はんそくきゅう」ともえる武器ぶき所持しょじしているわけではなく、幾人いくにんかの守護者しゅごしゃにとっては、有効ゆうこう防御ぼうぎょすには、よりおおくの技巧ぎこう必要ひつようだった。

佛瑞克フレックもその一人ひとりである。戦士せんしとして特化とっかしたかれのスキルは、おも物理攻撃ぶつりこうげきとの対抗たいこう集中しゅうちゅうしていた。かれ開戦かいせん当初とうしょから『神御太刀しんみたち』をもちいて防御ぼうぎょてっしていたが、元素使げんそしたちの怒涛どとうのごとき魔法攻撃まほうこうげきは、さすがにるには苦戦くせんいられていた。

それでも、歴戦れきせん戦士せんしとしてつちかった経験けいけんにより、佛瑞克フレックたしかに防御ぼうぎょかなめとして機能きのうしていた。かれたくみな足運あしさばきで元素使げんそしたちの注意ちゅういけ、さらには一部いちぶ攻撃こうげきさか利用りようして、その軌跡きせきえることさえ可能かのうであった。


防御ぼうぎょのぞさい佛瑞克フレック元素使げんそし攻撃軌跡こうげききせきこまかく観察かんさつし、それによって攻撃こうげきなかまり、一部いちぶ衝撃しょうげきめることができた。完全かんぜん防御ぼうぎょできたわけではなかったが、それでも全体ぜんたい戦局せんきょくにはおおきな貢献こうけんとなっていた。

一方いっぽう赫德斯特ヘデスト得意とくいとする感知魔法かんちまほうによって元素使げんそし攻撃軌跡こうげききせき捕捉ほそくしていた。かれ防御魔法ぼうぎょまほう元素使げんそし攻撃こうげきたしかにふせぐことができたが、その範囲はんい自身じしんおお程度ていどかぎられていた。

そのため、赫德斯特ヘデスト元素使げんそし怒涛どとう攻撃こうげき対処たいしょしながら、同時どうじ指揮しきり、ほか仲間なかまたちがより容易ようい攻撃こうげき対応たいおうできるよう支援しえんしていた。


しかし、本当ほんとうに「反則級はんそくきゅう」なのは德斯デス莫特モットであった。二人ふたりったまま、元素使げんそしたちのすべての攻撃こうげきかいさず、まるでそれら元素魔法げんそまほうがただの退屈たいくつ花火はなびであるかのようにっていた。

德斯デス能力のうりょくは、それ自体じたい四方八方しほうはっぽうからはなたれる元素攻撃げんそこうげき容易ようい退しりぞけるものであった。あらしほのお奔流ほんりゅう――どの衝撃しょうげきかれ微動びどうだにさせることはなかった。

その「攻撃こうげき無視むしするちから」は、かれ戦場せんじょうにおいて不動ふどう山脈さんみゃくのごとき存在そんざいにし、いかなる攻撃こうげきかれにとってはるにらぬものとした。

一方いっぽう莫特モットはさらに驚異的きょういてきであった。かれ強大きょうだい耐性たいせいそなえるのみならず、てき攻撃こうげきぎゃくかえすことができたのである。

元素使げんそしからはなたれるどの攻撃こうげきも、かれにとっては無効むこうであるばかりか、むしろかれ武器ぶきとなって逆襲ぎゃくしゅうてんじられるのだった。


どうやら、わずかに八階はっかい魔法まほうでは、守護者しゅごしゃたちにとって容易よういすぎるようであった。

そこで、わたし魔法まほう強度きょうどげる決断けつだんくだした。

元素使げんそしたちが行使こうしできる魔法まほうは、これまでわたしによって制限せいげんされていた。だが、守護者しゅごしゃたちがなんなく対応たいおうできるのならば、今度こんどかれらのちから完全かんぜん解放かいほうしてみよう。

わたし元素使げんそしたちのにかけていた枷鎖かさくはなった瞬間しゅんかんかれらがはな魔法まほう先程さきほどはるかに凌駕りょうがするものへと変貌へんぼうした。

凄烈せいれつなエネルギーが元素使げんそしたちの体内たいないからほとばして、その気勢きせい一瞬いっしゅんにして先程さきほど数倍すうばいふくがった。

十階じゅっかい火元素ひげんそ魔法まほう焚世劫火ふんせいごうか業輪燃殤ごうりんねんしょう

十階じゅっかい水元素すいげんそ魔法まほう幽藍深淵ゆうらんしんえん溺夢幻海できむげんかい

十階じゅっかい雷元素らいげんそ魔法まほう雷之創生らいのそうせい紫電しでん

十階じゅっかい木元素もくげんそ魔法まほう無間荊棘むけんけいきょく青木長生せいぼくちょうせい

十階じゅっかい土元素どげんそ魔法まほう原化之土げんかのつち裂界れっかい

十階じゅっかい風元素ふうげんそ魔法まほう天縱風痕てんじゅうふうこん塵風龍巻じんぷうりゅうけん

十階じゅっかい光元素こうげんそ魔法まほう極耀星芒ごくようせいぼう閃光せんこう

十階じゅっかい暗元素あんげんそ魔法まほう葬滅星環そうめつせいかん萬疾終詠ばんしつしゅうえい


……てよ、わたし元素使げんそしがこんなにも強力きょうりょくじゅつ使つかえるなんて記憶きおくにない。いや、十階じゅっかい魔法まほうなかに、たしてこれほどの威力いりょくつものが存在そんざいしていただろうか?

鑑定之眼かんていのめ確認かくにんしても、元素使げんそし能力値のうりょくち先程さきほどなにわらなかった。しかし、かれらがはな魔法まほうちからは、わたし想像そうぞうはるかにえるほど強大きょうだいであった。

つまり、この世界せかい具現化ぐげんかされた魔法まほう威力いりょくは、もと認識にんしきとはことなっているということなのだ。

では、もう一つの疑問ぎもん――なぜ元素使げんそしわたしらない魔法まほう使用しようしているのか?これもまた、異世界転移いせかいてんいによってしょうじた変化へんかなのだろうか?

この問題もんだい一旦いったんわきいておこう。強力きょうりょく魔法まほう使つかえるのは、わたしにとってわることではないからだ。

いまもっと気掛きがかりなのは、守護者しゅごしゃたちがたして元素使げんそし攻撃こうげきえられるかどうかというてんであった。


赫德斯特ヘデストはその光景こうけいもくにし、即座そくざ指揮しきった。かれ開戦当初かいせんとうしょからすでに自身じしん十階じゅっかい感知魔法かんちまほう萬象覺視ばんしょうかくし発動はつどうしており、この魔法まほうもとでは魔法まほう強度きょうど軌跡きせき容易ようい察知さっちでき、仲間なかまたちに的確てきかく指示しじくだすことができた。

赫德斯特ヘデスト指示しじけた芙洛可フロッコは、もはや端正たんせい態度たいどたもつことができず、両手りょうてたかかかげて自身じしんのスキルを発動はつどうした。

十階じゅっかい魔法まほう焚世終焰ふんせいしゅうえん迦具真炎かぐしんえん

彼女かのじょは「魔力無限まりょくむげん」によって吸収きゅうしゅうした魔力まりょく媒介ばいかいとし、みずからの魔法まほう威力いりょくをさらに高次元こうじげんへとげた。

芙洛可フロッコ魔法まほうにより、水元素使すいげんそし火元素使ひげんそし攻撃こうげきは次々(つぎつぎ)とさえぎられていった。

伊斯希爾イスシールもまた、自身じしん十階じゅっかい防御魔法ぼうぎょまほう絶対封晶ぜったいふうしょう寂靜之盾じゃくじょうのたて発動はつどうした。この魔法まほうおそ元素魔法げんそまほう同等どうとう術式じゅつしきかえ能力のうりょくち、全面的ぜんめんてき防御ぼうぎょ不可能ふかのうであったが、光元素使こうげんそし暗元素使あんげんそし風元素使ふうげんそし攻撃こうげき確実かくじつふせった。

