9
盗賊たちを片付けてしばらくすると、王国騎士の巡回と遭遇した。
「こんばんは、お嬢さん。ちょっとよろしいですか?」
二人組みの王国騎士。
職務質問みたいなものだった。少女が一人、夜に街道を歩いているなんて何かあるに違いない。そういうことらしい。
スピカは名前とか、どこから来たとか、どこへ行くとか、なぜ一人でこんなところをうろついているのか。宿を取らなかったのか、とかいろいろ質問攻めにあった。
スピカは曖昧に答えて正確なことは言わない。
最後に身分を証明するものはないかと聞かれた。
前世での警官からの職務質問と変わらない。前世じゃ警察と関わることなく終わったはずだ。初めての職務質問にスピカは緊張してしまう。それがかえって、王国騎士たちに不審に見えたようだった。
「こんな夜遅くでは危険です。この先の町までご一緒いたしましょう」
暗に連行するというわけだ。まずい。確かにこの先の町はスピカの目的地であるけれど、連行されるのではわけが違う。
考え抜いた末、いつかの手を使うことにした。
王国騎士の一人がスピカの腕を掴もうとしたその瞬間、スピカの姿はすっと消え、スピカ自身、身を引いたので騎士の手は空をかいた。
「なっ!」
一部始終を見ていたも一人の王国騎士が驚愕する。
目の前の少女は突然姿を消し、そこに一陣の風が吹き抜ける。
「ひっ」
手を伸ばした王国騎士がのどの奥を引きつらせて、後ずさった。
月のない夜だったこともその光景をより不気味にさせたのだろう。
スピカが使ったのはアイテム・カメレオンのうろこ。以前に白騎士と噂になったあの遺跡のときと同じだ。人前からちょっと姿を消しただけ。
驚かれたが、今回はどうも違うようだ。
騎士たちの顔には驚きと同時に恐怖が滲み、ガサリと街道傍の草が鳴ると、騎士たちは大きな悲鳴を上げて、駆け出していった。
あ、そっちはさっき盗賊に囲まれた方……。
10の戦闘不能の盗賊が街道に倒れているはずだ。すっかり恐怖に取り付かれた彼らに、ただの戦闘不能の彼らがどう映るのか。
いや、気にしても仕方がない。
スピカはそのまま街道を北に行き、途中でカメレオンのうろこの効果が切れたのを確認して、街道脇にテントを張った。そしてそのまま朝が来るのを待ち、再び街道を北上した。
まさか後日、この街道に女の幽霊が出るなんて噂が立つとはこのとき思いもしなかった。




