第1巻・第0章「始まり」
第0章
人の人生というものは、驚くほどあっけなく変わってしまうものだ。
つい最近まで、俺は義父に家を追い出された。どうしてかって? まあ、少しばかり俺の人生について話してやろう……。
俺の実の父親は、俺がまだ幼い頃に薬物の過剰摂取でくたばった。顔も知らないし、正直なところ、知りたいとも思わない。母親は俺が二歳のとき、さっさと新しい男を見つけた。
認めるよ。最初のうちは何も問題なかった。だが、母親が仕事で朝まで帰ってこなくなると……。まあ、その頃にはすでに学校に通っていたから、まだマシだった。もちろん、学校では同級生にいじめられていたが、あいつと同じ家にいるよりはずっとマシだった。
学校の休み時間には、精神病の薬を飲んでいた。薬を全部一気に飲んで、このクソみたいな人生を終わらせてやろう。そんな考えが何度も頭をよぎった。けど……正直に言うと、俺は死ぬのが怖い。
まあ、どうでもいいか。
授業が終わって家に帰ると、そこには「大好きな」義父が待っていた。刑務所に何度か入ったことのある男だ。
その日は、そいつはひどく酔っ払っていた。夜遅く、義父は俺を殴りつけた。俺は暖房器具に縛りつけられ、口にはガムテープをしっかり貼られていた。そして、俺への用が済むと、今度は母親に手を出した。
もう、こんな生活には耐えられなかった。
「クソ野郎、死ね!」
そう叫びながら、俺はナイフを手にそいつへ襲いかかった。
だが、相手に攻撃する前に叫ぶなんて、自分の三倍はありそうな相手に立ち向かうときには、あまり賢いやり方じゃなかったらしい。次の瞬間には、俺は床に倒れ、そいつに何度も蹴られて痛みにのたうち回っていた。
けれど、どうやら俺を家に残しておくのは危険だと判断したらしい。そいつはすぐに俺を家から追い出した。
母親はやめてくれと頼んだが、そいつは母親に選択を迫った。俺か、そいつか。母親は迷うことなく、そいつを選んだ。
よっぽどそいつのことが好きなんだろうな。
おかしな話だ。俺が愛し、その人のためなら殺人だってする覚悟があった相手が、自分を殴る酔っ払いと俺を天秤にかけて、俺を捨てたんだから。
その夜、母親は何度も俺に謝ってきた。泣きながら、許してほしい、分かってほしいと懇願していた。
まあ、俺は母親を恨んではいない。何しろ、俺に嫌悪感を抱かなかったのは、母親だけだったからな。それだけは感謝しているよ。
学校に通っていた頃から、俺はずっと早く死にたいと思っていた。友達なんて一人もできたことがない。ましてや彼女なんているわけがない。女の子たちは俺にチャンスすらくれなかった。まあ、その理由は言うまでもないだろう。
金もなければ、地位もない。顔だってよくない。それに、さっきも言ったように、学校ではよくいじめられていた。だから、いつもどこかしら傷だらけだった。
一度なんて、とうとう腕の骨を折られたこともある。
いやあ、あのときはよく叫んだな……。ハハハ、まるで生まれたばかりの赤ん坊みたいな泣き声だったよ……。
俺の人生には、なんとも言えない複雑な気持ちになる。
今の俺は、ゴミ箱のそばに座り込んでいる。腹はぐうぐう鳴っているのに、食べ物を買う金すらない。
料理人になろうと思って、料理を学んでいた。だから、マクドナルドで調理スタッフとして働こうとしたんだ。
だが……汚くて臭い物乞いを、料理人として雇う物好きがどこにいる?
清掃員や警備員にも応募してみたが、そこでも雇ってもらえなかった。
だが、解決策はすぐに見つかった。
失業手当だ!
額は少ないが、食べ物くらいは買えるはずだ。仕事を断られるたびに、俺はあの書類を差し出して、署名してくれるよう頼んでいた。相手が承諾してくれるのを見るたび、俺は心の底から喜んだものだ。
そして今、俺に必要なのは、たった一つの署名だけだった。
新しい従業員を募集しているレストランへ向かう俺の足取りは、驚くほど軽かった。唯一、俺を苛立たせていたのは、青信号になるまであと一分も待たせる信号機くらいだ。
信号機に悪態をつきながら待っていると、小さな女の子が道路に飛び出していくのが見えた。どうやら、彼女の凧が道路に落ちてしまったらしい。
周りには誰もいなかったので、俺が彼女を道路から離れさせようとした。
何度叫んでも、彼女はまるで聞く耳を持たなかった。彼女の目には、凧しか映っていないようだった。
周囲を見回すと、一台のトラックがものすごいスピードで女の子に向かって走ってくるのが見えた。
「危ない!」
「えっ……!?」
俺は何も考えずに道路へ飛び出し、持てる力の限り彼女を突き飛ばした。
その直後、トラックが俺に衝突した。俺の体は数メートル先まで吹き飛ばされた。
俺は道路に横たわっていた。皮膚は骨が見えるほど剥がれ、骨そのものもあちこちから突き出していた。まるで針山みたいな姿だ。
俺は自分の血だまりの中に横たわっていた。だが、痛みも恐怖も感じなかった。それどころか、俺は……幸せだった?
ようやく死ねる。どれほど長い間、この瞬間を待ち望んでいたことか! ついに、この日が来たんだ! これで苦しみともおさらばだ!……
ただ……気になることが一つある。
もし、あの失業手当を受け取ることができていたら、俺は新しい人生を始められたんだろうか?