そのころ佛瑞克フレックもまた「神御太刀かみみたち」をるい、雷元素使らいげんそし木元素使もくげんそし攻撃こうげきかった。

かれはなったのは、神御五式しんみごしき御雷裂華斬ぎょらいれっかざん

その斬撃ざんげきからほとばしった剣気けんきは、雷元素使らいげんそし攻撃軌跡こうげききせき完全かんぜんえるほどの威力いりょくほこった。さらには、おそ無数むすう荊棘けいきょくつる一瞬いっしゅんのうちにはらわれたのであった。


ほかの守護者しゅごしゃたちが必死ひっし防御ぼうぎょつづけている最中さいちゅう德斯デス自身じしんのスキルを発動はつどうした。

十階じゅっかい魔法まほう塵沙破月環じんさはげっかん

それは風元素ふうげんそ土元素どげんそ、そして暗元素あんげんそわせてされた魔法まほうであった。その瞬間しゅんかん空気くうきはげしくうずき、まるで巨大きょだいあらしした。つづいて、月刃げつじんがそのあらしとも四方八方しほうはっぽうへとはなたれ、すべての元素使げんそしはじばした。

同時どうじに、なくおそ元素攻撃げんそこうげきさえぎられ、阻止そしされたのである。

一瞬いっしゅんにして場景ばけい静寂せいじゃくつつまれ、先程さきほどまでっていた元素げんそ奔流ほんりゅうは、德斯デスのたった一撃いちげきのスキルによって完全かんぜん消滅しょうめつした。


同時どうじに、莫特モットはすでににした武器ぶき――「神槍しんそう耶露希德エルシード」をるっていた。

そのやりかれなか巨大きょだい破壊者はかいしゃのごとくかがやきをはなち、槍先やりさきからはまばゆ光芒こうぼうひらめた。

莫特モットはスキルを発動はつどうする。

神槍しんそう妖皇型態ようこうけいたい妖光嵐ようこうらん

その一撃いちげきは「妖光ようこう」とばれる衝撃波しょうげきは瞬時しゅんじしょうじさせるわざであった。


その光景こうけいわたしは、ほとんど反射的はんしゃてき十階じゅっかい魔法まほう元素武装げんそぶそう最終演化さいしゅうえんか発動はつどうしていた。

この魔法まほうは、わたし魔力まりょくによって強化きょうかされた八種はっしゅ元素力げんそりょく結晶鎧甲けっしょうがいこうへとえ、それを元素使げんそしたちのまとわせることで、防御能力ぼうぎょのうりょく飛躍的ひやくてき向上こうじょうさせるものであった。

莫特モット攻撃こうげきおそかったその瞬間しゅんかん元素使げんそしたちは妖光ようこうまれた。

だが、わたし魔法まほうによって、なんとかその一撃いちげきふせることができたのである。

――その破壊力はかいりょくは、まさしく姆姆魯ムムル匹敵ひってきするほどであった。


德斯デス莫特モット連携れんけいは、あやうく戦闘全体せんとうぜんたい瞬時しゅんじ決着けっちゃくさせるほどであり、その実力じつりょく完全かんぜんわたし想像そうぞうえていた。

私は守護者しゅごしゃたちのはたらきにふか感銘かんめいけた。かれらの連携能力れんけいのうりょくは、もはや元来がんらいただのAIにあやつられていたNPCであったとはおもえないほどである。

その反応はんのう迅速じんそくで、協力きょうりょくきわめて円滑えんかつであり、各々(おのおの)の守護者しゅごしゃうごきはわたし予想よそうをはるかに上回うわまわっていた。

まるでかれらがすでに幾度いくどとなく共闘きょうとうかさねてきた歴戦れきせん仲間なかまであるかのように――。


先程さきほど戦闘せんとうから、わたし大体だいたい情報じょうほう整理せいりすることができた。

実戦じっせんて、召喚しょうかんした元素使げんそしは、過去かこよりもあきらかに能力のうりょく向上こうじょうしていることに気付きづいた。

だが、どうしてかれらがこれほどまでのちからつのか、わたしには理解りかいできなかった。

ゲームないにおいて、召喚獣しょうかんじゅう強度きょうどは、魔法まほう位階いかいや、それに付与ふよされた補助魔法ほじょまほうにのみ依存いぞんしていた。

たとえ最上位階さいじょういかい召喚魔法しょうかんまほうであっても、元素使げんそし行使こうしできる魔法まほう第九階だいきゅうかいまでが限度げんどのはずである。

もしかすると、この世界せかいでは魔法まほうそのものに、独自どくじ規則きそく存在そんざいしているのではないだろうか?

召喚魔法しょうかんまほうかぎらず、わたしはな魔法まほうも、元来がんらい認識にんしきとはことなっていた。おな魔法まほう使つかっているはずなのに、その効果こうかわたし想像そうぞうはるかにえていたのだ。

さらに、先程さきほど魔法まほう発動はつどうしたときわたし自分じぶん反応速度はんのうそくどおどろかされた。どの魔法まほう行使こうしすべきかを瞬時しゅんじおもかべることができ、くわえて魔法まほう発動速度はつどうそくども、自分じぶん想像そうぞうしていた以上いじょうはやかった。

今後こんごは、さまざまな種類しゅるい魔法まほうについて、さらに研究けんきゅうついやす必要ひつようがあるだろう。相当そうとう時間じかんかるかもしれないが……。


魔法まほうだけではなく、守護者しゅごしゃたちのちからもまた、わたしがゲームないかんじていた以上いじょう強大きょうだいであった。

本来ほんらい、ゲームのなかでは、わたしたちはデータを入力にゅうりょくすることで守護者しゅごしゃたちの性格せいかく創造そうぞうできた。また、運営うんえいからあたえられる特殊とくしゅ道具どうぐとおして守護者しゅごしゃ改造かいぞうすることも可能かのうであり、そうしてかたちづくられた守護者しゅごしゃたちは、AIによって模擬もぎされるキャラクターにぎなかった。

だが、わたしたちがこの世界せかいへと転移てんいしてからは、かれらははるかに鮮活せんかつ存在そんざいとなった。AI特有とくゆう固定的こていてきなパターンでのやり取りはせ、まるで生身なまみ人間にんげんのようにみずかかんがえ、独自どくじ思考しこうつようになった。ただし、その個性こせいだけは、わたしたちがもとからあたえていたものとおなじであった。

能力のうりょくについてえば、わたし全員ぜんいんちからをある程度ていど把握はあくしているつもりだった。とはいえ、すべてを詳細しょうさい確認かくにんしたわけではなかったため、守護者しゅごしゃたちが実際じっさいにスキルを発動はつどうしてせたちからには、やはりおどろかされる部分ぶぶんがあった。

