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 ようやく大河の渡り船に乗れ、王国南部を出られた。

 ここからはひたすら街道を北上すれば王都に着く。街道は王国騎士が警備、巡回をしているから比較的安全だと聞いていた

「んだけどなー」

 スピカは10人ほどの盗賊に囲まれていた。

 薄暗がりで相手の顔もよく見えない。それでなぜ盗賊かと分かったかといえば、インスペクト・レンズで彼らのステータスを見たからだ。ご丁寧に盗賊が1から10。街道に出没する敵なせいか、そんなに強くない。あのトール村の神殿にいた神官の方がずっと強い。

「へぇ、こりゃ上玉じゃねぇか」

 盗賊たちは下品な笑い声を上げる。

 腰を落とし、左右に体を揺らして挑発する彼らは、ゴブリンのようだった。

 人である分、こちらの方がマシか。

 そもそもこの事態、スピカが王都への道を急いだことが原因だった。

 渡り船を降りるとすでに昼過ぎ。安全を考えるならそこの波止場町で宿をとるべきだった。しかしスピカは街道なら、王国騎士が巡回しているから大丈夫と考えて出発してしまったのだ。

 ま、野宿テントもあるし、アイテムボックスには食材が山どころか山脈になるぐらい詰まっている。その気になれば街に半年寄り付かず生活する事だってできるだろう。

 スピカはそこでようやくショートソードを抜く。

 そして抜ききると同時に身をかがめて目の前の盗賊に突き出した。

「ぐおっ」

 スピカの早業、盗賊たちは目で追うことすらできなかったようだ。

 続けざまに二人、三人と斬ってゆく。

 レベル差のせいか、軽い一撃で彼らは戦闘不能に陥り、その場にぐったりと倒れこんだ。この戦闘不能状態で止めを刺せば、彼らの命を奪うことができるだろう。しかし、スピカは倒れさえしてくれればいいので、そこまではしなかった。

 戦闘不能に追い込めば、十分なアイテムやお金を手に入れられるからでもある。

 盗賊は素早さが売りの敵でもあり、ようやくそこで反撃に出てきた。スピカに短剣が突き出された。が、難なくかわして、カウンターに蹴りを入れる。大した一撃にはならなかったが、相手をひるませることができた。ひるんだが最後、スピカのショートソードの錆となる。

「く、くそっ!」

 盗賊の一人がナイフを投げた。

 そうだ、こいつらは飛び道具も使う。確率で状態異常の毒になるのだ。

 別に毒になっても自分で解毒できるので気にしない。スピカは投げナイフを受けて、そのまま二人の盗賊を倒した。受けたナイフによるダメージは1。そして毒を受けた。

 毒を受けるのは初めてではないけれど、滅多にないことにちょっと驚いた。

 盗賊たちは毒を与えたことで、顔に希望が宿った。一方的な展開を打開できるかも知れないと思ったのだろう。強い敵にはいいアイテムやお金が落ちるものだから。

 残る盗賊3人はまとめてかかってきた。

 剣を振った直後だったので、剣を横にして三人の攻撃を受ける。いくらレベル差があろうと大人の男三人とスピカでは敵わない。剣のガードを崩され、スピカは慌てて飛びのいた。

 そこから盗賊たちの猛攻が始まった。スピカは素早く繰り出される短剣を防ぐに精一杯。やはり弱いとはいえ、数に押されると辛い。

 スピカは退きながらナイフを剣で受けつつ、打開の隙を狙う。

 ああ、もう。魔法が使えたならいいのに。

 回復魔法のことじゃない。精霊魔法などの攻撃魔法のことだ。スピカにはそっちにどうも才能がないようだった。

 盗賊の短剣の振り下ろしを、両手で剣を掴んで受けた。後ろに伸ばした足を曲げて、受けた剣の力を受け流す。そして、そのまま体を伸ばすように押し返した。

 スピカの全体重。盗賊の剣を押し返し、よろめかせることに成功した。

 そこから一気に攻撃に転じた。

 数で圧されているなら速さで勝負。強さでいうならこっちの方が強いんだから。

 ダメージ覚悟での特攻。一人を片付ける。勢いに任せて二人目の胸を斬った。

「最後っ!」

 飛び掛るように三人目に襲い、ようやく夕方の街道での襲撃を終わらせることができた。

 ショートソードをしまって、盗賊たちの落としたアイテム、お金を探る。

「なんだ。大して持っていないじゃない」

 あれだけの苦戦を強いられた割に収穫は乏しく、スピカは盗賊のわき腹を蹴り飛ばした。戦闘不能とは気絶とかそんな感じらしい。スピカは両親に戦闘不能寸前まで何度も追い込まれたが、戦闘不能になったことは一度だけ。蹴りつけたぐらいじゃ死なないと分かっていた。

 そして、そこでようやく自分の毒を魔法で解いて、街道を北へと歩き始めた。


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