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武器を取れ、ドラゴンを殺す 第二部 『補欠の僕らも星を見る』  作者: 運果 尽ク乃
第三章 合い食む餓狼

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20341 【武器】を振るうは人間の性質


 ぶん殴られて蹴り倒された時、巴静はパニックを起こした。

 門浦がひどいのは知っていたが、改めて恨んだし、いつか必ず目にものを見せて、命乞いをさせたいとも思った。


 ただし、そうなった後で逆転されたらどうなるか……考えるだに恐ろしいけれど。


「やりやがったなタンカスがぁ!」

「品性に欠けるんだよデブ!!」


 後ろからでは、(ばん)の動きはよく分からない。恐ろしい速度で剣を振り回し薙刀を防ぎきっている。

 デカい剣を持っているが、それを盾に徹させる事に抵抗がない。


 大きく強力な【武器】があるなら、人間は使いたくなるものだ。

 少なくとも静は権力や人間を使って他者を蹂躙じゅうりんする快感を知っている。故に、蛮をひどく不愉快に思った…


 両手剣などという、極めて攻撃的で、野蛮な【武器】を持ちながら……それを守りに扱える人間性に反吐が出た。


 薙刀よりも取り回しの良いバスタードソードで攻撃を捌きながら、隙を見て打撃を当てる蛮。

 といっても、その『隙』とやらが恐ろしく少ない。門浦は見た目以上に動けるし、その上格闘技の経験者だった。


 最初の一撃だけはまともに入ったが、その後はかする程度。当てるために無茶もできない。

 踏み込みすぎると転がされかねない。実力は伯仲(はくちゅう)。転倒は死を意味した。


「クソがよっ! チョーシ乗ってんじゃねえぞ! 格の違いを教えてやる!!」

「教えてみろやクソ野郎!」


 薙刀を消す門浦。左手にトンファー、右手にカトラス。湾曲(わんきょく)した片手剣。

 門浦が武装を変えた瞬間に蛮は下がった。両手で持った剣を大上段に構える。


 静は音を立てないようにゆっくり身を起こした。相手よりも【武器】が長くなるなら、間合いを掴みづらい構えに変える。

 蛮は口調と見た目に反してクレバーだ。


「そうやって、上から叩き潰そうって構え……メスガキみてぇでムカつくぜッ!!」


 門浦は唾を吐き捨てた。ギラギラとした憎悪が光る。この場にいない誰かへの、過去の屈辱への怒り。


 『前回』。大上段からの真っ向唐竹割りで多くの敵を(ほふ)った剣士がいた。

 特攻服のバニー、剣呑兎(ヴォーパルバニー)の呉井モア。


 門浦は彼女の実力を見誤り、右腕を失った。


「知るかよ!」


 強力無比。身長体重腕の長さ、何もかもがモアよりも上の兜割り。


「遅ぇぞ!!」


 実際に遅く見えた。門浦は左のトンファーを【盾】状態で、斬撃を斜めに滑らせた。そのまま踏み込んでがら空きの脇腹にカトラスを叩き込む。


「だよなぁ!!」


 右手だけ。

 蛮が振り下ろしたのは右手だけ。


 この攻撃を何と呼ぶか、『時間差モンゴリアンチョップ』とでも言うべきか。

 金属製の篭手(こて)に覆われた左手が、門浦の頭部に炸裂する。


 恐るべき事に、蛮は剣の攻撃を最初から捨てていた。先程までと同じ、剣は防具でありフェイント。

 故に刃は鈍く遅かった。


「てんめぇ……っ!」

「さっきから口だけだなおっさん!」


 蛮の踏み込みはあまりにも深かった。故にカトラスは大した痛痒にならず。蛮の手刀は門浦の額を割っていた。

 これ以上様子を見ては居られない。静は動いた。髪を留めていたかんざしを引抜く。それは、神崎から【貸与】されていた【武器】。


 猛毒の塗られた暗器である!


 背後からの殺気に対し、蛮は反応できなかった。彼は静への警戒心を完全に失っていた。その点で、門浦の小細工は恐ろしくうまく行っていた。

 ただし、蛮の防具は全身を覆っている。かんざしを突き刺すには顔しかない。


 振り返る蛮、戸惑い。顔面を狙うかんざしに止めようとするより早く裏拳で対処。


「あぐぅっ!?」

「……あっ!?」


 頬骨にヒビを入れる籠手の裏拳。門浦の打撃が、痛みよりも衝撃で屈服させるためだけの、攻撃ではなく(しつけ)の一撃だと理解させる破壊力。

 背中から倒れる静、激痛で動けない。だが、彼女の仕事としては十分だった。完璧だった。


「手間かけさせやがって」


 門浦は、高校時代に柔道で鳴らした男である。未だに体育教師として、部活の指導では『鬼』と呼ばれていた。

 本来柔道の刈り技の多くは、相手が動いた瞬間を狙って足を払う。しかし、そんなことはどうでもいい。


 蛮が静に意識を奪われた瞬間に、振り返って残った足を門浦は刈り取った。


「ぐぅっ!?」


 不様に転倒する蛮、背中に受けた激しい衝撃で、肺の空気がすべて吐き出される。

 肋骨(ろっこつ)を狙ったスタンピングの追撃。防げない。あばらが軋む。悲鳴を呑み込み、門浦の足を掴もうとする蛮。


 しかし、門浦は以外とあっさりと足をどけた。


「大事な【武器】をよぉ」


 下品なニヤケ面で、舌なめずりしながら。

 門浦は床に転がったバスタードソードを拾う。


「手放すのは良くないぜ?」


 蛮は顔色を失った。


 バスタードソードは【貸与】不能。他の誰かの手に渡った瞬間に消滅する。はずが、はずであるが……。


「テメエ!!」

「口の利き方に気をつけろ、お前はもう丸腰なんだぜ?」


 奪われた。



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