かれらはスキルをはなさい、AIのように逐一ちくいち分析ぶんせきして選択せんたくするのではなく、ほとんど本能ほんのうのままに応戦おうせんしていたのである。


守護者しゅごしゃたちの能力のうりょくについて、わたしはすでに大体だいたい把握はあくできたため、召喚しょうかんしていた元素使げんそしたちをすべて退しりぞけた。

じつ見事みごとだ。みなわたしたちがもとめていたものをよく理解りかいしていた。この状況じょうきょうなか連携れんけいげるのは容易よういではない。」

私はまず、かれらのはたらきを賞賛しょうさんした。

しかし、すぐに語気ごきつよめる。

「だが……」

「だが?」

莫特モットすこかおげ、わたし言葉ことばの続きをっているのがれた。

私は微笑ほほえみをかべ、わざとかる不満ふまんふくませた口調くちょうった。

德斯デス莫特モットきみたち二人ふたり最初さいしょからそんな反則級はんそくきゅう能力のうりょく使つかってしまったら、ほかみなまな機会きかいのこらないだろう~」

多少たしょう無念むねんおぼえながらも、私はあえて助言じょげんくわえた。

次回じかいすこちからおさえてみてくれ。簡単かんたん自分じぶんふださないように。」


德斯デス莫特モット同時どうじあたまれ、その声色こわいろにはどこかさびしげなひびきがあった。

大変たいへん申しもうしわけありません。」

かれらは一切いっさい弁解べんかいすらせず、その態度たいどは、むしろわたしに「先程さきほどかたすこつよすぎたのではないか」とおもわせた。

緹雅ティアおもわずちいさくわらい、すぐにわたしへとなおる。

「ふふ~結局けっきょく最初さいしょに『かれらのちからたい』ってったのはあなたでしょ?だからこそ二人ふたり全力ぜんりょくくそうとしたのよ。」

その声音こわねにはたわむれのいろじっていたが、同時どうじ緊張きんちょうやわらげる絶妙ぜつみょう調子ちょうしでもあった。

「それに、あなた自身じしんだって十階じゅっかい魔法まほう使つかったじゃない。もしかれらが一歩いっぽ間違まちがえれば、重傷じゅうしょうっていたかもしれないのよ。」

かってるよ~。そうかんがえると、わたしためしたかったことは、もう十分じゅうぶん達成たっせいできたってことだな。」

おおくの手応てごたえをられたのはたしかだったが、全体的ぜんたいてきれば、わたしおもえがいていたほど順調じゅんちょうにははこばなかった。


わたしおおきくいきき、つづけてけた。

「それで、緹雅ティアきみるか?」

この一言ひとこと守護者しゅごしゃたちの顔色かおいろ一瞬いっしゅんにして蒼白そうはくめた。

かれらの表情ひょうじょう途端とたんつよ緊張感きんちょうかんへとわり、そのにはあきらかにえぬ圧力あつりょくただよった。

わたし言葉ことばみみにした赫德斯特ヘデストは、おもわずひくこえける。

緹雅ティアさま……これは、我々(われわれ)と手合わせをなさるおつもりなのですか?」

その声音こわねには焦燥しょうそうじり、かれだこの挑戦ちょうせんのぞ覚悟かくごかたれていないことはあきらかだった。

だが、先程さきほど守護者しゅごしゃたちのはたらきをおもえば、緹雅ティアとの対戦たいせんけっして不可能ふかのう相手あいてではないはずであった。


緹雅ティアはすぐには返答へんとうしなかった。だが、そのひとみにはすでに興奮こうふんひかりまたたいていた。

彼女かのじょ椅子いすからかるやかにがり、そのまま舞台中央ぶたいちゅうおうへと着地ちゃくちした。その動作どうさおどろくほど軽快けいかい自然しぜん同時どうじ比類ひるいなき優雅ゆうがさと力強ちからづよさをそなえていた。

外見上がいけんじょう余裕よゆうちているようにえたが、そこからはなたれる強者きょうしゃ気配けはい微塵みじんおとろえることはなかった。

舞台ぶたい中央ちゅうおう彼女かのじょ姿すがたまえにして、守護者しゅごしゃたちは一人残ひとりのこらず、その無形むけい威圧感いあつかんはだかんっていた。

それは、先程さきほど元素使げんそしたちがはなっていた圧力あつりょくをも凌駕りょうがするほどであり、緹雅ティアあたえる緊張感きんちょうかんは、まさに圧倒的あっとうてきなものだった。


べつかまわないわよ。」

緹雅ティアはついにくちひらいた。「でも、凝里ギョウリ、あなたはしちゃダメだからね!」

彼女かのじょまゆわずかにげ、わざとわたし挑発ちょうはつするかのような仕草しぐさせた。

守護者しゅごしゃみな挑戦ちょうせん条件じょうけんはとても簡単かんたん。このわたしけているマントをとせば、あなたたちのちよ。ぎゃくに、わたし刀背とうはいたたかれたものは、その時点じてん失格しっかくだからね。」

その声音こわねかるやかで、あたかもこの勝負しょうぶ彼女かのじょにとってるにらない遊戯ゆうぎであるかのようにひびいた。だが、守護者しゅごしゃたちにとっては、それはまぎれもない過酷かこく試練しれんであった。

そのとき、私はようやくづいた。――もしかすると、緹雅ティアはすでに自分じぶん能力のうりょく変化へんか察知さっちしていたのではないか?

だからこそ、守護者しゅごしゃたちを相手あいてにしても、これほど余裕よゆうちた態度たいどのぞめるのだろう。


緹雅ティア言葉ことばみみにした守護者しゅごしゃたちは、おもわずたがいに視線しせんわした。その眼差まなざしには不安定ふあんていさと焦燥しょうそう色濃いろこかび、状況じょうきょう完全かんぜんめていない様子ようすであった。

緹雅ティアつかみどころのない戦闘せんとうスタイルは、つね予測不能よそくふのう変数へんすうはらんでいた。

「だが……」

德斯デス言葉ことばえらびつつくちひらこうとした刹那せつな緹雅ティア一片いっぺん躊躇ちゅうちょもなくうごいた。

その一閃いっせんにしたするどやいば空気くうきき、一直線いっちょくせん德斯デスへとおそかった。

德斯デスおしえたはずよね?そんなにまよっていては、いのちとすわよ!」

緹雅ティアのその一撃いちげき稲妻いなずまのごときはやさではなたれ、その威力いりょく凄烈せいれつきわめた。

つぎ瞬間しゅんかん德斯デス身体しんたいぷたつにかれる。

驚愕きょうがくする守護者しゅごしゃたちのまえで、德斯デス身体しんたい幻影げんえいへとじ、虚空こくうなかえたのだった。


此時このとき緹雅ティア眼角がんかく後方こうほうへとながした。その刹那せつな德斯デス紳士しんしのように優雅ゆうが緹雅ティア背後はいご姿すがたあらわし、恭敬きょうけいはなった。

緹雅ティアさまよりじきくだされた指示しじとあれば、屬下しょっかかなら全力ぜんりょくくす所存しょぞんにございます。」

德斯デス声音こわね冷静れいせいかつ沈着ちんちゃくであり、先程さきほど緹雅ティア一撃いちげきにも一切いっさい動揺どうようせなかった。

ただし、緹雅ティアのような強大きょうだい相手あいてまえにして、その内心ないしんにはやはり一抹いちまつ不安ふあんひそんでいた。



この試合しあいしん目的もくてきは、守護者しゅごしゃたちの能力のうりょくためすことだけではなく、強大きょうだい挑戦ちょうせん直面ちょくめんしたとき、かれらが冷静れいせいさをたもち、戦略せんりゃく駆使くしできるかどうかを見ることにあった。単純たんじゅんちから依存いそんするのではなく、知略ちりゃく発揮はっきするかがためされていたのだ。

緹雅ティアはじめから場上じょうじょう德斯デス幻影げんえいぎないことを見抜みぬいていた。だからこそ、彼女かのじょまよわず直接ちょくせつ攻撃こうげきえらんだのである。

いま状況じょうきょう一対六いったいろくとなった。本来ほんらいこの対抗たいこう趣旨しゅしは、守護者しゅごしゃたちに自分じぶん実力じつりょくしめさせることだったのだが、わたし胸中きょうちゅうには「この挑戦ちょうせんはややぎではないか」という疑問ぎもんぬぐえなかった。

しかし、緹雅ティアあきらかにきょうじており、その態度たいどきわめて余裕よゆうちていた。あたかもこの試合しあいそのものをたのしんでいるかのようで、わたしにはめるすべさえ見出みいだせなかった。

心配しんぱいするな。これほどきょうっているのなら、彼女かのじょまかせてやればいい。」

わたし心中しんちゅうでそう自分じぶんなぐさめ、しずかに観察かんさつすることをめた。同時どうじに、緹雅ティアのような攻防一体こうぼういったい強敵きょうてきまえに、守護者しゅごしゃたちがいかなる反応はんのうせるのかをたしかめようとしたのである。


先程さきほど緹雅ティア不意ふいいた攻撃こうげきは、守護者しゅごしゃたちを一時いちじてき不意打ふいうちにしたものの、わたしかれらの反応速度はんのうそくど感服かんぷくせざるをなかった。

ほとんどつぎ瞬間しゅんかんには、かれらは即座そくざ体勢たいせいなおし、あわてることなくこれからおとずれる挑戦ちょうせんむかえる準備じゅんびととのえていた。

このような反応能力はんのうのうりょく臨機応変りんきおうへん調整力ちょうせいりょくは、だれにとっても敬服けいふくあたいするものであり、とく緹雅ティアのような相手あいてたいするときには、十分じゅうぶん冷静れいせいさと智慧ちえ不可欠ふかけつなのである。


芙洛可フロッコ伊斯希爾イスシール率先そっせんして攻撃こうげきうつろうとした。

しかし、その動作どうさよりもはや緹雅ティア行動こうどうる。彼女かのじょ自身じしん技能スキル――「隠身幻象いんしんげんしょう」を発動はつどうしたのだ。

彼女かのじょ姿すがた空気くうきなか瞬時しゅんじえた。

もっとも、この技能スキル完全かんぜん追跡不能ついせきふのうというわけではない。一定いってい感知能力かんちのうりょくものであれば、緹雅ティア動向どうこうとらえることは容易よういである。

そこで緹雅ティア間髪かんはつれず、つづけざまにべつ技能スキル発動はつどうした。

七階ななかい魔法まほう――「深霧幻界しんむげんかい」。

瞬間しゅんかん戦場せんじょう濃霧のうむつつまれ、視界しかい一面いちめんしろまり、能見度のうけんどはほぼれいとなった。

突如とつじょとしておとずれた変化へんかは、だれもが一時いちじてき緹雅ティア正確せいかく位置いち見失みうしなわせ、彼女かのじょはまるで迷霧めいむそのものにけ込み、きり一部いちぶとなったかのように錯覚さっかくさせた。


濃霧のうむ一気いっきひろがったその瞬間しゅんかん赫德斯特ヘデストするど殺気さっき強烈きょうれつかんじ取り、本能ほんのうてき警戒けいかいした。かれ直感ちょっかんげていた――緹雅ティア攻撃こうげきはすでにせまっている、と。

赫德斯特ヘデスト緊張きんちょうしてかえったとき、緹雅ティア斬撃ざんげきはすでに眼前がんぜんへとせまっていた。しかし、赫德斯特ヘデスト反応はんのうするもなく、甲高かんだか金属音きんぞくおんひびき、莫特モット姿すがたまえあらわれ、その斬撃ざんげき瞬時しゅんじめた。


「さすが莫特モット容易よういわたしさくるとは。」

緹雅ティア莫特モット即応そくおうこころから賞賛しょうさんした。

莫特モット依然いぜんとして冷静れいせい態度たいどくずさず、緹雅ティアするど見据みすえながらこたえた。

緹雅ティアさま使つかうのは、きわめて高度こうど感知能力かんちのうりょくようしてようやく動向どうこうつかめる技能スキル。であれば、我々(われわれ)が依拠いきょすべきは赫德斯特ヘデスト感知能力かんちのうりょくです。」

みじか簡潔かんけつ言葉ことばでありながら、その状況じょうきょうへの完全かんぜん理解りかいつたわってきた。

「ゆえに、まず赫德斯特ヘデスト最初さいしょ排除はいじょすることが必要ひつようになる。わたしたちがさきにすべきは、赫德斯特ヘデストまもいて攻撃こうげきふせぐことなのです。」

莫特モット判断はんだんきわめて的確てきかくだった。守護者しゅごしゃたちも一定いってい感知能力かんちのうりょくそなえてはいるが、緹雅ティア技能スキル対抗たいこうするにはさらにたか精度せいど必須ひっすであり、それはだれもがることではなかった。


守護者しゅごしゃなかで、この状況じょうきょう対処たいしょできるのは莫特モット赫德斯特ヘデスト、そして迪路嘉ディルジャだけであった。

それというのも、緹雅ティアの『深霧幻界しんむげんかい』はたんなるつよ干渉効果かんしょうこうかつだけではなく、一般的いっぱんてき感知魔法かんちまほうすら遮断しゃだんしてしまうからである。さらに、この濃霧のうむなかかぎり、緹雅ティア各人かくじん状況じょうきょう容易ようい把握はあくできてしまう。

芙洛可フロッコの「魔力無限まりょくむげん」ですら、この濃霧のうむ吸収きゅうしゅうすることはできなかった。七階ななかい魔法まほうにすぎないはずが、緹雅ティア自身じしんちからくわわることで、その強度きょうどはさらにしていたのである。

この濃霧のうむなかにあっては、緹雅ティア隠匿能力いんとくのうりょく大幅おおはば強化きょうかされ、彼女かのじょ優位性ゆういせい一層いっそうたかまっていた。


赫德斯特ヘデスト莫特モット助言じょげんによって、局勢きょくせいをより明確めいかく把握はあくすることができた。

莫特モット言葉ことばどおり、赫德斯特ヘデスト依然いぜんとして自身じしん十階じゅっかい感知魔法かんちまほう――「萬象覺視ばんしょうかくし」にたよっていた。濃霧のうむなかにあっても、かれ緹雅ティア気配けはいとらえることができ、緹雅ティアがどれほど巧妙こうみょうかくそうとも、即座そくざ察知さっちし、ほか守護者しゅごしゃたちと情報じょうほう共有きょうゆうすることが可能かのうであった。

しかし赫德斯特ヘデスト感知能力かんちのうりょくでもふせげるのは攻撃こうげき一部いちぶにすぎなかった。緹雅ティア速度そくどはあまりにもはやく、先程さきほどかれ反応はんのうしきれずあやうくられるところだった。幸運こううんにも莫特モット一歩いっぽはや察知さっち行動こうどうしたことで、間一髪かんいっぱつのところで回避かいひできたのである。

ふたた緹雅ティア隠身いんしんし、その速度そくど技巧ぎこう駆使くしして位置いちえていくなか守護者しゅごしゃたちはあらためてさとった。――この対抗たいこうは、自分じぶんたちの予想よそうはるかにえるほど困難こんなんなものであると。


しかしこのとき緹雅ティアはさらに動作どうさ速度そくどげ、赫德斯特ヘデスト第二波だいには攻撃こうげき仕掛しかけてきた。

彼女かのじょみは幽霊ゆうれいのようにかろやかで、肉眼にくがんではほとんどとらえることができない。それこそが彼女かのじょしんつよさであった。

緹雅ティア赫德斯特ヘデストせまったその瞬間しゅんかん莫特モットふたたびその非凡ひぼん反応速度はんのうそくど発揮はっきし、驚異的きょういてき精度せいど武器ぶきるい、緹雅ティア攻撃こうげきむかった。

槍尖そうせん刀刃とうじん交錯こうさくし、耳障みみざわりな金属音きんぞくおんひびわたる。火花ひばな四方しほうり、ふたつの強大きょうだいちから衝突しょうとつ空中くうちゅうはげしい震盪波しんとうはこした。


素晴すばらしい。それではつぎはこれだ。」

緹雅ティアひとみ依然いぜんとして興奮こうふんひかり宿やどし、つぎ戦闘せんとうおおいなる期待きたいいだいているようであった。

彼女かのじょ身形みなり一閃いっせんし、即座そくざ自身じしん技能スキル――「分裂幻象ぶんれつげんしょう」を発動はつどうする。

本来ほんらいこの技能スキル元素げんそ技能スキルにのみ適用てきようされるものであった。だがいま、その効果こうか緹雅ティア自身じしんへと拡張かくちょうされていた。

瞬間しゅんかん彼女かのじょ姿すがた幾重いくえにも分裂ぶんれつし、数多かずおおくの幻影げんえいとなってあらわれる。その一体一体いったいいったい本尊ほんぞん見紛みまがうほど完全かんぜん同一どういつであった。

幻象げんしょう濃霧のうむわせはたしかに厄介やっかいであり、唯一ゆいいつ赫德斯特ヘデストのみがしん緹雅ティア所在しょざい把握はあくできた。そこで赫德斯特ヘデスト自身じしん八階はちかい感知魔法かんちまほう――「感知共享かんちきょうゆう」を発動はつどうする。

この魔法まほうもとでは、たとえ緹雅ティア移動速度いどうそくど極端きょくたんはやく、ほか守護者しゅごしゃたちが容易ようい感知かんちできなくとも、赫德斯特ヘデストはその感知かんちほか守護者しゅごしゃ同期どうきさせ、的確てきかく対応たいおうすることが可能かのうであった。



緹雅ティア組合くみあわせたわざ打破だはするため、芙洛可フロッコ両手りょうてたかかかげ、即座そくざひとつの幻影げんえい龍頭りゅうず召喚しょうかんした。

その龍頭りゅうず雄大ゆうだいにして威勢いせい滂沱ぼうだたる気配けはいはなち、芙洛可フロッコ召喚しょうかんこたえるやいなや、四方八方しほうはっぽうへと強烈きょうれつ龍吼りゅうこうひびかせた。まるで万物ばんぶつ粉砕ふんさいせんとするかのように。

これは芙洛可フロッコ技能スキル――「咆哮龍ほうこうりゅう四方萬咆しほうばんぽう」である。

その震動波しんどうは伝播でんぱすると、地面じめんしょうじ、空気くうきひろがる震盪波しんとうは戦場せんじょう全体ぜんたいさぶった。

この攻撃こうげきは、通常つうじょうてきにとっては間違まちがいなく致命的ちめいてきであり、たとえ緹雅ティアのような強者きょうしゃであっても、容易ようい回避かいひできるものではなかった。


――いや、それでは緹雅ティアあますぎだ。

緹雅ティア反応はんのうは、にいる全員ぜんいん驚愕きょうがくさせた。彼女かのじょ身形みなり空中くうちゅう瞬時しゅんじ変化へんかし、軽快けいかいかつ俊敏しゅんびん、まるで優雅ゆうがひょうのように、龍頭りゅうずからはなたれた震動波しんどうはあざやかに回避かいひしたのである。

芙洛可フロッコ攻撃こうげきは、狄莫娜ディモナのように全方位ぜんほういてきではなかった。そのため、攻撃こうげき軌跡きせきさえ見切みきれば回避かいひすることは可能かのうであった。くわえて、濃霧のうむなかにあっては、その精度せいど万全ばんぜんではない。

だがそのとき緹雅ティアはじめていた――芙洛可フロッコしんねらいに。

先程さきほど攻撃こうげきによって、芙洛可フロッコ見事みごと濃霧のうむはらっていたのである。

「なるほど、これが目的もくてきだったのね。見事みごと発想はっそうだわ。」


そのとき緹雅ティア姿すがた視認しにんできるようになったため、伊斯希爾イスシール自身じしん十階じゅっかい戦技せんぎ――「極星煌矢きょくせいこうし」を発動はつどうした。

それは通常つうじょう光箭ひかりやとはことなる強力きょうりょく技能スキルであり、複数ふくすう元素げんそ混合こんごうされていることで、よりたか速度そくど威力いりょくそなえていた。かれ指先ゆびさきがわずかにちからめた瞬間しゅんかん光箭ひかりや空気くうきき、まばゆ光芒こうぼうはなちながら緹雅ティアへとはやかかった。

この光箭ひかりやきわめて強大きょうだいであったが、伊斯希爾イスシール元素混合こんごう制御せいぎょ完全かんぜんには習得しゅうとくしておらず、そのため技能スキル魔法消耗まほうしょうもう通常つうじょうよりもおおくかかっていた。

それでもなお、伊斯希爾イスシール攻撃こうげきあなどれぬ威力いりょくゆうしていた。すさまじいはやさで緹雅ティアへとせまり、緹雅ティア冷静れいせいにその軌跡きせき見極みきわめた。

彼女かのじょ眼差まなざしはするどさをし、的確てきかくさばき、紙一重かみひとえけた。わずかにかたむけただけで、その攻撃こうげき肩先かたさきかすめてったのである。

攻撃こうげきけられたものの、緹雅ティア攻勢こうせいのリズムはたしかにみだされた。緹雅ティア心中しんちゅうで、芙洛可フロッコ伊斯希爾イスシール戦術せんじゅつ称賛しょうさんした。彼女かのじょ隠蔽いんぺいやぶられ、同時どうじほか仲間なかまにさらなる好機こうきあたえていたのである。


しかし、この程度ていど攻撃こうげき緹雅ティアにとって依然いぜんとして余裕綽よゆうしゃく々であった。彼女かのじょ反応はんのう終始しゅうし冷静れいせいかつ迅速じんそくであり、それによって受動的じゅどうてきになったり、あわてふためいたりすることはなかった。

濃霧のうむ消散しょうさんともに、守護者しゅごしゃたちはふたた体勢たいせいなおし、それぞれ姿勢しせい調整ちょうせいして、つぎ攻撃こうげきそなえた。


このとき佛瑞克フレック稲妻いなずまのごときはやさで移動いどうし、緹雅ティア背後はいごねらって接近せっきんした。にしたけん彼女かのじょ斗篷とほう一閃いっせんとそうとしていたのである。

――神御一式しんぎょいっしき天星一閃てんせいいっせん

それは流星りゅうせい墜落ついらくする瞬間しゅんかん抜斬ばっざんにもひとしい、神御八式しんぎょはっしきなかでも最速さいそくほこ一招いっしょうであった。

佛瑞克フレックのこの攻撃速度こうげきそくどは、凡百ぼんびゃくてきであれば防御ぼうぎょ不能ふのうといってよい。だが緹雅ティアほどの強者きょうしゃまえにしては、その斬撃ざんげき容易よういとおじるはずもなかった。

緹雅ティア身形みなりかげのように軽巧けいこうで、素早すばやかがめて佛瑞克フレック攻撃こうげきけた。彼女かのじょ一瞥いちべつすらくれず、まるで本能ほんのう見抜みぬいていたかのように、その一撃いちげきをかわしてみせたのである。


この情況じょうきょうて、佛瑞克フレック神御二式しんぎょにしき月輪九重天げつりんきゅうじゅうてん施展せてんした。

この剣技けんぎ九道きゅうどう剣気けんき連続れんぞくしてはなち、対手あいて追撃ついげきするわざである。

しかし、佛瑞克フレック剣技けんぎ速度そくどりてふたた攻撃こうげき仕掛しかけたとしても、剣気けんき緹雅ティア防御ぼうぎょやぶることは依然いぜんとして困難こんなんであった。

緹雅ティアにした武器ぶきでほんのかる一度いちどながしただけで、佛瑞克フレック攻撃こうげき容易ようい無効化むこうかしてしまった。

彼女かのじょ流暢りゅうちょう動作どうさ正確せいかく反応はんのうは、佛瑞克フレック一撃一撃いちげきいちげきをことごとく困難こんなんなものにし、戦士せんし職業しょくぎょうとしてのかれでさえ、緹雅ティアのような強敵きょうてきまえにしては優位ゆういめることができなかった。


佛瑞克フレックわたしにせず、おもって進攻しんこうしなさい!」

緹雅ティア佛瑞克フレック攻撃こうげき一抹いちまつ躊躇ちゅうちょ見抜みぬいた。かれ剣刃けんじんるうたびに確信かくしんいた遅疑ちぎび、まるで彼女かのじょきずつけることをおそれているかのようであった。

「はい、緹雅ティアさま!」

佛瑞克フレック即座そくざ応答おうとうした。

神御三式しんぎょさんしき太極乱舞斬たいきょくらんぶざん

かつて不破フハ耶夢加得イェモンガド対峙たいじしたさいはなったおな剣技けんぎ火焔かえんまとった斬撃ざんげき緹雅ティアおそいかかる。

しかし、その一撃いちげきもやはり緹雅ティア武器ぶきによってめられた。

緹雅ティア最高階さいこうかい物理ぶつり魔法抗性まほうこうせいほこるとはいえ、佛瑞克フレック攻撃こうげき完全無傷かんぜんむしょうしのぐことはできず、武器ぶきによる反撃はんげき余儀よぎなくされた。

この物理攻防戦ぶつりこうぼうせんにおいて、佛瑞克フレックは「手加減てかげん」している緹雅ティア互角ごかくわたうことができていた。


しかし、ほか守護者しゅごしゃたちにとっては、その速度そくど追随ついずいするのは困難こんなんであった。

迪路嘉ディルジャ莫特モットのぞけば、緹雅ティアきわめて迅速じんそくあゆみには、ほとんどだれいつくことができなかった。

緹雅ティア一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくじつ軽快けいかい正確無比せいかくむひであり、たとえ頂点ちょうてんのプレイヤーでさえ、彼女かのじょのようにうごくことはむずかしい。

そのため、佛瑞克フレック強力きょうりょく剣技けんぎしたとしても、緹雅ティアおおきな脅威きょういあたえることはできず、ほか守護者しゅごしゃたちにとっては、なおさら容易ようい参戦さんせんできる状況じょうきょうではなかった。



そのとき緹雅ティア佛瑞克フレック攻撃こうげきけると、突如とつじょ進路しんろえ、ほか守護者しゅごしゃたちへと猛然もうぜんおそいかかった。まるでかれらの連携力れんけいりょくたかめるかのように仕向しむける行動こうどうであった。

その身影しんえい佛瑞克フレックをもしのはやさで、瞬時しゅんじ伊斯希爾イスシール芙洛可フロッコ眼前がんぜんへと到達とうたつした。

彼女かのじょ華麗かれい刀法とうほう空中くうちゅうするど光芒こうぼう幾筋いくすじえがき、二人ふたり一挙いっきょ撃破げきはせんとする。

本当ほんとう戦闘せんとうは、ているだけじゃ駄目だめよ!」

緹雅ティアはそうはなち、手中しゅちゅうかたなるって猛攻もうこう仕掛しかけた。

伊斯希爾イスシール芙洛可フロッコ即座そくざ反応はんのうし、防御ぼうぎょ態勢たいせいった。

芙洛可フロッコ両手りょうて瞬時しゅんじ龍爪りゅうそうへと変化へんかさせる。これは彼女かのじょ特殊技能とくしゅスキルであり、その爪力そうりょく緹雅ティア刀刃とうじん互角ごかくわたえるほどの威力いりょくゆうしていた。

一方いっぽう伊斯希爾イスシール手中しゅちゅう光元素ひかりげんそ構築こうちくされたやいばかためる。この光刃こうじんつよ貫通力かんつうりょくち、さらにまばゆかがやきをはなつのだった。


しかし、これらの能力のうりょくでは緹雅ティア攻撃こうげき効果的こうかてきはばむことはできなかった。

速度そくどめんでは、かれらはまったく緹雅ティアあゆみにいつけない。佛瑞克フレック全力ぜんりょくくし、援護えんごこころみても、かれ伊斯希爾イスシール芙洛可フロッコとの連携れんけい不十分ふじゅうぶんで、有効ゆうこう協同作戦きょうどうさくせんきずくことはできなかった。

その結果けっかかれらの防御ぼうぎょいちじるしく脆弱ぜいじゃくえた。

わずかみっつのターンもたぬうちに、緹雅ティア予想外よそうがい歩法ほほうもちい、かれらの攻撃こうげきをかわしながら、刀背とうはい二人ふたりからだ的確てきかくえ、一人ひとり、また一人ひとり退場たいじょうさせた。

抵抗ていこうするすべもなく、両者りょうしゃ瞬時しゅんじへとたおんだ。


「はい、お二人ふたりはここまでですね!」

緹雅ティア声色こわいろかるやかで、それがまるで単純たんじゅん遊戯ゆうぎにすぎぬかのようにひびいた。

彼女かのじょ一切いっさいいきみだすことも、動作どうさめることもなかった。

伊斯希爾イスシール芙洛可フロッコ退しりぞいた直後ちょくご緹雅ティアはすぐさまひるがえし、つぎ標的ひょうてきである莫特モットへの対処たいしょそなえた。

そのとき莫特モットすで赫德斯特ヘデスト背後はいごかばい、防御ぼうぎょ重心じゅうしんかれへとき、緹雅ティア攻撃こうげき動向どうこう慎重しんちょう観察かんさつしていた。

莫特モットふか理解りかいしていた――赫德斯特ヘデスト退場たいじょうすれば、緹雅ティアふたた防御不能ぼうぎょふのう連携攻撃れんけいこうげきし、のこものたちは一気いっき敗北はいぼくへとまれるであろうことを。


赫德斯特ヘデスト慎重しんちょう感知かんちつづけており、なにかを準備じゅんびしている様子ようすだった。

緹雅ティアはおおよその計画けいかくさっしていたが、とくめることなくうごきを継続けいぞくした。

一方いっぽう德斯デスおのれ気配けはいかくし、機会きかいうかがっていた。

しかし、緹雅ティア速度そくど匹敵ひってきするものだれ一人ひとりとして存在そんざいせず、全員ぜんいん完璧かんぺき連携れんけいげねばならなかった。

そのとき佛瑞克フレックふたた緹雅ティアかって突撃とつげきした。

かれねらいは明白めいはくで、緹雅ティア牽制けんせいし、ほかものたちに攻撃こうげき機会きかいあたえることにあった。

だが、緹雅ティアはもはや佛瑞克フレックすきあたえなかった。

彼女かのじょはさらに速度そくどげ、精妙せいみょう足運あしぐびで瞬時しゅんじ佛瑞克フレック背後はいごへとまわんだ。


刀背とうはい佛瑞克フレックれようとしたその瞬間しゅんかん佛瑞克フレック戰技せんぎ――神御六式しんぎょろくしき蓮舞斬れんぶざん

斬撃ざんげき一閃いっせん蓮花れんげのごとくひろがり、るうたび風元素ふうげんそこす不可視ふかし範囲はんい攻撃こうげきともなった。

これは佛瑞克フレックほこ最強さいきょう剣技けんぎひとつであり、攻防一体こうぼういったい妙技みょうぎであった。

見事みごと剣撃けんげきだね、でも不破フハおじさんには、まだすこおよばないかな!」

緹雅ティア称賛しょうさんしつつも、同時どうじ守護者しゅごしゃたちの未熟みじゅく部分ぶぶんするど指摘してきする。

正直しょうじきなところ、彼女かのじょ教導きょうどうさいにおいてもじつすぐれていた。

佛瑞克フレック反撃はんげきたしかに緹雅ティア一瞬いっしゅん後退こうたいさせるほどであった。

佛瑞克フレックはそのすき前進ぜんしん攻撃こうげきてんじようとした――しかし、想定外そうていがい緹雅ティア両側面りょうそくめんからおそいかかってきたのだ。

その速度そくど赫德斯特ヘデスト感知かんちすらいつけぬほどであった。

状況じょうきょう把握はあくするもなく、緹雅ティア刀背とうはい佛瑞克フレック直撃ちょくげきし、かれはそのまま退場たいじょうとなった。

じつは、緹雅ティアさき後退こうたい刹那せつなに、すでに佛瑞克フレック攻撃方向こうげきほうこうり、あらかじ幻象げんしょうをその軌道きどう周囲しゅうい配置はいちしていたのである。

そして佛瑞克フレックとおりかかった瞬間しゅんかん、その幻象げんしょう姿すがたあらわし、必然ひつぜん一撃いちげきはなったのだった。


これもまた、緹雅ティア誘導戦術ゆうどうせんじゅつひとつであった。

緹雅ティアは、赫德斯特ヘデストつねに「萬象覺視ばんしょうかくし」だけをもちいて、自身じしん幻象げんしょう感知かんち戦闘せんとうおこなっていることを把握はあくしていた。

だからこそ、彼女かのじょ最初さいしょから、より高位こうい感知魔法かんちまほう使つかわねば探知たんちできない「神隠幻象じんいんげんしょう」を発動はつどうしていたのである。

当然とうぜん高位こうい感知魔法かんちまほう莫大ばくだい魔力まりょく消耗しょうもうする。

したがって、先程さきほど戦術せんじゅつは、完全かんぜん赫德斯特ヘデストねらったわなだったのだ。


しかし、佛瑞克フレック退場たいじょうしたものの、のこ仲間なかまたちに貴重きちょう時間じかんいでいた。

その瞬間しゅんかん德斯デス莫特モット背後はいごちるかげからおどて、時空魔法じくうまほう――時空之鐘じくうのかね発動はつどうした。

この魔法まほう指定していした範囲はんいないにいる相手あいて移動速度いどうそくど大幅おおはば低下ていかさせ、さらに一定時間いっていじかんあいだ、その空間くうかんから脱出だっしゅつすることを不可能ふかのうにする。

この技能スキル発動はつどう莫大ばくだい魔力まりょくようし、くわえて相応そうおう準備時間じゅんびじかん必要ひつようとする。

ゆえに德斯デスは、仲間なかまたちがいでくれた時間じかん最大限さいだいげん活用かつようし、この一撃いちげきはなつことができたのであった。



このとき赫德斯特ヘデスト自身じしん技能ぎのう――天空之門てんくうのもん発動はつどうした。

天空てんくう巨大きょだいもんひらかれ、そのとびらひらかれると同時どうじに、広範囲こうはんい光元素ひかりげんそ魔法攻撃まほうこうげきそそいだ。

赫德斯特ヘデスト攻撃こうげきわるのと同時どうじに、莫特モットもまた技能ぎのう――神槍しんそう世界樹型態せかいじゅけいたい死荊吞噬しいばらどんしょく発動はつどうした。

ほのおまとった荊棘いばら緹雅ティアへと連続れんぞく攻撃こうげき仕掛しかけ、その猛攻もうこうは、もはや「ただ披風ひふうとせばよい」という本来ほんらい目的もくてきわすれさせるほどであった。

「まったく、披風ひふうとせってったんだよ!やせなんてだれったのさ!」

煙霧えんむなかからこえた緹雅ティアいかりのこえに、全員ぜんいんいきんだ。

そのこえは――かれ自身じしん背後はいごからひびいていたのだ。

「それじゃ、みんな授業じゅぎょうわりだよ!」

緹雅ティア瞬時しゅんじ刀背とうはい三人さんにんたたみ、かれらを次々(つぎつぎ)と退場たいじょうさせた。

こうして、この試練しれんまくじたのであった。


緹雅ティアさま…どうやって先程さきほど攻撃こうげき回避かいひされたのですか?」

德斯デス疑問ぎもんくちにした。

德斯デス~、なにしろ私はきみ指導者しどうしゃだよ。きみ使つかくらい、からないはずがないだろ?」

「と、ということは…緹雅ティアさま最初さいしょから見抜みぬいていたのですか?」

「もちろん。だってきみのあのわざとらまれば、わたしでも容易よういにはのがれられないからね。だから最初さいしょから警戒けいかいしておく必要ひつようがあったんだ。」

「と、ということは…我々(われわれ)が先程さきほどたおしたのは実際じっさいには…」

「そのとおり。ただのわたし幻象げんしょうにすぎないよ!」

「ですが、私は感知魔法かんちまほう緹雅ティアさま位置いち確認かくにんしました。間違まちがえるはずが…!」

赫德斯特ヘデストくやしげに反論はんろんした。

「もしかして…」

「ふふ~ん、そう。そのとおり。わたし幻象技能げんしょうぎのうなかには、実体幻象じったいげんしょうっていうわざがあるんだ。これは感知技能かんちぎのうだけじゃ見破みやぶれないよ。」

「さすが緹雅ティアさま…我々(われわれ)の戦術せんじゅつ最初さいしょからっていたのですね!」

当然とうぜんさ。そうじゃなきゃ、どうしてきみたちの指導者しどうしゃになれるの? でも必要ひつようはないよ~。今回こんかい戦闘せんとうは、きみたちが自分じぶんなにりないかをるためのものだったんだから。」

緹雅ティアとの実戦じっせんつうじて、守護者しゅごしゃたちは彼女かのじょ圧倒的あっとうてき実力じつりょくにねじせられた。

しかし、それでもかれらはたしかにるべき経験けいけんつかんだはずだ、とわたししんじている。



王家神殿おうけしんでん食堂しょくどう

この食堂しょくどうは、公会こうかい拠点きょてんないにもともと存在そんざいしていた施設しせつであり、おもにプレイヤーたちが多様たよう食文化しょくぶんか体験たいけんできるようにもうけられたものだった。

食堂しょくどう内部ないぶには、栽培地さいばいち牧畜地ぼくちくちまでそなえられており、自由じゆう利用りようすることができた。

さらに、外部がいぶから食材しょくざいあつめ、この保管ほかんすることも可能かのうであった。

この世界せかいてからも、その仕組しくみはすこしもわっていない。

わたし先日せんじつ、すでにここ食材庫しょくざいこ検分けんぶんしたが、保管ほかんされている物資ぶっし十分じゅうぶん確保かくほされていた。

ただし、印象いんしょうとしては、どうもゲームちゅうものとは微妙びみょうことなるようにもかんじられた。


食堂しょくどうNPC料理人りょうりにん全部ぜんぶ十人じゅうにんおり、ゲームない存在そんざいする料理りょうりであれば、どんなものでもかれらは提供ていきょうすることができた。

また、プレイヤー自身じしん調理ちょうり参加さんかでき、料理りょうり愛好あいこうするものにとってはおおきな楽しみのひとつとなっていた。

この食堂しょくどうなかには、わたしたちそれぞれ専用せんようせき用意よういされている。

緹雅ティア自分じぶんせきこしろすなり、不満ふまんげにさけんだ。

つかれた~! おなかすいたぁ!」

「おつかれさま。さっきの活躍かつやく本当ほんとう見事みごとだったよ。」

「ふん~! たりまえでしょ!」

「じゃあ、ご褒美ほうび一度いちどわたし腕前うでまえ披露ひろうしてみようか。まあ、ちゃんとした料理りょうりになるかどうかはからないけどね。」

わたしがそううと、緹雅ティア一気いっき元気げんきもどした。

「そういうことなら~! なにたのもうかな? ステーキ! きゅうべたくなっちゃった! 三分熟ミディアムでおねがい!」

「はいはい~、まかせて。すこっててね。」


わたし食堂しょくどう厨房ちゅうぼうはいると、料理長りょうりちょう克諾羅クノロわたしるなり、すぐにみなれいるよう指示しじした。

「そんなにかしこまらなくていい。今日は緹雅ティアのために料理りょうりつくりにただけだから。」

緹雅ティアさまのおためですか!? みなもの注目ちゅうもく! 手元てもと仕事しごとめ、全力ぜんりょく凝里ギョウリさま支援しえんせよ!」

「おおおおおおっ!」

厨房ちゅうぼう職人しょくにんたちは、なぜか一斉いっせい士気しきたかまった。

「おねがいだから、そんなことしないでくれ。わたしまかせればいい。きみたちは自分じぶん仕事しごとつづけてくれ。」

「いえいえ、凝里ギョウリさまがここにられるのははじめてのこと。やはりわたしたちで支援しえんするべきです!」

克諾羅クノロは、なおも手助てだすけしようとしていた。

かけによらず、わたしすくなくとも十数年じゅうすうねん料理りょうり経験けいけんがあるんだぞ。」

わたしするど克諾羅クノロけた。

「申しもうしわけありません、屬下しょくか出過でしゃばりました。」

「ふん~」

独身どくしんおとことして、多少たしょう料理りょうりができるのはべつ特別とくべつなことじゃない。節約せつやくのため、自炊じすいするのは日常生活にちじょうせいかつかせない技術ぎじゅつだ。

……でも、なんだかさっきからみょう違和感いわかんがあるような?

まあいい、とにかく食材しょくざいさがそう! わたしはらって仕方しかたがないんだ。


わたし厨房ちゅうぼうなか使つかえそうな食材しょくざいさがはじめた。おもいのほか、この食堂しょくどうには豊富ほうふ食材しょくざいそろっていて、新鮮しんせんものはもちろん、現実世界げんじつせかいでは滅多めったかけないようなしなまで容易よういつけられる。

さっき緹雅ティアがステーキをべたいとっていた。よし、それならつくろう!

調理器具ちょうりきぐった瞬間しゅんかんむねおくからおさえきれない高揚感こうようかんがった。料理りょうりとは、わたしにとってたんなるはらたす行為こういではなく、むしろ楽しみであり、こころゆたかにする芸術げいじゅつなのだ。

美味おいしい料理りょうりつくるということは、おのれこころとの対話たいわである。食材しょくざい調味料ちょうみりょう完璧かんぺきあじまれるとき、その達成感たっせいかんなににもえがたい。


わたしはステーキにく冷蔵庫れいぞうこからして、まず解凍かいとうはじめた。ここで冷蔵庫れいぞうことは、実際じっさいには氷晶石ひょうしょうせきによって低温ていおん維持いじしているだけのものだ。

ステーキという食材しょくざいあつかいをあやまってはならない。冷蔵庫れいぞうこからしたあとかなら常温じょうおんもどしておく必要ひつようがある。そうすることで、げたとき表面ひょうめんこうばしく、中身なかみやわらかく仕上しあがる。もしこおったままあついフライパンにれれば、外側そとがわげてしまってもなかはまだつめたいままになってしまうのだ。

私はにく慎重しんちょうにまないたうえき、うすしお胡椒こしょうりかけた。これはもっと基本的きほんてき調味ちょうみであり、いステーキにはかせない土台どだいである。調味料ちょうみりょうにく両面りょうめん均等きんとうり、肉質にくしつにしっかりとかおりをませる。こうして準備じゅんびととのえば、つぎあついフライパンで段階だんかいすすむ。

その、私はフライパンを適切てきせつ温度おんどまで加熱かねつした。この工程こうてい非常ひじょう重要じゅうようだ。フライパンは十分じゅうぶんあつくなければならない。そうすることで肉汁にくじゅうなかめ、旨味うまみがさないのだ。


鍋面なべめんからかすかなジューというおとひびいた瞬間しゅんかん、私は温度おんどがすでに到達とうたつしたことをった。

私はステーキをそっとなべなかき、すぐにあの馴染なじぶかむね高鳴たかならせる音色ねいろひろがった。そのおとわたしにとって一曲いっきょく愉快ゆかい楽章がくしょうのようであり、その一音いちおんごとにわたしはら自然しぜんはじめた。

ステーキがなべなかねるようにけるとき、私はすこ角度かくど調整ちょうせいし、すべてのめん均等きんとうねつけるように心掛こころがけた。

このときあぶらにくうことでのぼかぐわしいかおりがはなける。ここでバターをくわえて『アロゼ(arrose)』をおこなうことで、あじはさらに昇華しょうかし、肉質にくしつ奥深おくぶかくまで旨味うまみわたらせる。

まださらげていないというのに、その芳醇ほうじゅんかおりだけでおもわずよだれこぼち、くちなかうるおっていくのをかんじた。


ステーキの両面りょうめんうつくしい黄金色おうごんいろがったところで、凝里ぎょうり慎重しんちょうなべから取りとりだし、さらうえ数分間すうふんかんやすませた。

この工程こうていによって肉汁にくじゅうき、けたとき均等きんとうひろがり、けっしてさらそこながることはない。

ステーキをやすませているあいだに、かれはソースづくりにりかかった。

バターをベースにしたなべ少量しょうりょうのバターをとし、はじめた瞬間しゅんかんなまクリームと香辛料こうしんりょうくわえる。

鍋中なべなかひろがる濃厚のうこうかおりは、にく旨味うまみ調和ちょうわして、最高さいこう相性あいしょうかなでていた。


つづいて、わたしはステーキをそっとなべもどし、ソースのかおりをさらにわせた。

そのまま数分間すうふんかんやすませ、ソースが肉質にくしつおくまでむようにした。

こうした処理しょりにより、一口ひとくちごとにバターの濃厚のうこうかおりがひろがる。

最後さいごにアスパラガスとブロッコリーをえ、いろどりをくわえた。

あざやかなみどり野菜やさい黄金色おうごんいろのステーキが対照的たいしょうてきならび、ながめはいきむほどうつくしかった。

わたし慎重しんちょうにナイフをり、けようとした瞬間しゅんかん鼓動こどうおもわずはやまった。

この瞬間しゅんかんじつのところもっと緊張きんちょうする――うまくひらけるか、理想りそうのミディアムに仕上しあがっているか。

わたし刃先はさきをそっと表面ひょうめんて、やいばすべらせる。ステーキはすっと二分にぶんされた。

中心ちゅうしんあわべにひろがるのを瞬間しゅんかんかさねてきた手間てま結晶けっしょうたりにしたがして、むね言葉ことばにしがたい高鳴たかなりでたされた。

これこそわたしもとめてきた理想りそうのステーキ――外側そとがわこうばしく、なかやわらかく多汁たじゅう

これまでは、わたしはよくスーパーでやす特価とっかのステーキを適当てきとうえらんでいていたし、ゲームのなかでこそ料理りょうりためすことはできても、そのあじ実際じっさいあじわうことはできず、どこか心残こころのこりがあった。

けれどいまちがう。

この世界せかい食事しょくじ本物ほんもので、一口ひとくちごとの旨味うまみ自分じぶんしたたしかにかんじられる。

のぼこうばしいにおいにおもわずつばみ込み、わたしあわててちいさくけてくちはこんだ。


うおおおお! ――わたしはもはやんでもいはない!


その一片いっぺんのステーキはくちなかでとろけ、やわらかく多汁たじゅうで、まったくちからさえらなかった。

まるで一口ひとくちごとにもっと純粋じゅんすい美味びみあじわっているかのようだ。

この食感しょっかんは、わたしいだいていたあらゆる期待きたいはるかにえていた。

どうやら、わたし努力どりょく無駄むだではなかったらしい。

いままでてきた数多かずおおくの料理番組りょうりばんぐみまなんできたレシピ、すべてが無駄むだではなく、この瞬間しゅんかんさいこうかたちむくわれたのだ。


わたしむね高鳴たかならせながらステーキをはこしたが、厨房ちゅうぼう瞬間しゅんかんおもわずおどろいてあしめた。

なぜなら、ちょうどそこに芙莉夏フリシャたからだ。

こころなかで「しまった!芙莉夏フリシャぶんをすっかりわすれていた……」とあせる。

「おやおや~老身ろうしんいたぞ!なんじ、なかなか積極的せっきょくてきじゃないか!」

めずらしく芙莉夏フリシャにからかわれ、私はおもわずかおあかくなった。

「こら~あねさま、そんなふうにからかわないであげて!」緹雅ティアわらいながらくちはさむ。

「……芙莉夏フリシャ、それに緹雅ティア、ぜひわたし料理りょうりあじわってくれ。」

仕方しかたなく、わたしぶんさきした。あとでもう一枚いちまいけばいい。

「わあ!美味おいしそう!ねえ、あねさま、そうおもうでしょ?」

「ふむ……なんじ意外いがい腕前うでまえがあるではないか。むかしくらべると随分ずいぶんわったな。」

「えっ?」

「……なんでもない。」

芙莉夏フリシャわたし疑問ぎもんわず、夢中むちゅうになってはじめた。

二人ふたり満足まんぞくそうにステーキをえたのをて、ようやく私はむねろした。

「よし……これからは毎月まいつき定番料理ていばんりょうりにしよう。」


「では、これから汝等なんじら行動方針こうどうほうしんは、すでにまったのだな?」

芙莉夏フリシャたずねた。

「はい、ちかくのちいさなむらをまず調査ちょうさするつもりです。できるだけおおきなうごきはけ、なにかあればこの聖甲蟲通訊装置せいこうちゅうつうしんそうちとおじて連絡れんらくしましょう!」

「そのてん老身ろうしんまかせて安心あんしんせよ! むしろなんじほうこそ……緹雅ティアのことをちゃんとまもれるのか?」

芙莉夏フリシャ一言ひとことで、私はハッとづいた。

これから緹雅ティアともたびをしなければならないのだ。

「そ、その……わ、私は……」

凝里ギョウリ! おまえはそういうところが駄目だめなのだ! それではわたし安心あんしんできぬぞ!」

「が、がんばります!」

「ははははは!」

わたし真剣しんけんこたえると、緹雅ティアおもわずわらした。

そののち、私は芙莉夏フリシャ今後こんご大体だいたい計画けいかくつたえ、いよいよこの世界せかいへと準備じゅんびととのったのだった。



(やく)(さん)(げつ)以上(いじょう)時間(じかん)(つい)やし、ようやく(まえ)(しょう)すべての修正(しゅうせい)()えることができました。

注音(ちゅうおん)()けるため、最初(さいしょ)(ふた)つの(しょう)文字数(もじすう)(おお)くなりすぎてしまい、やむを()(ふた)つの段落(だんらく)()けました。

順序(じゅんじょ)調整(ちょうせい)方法(ほうほう)()からなかったので、第二部(だいにぶ)をこの位置(いち)()(かたち)にしました。


(まえ)(むっ)つの(しょう)には、いくつか(ほそ)かな修正(しゅうせい)(くわ)えていますが、内容(ないよう)自体(じたい)(おお)きな変更(へんこう)はありません。

(おも)細部(さいぶ)描写(びょうしゃ)()(くわ)え、(のち)(しょう)()みやすくするための調整(ちょうせい)や、文章(ぶんしょう)論理(ろんり)構成(こうせい)(ととの)えました。

この修正(しゅうせい)によって、読者(どくしゃ)(みな)さまがより快適(かいてき)()んでいただければ(さいわ)いです。


もし()んでいて不自然(ふしぜん)(かん)じる箇所(かしょ)や、(わたし)()づいていない(てん)などがありましたら、ぜひ(おし)えてください。

該当(がいとう)する部分(ぶぶん)(あらた)めて見直(みなお)し、どのように調整(ちょうせい)すべきか(さい)検討(けんとう)いたします。

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